16話 反則って言えなかった
さて、それでは試験といこう。って感じで、エレとゼロに試験内容説明済み。
今回はみんなに協力してもらう。エレとゼロの試験、魔法なしの宝探し。
双子宮に隠した花を見つける。ただそれだけの事。
みんなにはヒント役として協力してもらったんだ。
「まずは、ルーにぃ教えて」
「なにをだ?」
「ルーにぃは、アイス好き?」
宝探しのルール。宝はどこか。それは聞いてはならない。上手く、他の会話からヒントを引き出す。それと、隠したのは誰か。宝がなにか。それも、僕は言っていない。
ヒントすら与えていない。僕かもしれないし、違うかもしれない。
「好きだな」
「エレも」
「寒いところでアイス好き。ルーにぃは寒いところと暑いところどっちが良い?」
「どちらかといえば、寒いところだな」
「ふみゅ、ルーにぃなら寒いところに置く可能性が高いかもなの」
「宝がアイスとは限らねぇだろ」
「……ルーにぃは、嘘をついてる?」
「ついていない」
「なら、ルーにぃの大事なものはなに?」
「……難しいな」
「今、大事にしろって言われてるものでも良い」
「エレとゼロだな」
「ルーにぃならフォルからもらったもの大事って言うの」
「ああ。これはルーにぃは白だな」
「ふみゅ」
どういう判断基準なんだろう。まぁ、間違ってはいないけど。
ルーにぃは、花を隠してはいない。アイスは隠してもらったけど。エレ誘導のために。
エレとは、僕が軍部にいた頃から会っていないけど、行動パターンは大体把握済み。
「……くんくん。ルーにぃ、なんだかひやひやなの。なんでひやひやなの?」
「アイスを冷凍室に入れてきたからな」
「ふみゅ⁉︎きっとアイスが宝なの!早く行くの!」
「お前はアイスが欲しいだけだろ。そういうのは後でこっそり食べるんだ」
「……後でこっそり食べるの」
それにしても、二人とも僕が言ったルールの抜け穴に気づいてないんだろうか。
僕は事前に宝はどこだと聞いてはいけない。宝はなにかと聞いてはいけない。制限時間についての説明。宝は一度これと決めれば変更不可。ただし、制限時間内であれば、所持するのは良い。
解答は、事前に魔法具に記録してある。
一度も、どこに隠したか聞いてはいけないなんて言ってないんだから、なにか隠したか、どこに隠したか聞けば良いのに。
「ふみゅ、次はフュリねぇに聞くの」
「なんでしょうか?」
「フュリねぇは、今日どこにいたの?」
「双子宮です」
「それは知ってるの。具体的に」
「えっと、朝起きて、お食事を作って、自由時間は私用なので黙秘させていただきます。それと」
「……みゅぅ。これ分かんないの」
フュリーナは笑顔で対応している。
「……これ、フュリねぇ、今日なんか隠した?」
気づいた。
「はい。クッキーを厨房の棚に隠しました」
また、エレが欲しそうにしてる。これもエレが好きだから用意したんだ。
「これかも」
「エレ誘いの罠だろ」
「……後でこっそり食べるの」
ゼロがいるから中々釣れないな。
「リーグにぃ、ちょろそう」
「リーグにぃはなんか隠した?」
「はい。実は、フォル様から刺激的な本をいただいて、ベッドの下に。秘密ですよ?」
二人を釣るためにと用意したけど、効果あった。
「リーグにぃのベッド行くの」
「行くの」
エレとゼロが走って、リーグのベッドを確かめに言った。
「……フォル様」
「嘘ではないよ。毒の調合の本だから」
それっぽく言ってもらうように頼んでおいたんだ。エレとゼロが思ってる本なんて持ってないから。
「フォル様、双子姫様で遊んでません?」
「遊んでなんてないよ。あの二人が単純すぎるだけ」
「好きな人が刺激的な本を持っていたなんて聞かされれば、ああなるかと」
エレとゼロは、自分達だけを見て欲しいって子達だからね。僕が他に目がいっていないか不安なんだろう。
「ふみゅぅ、リーグ嘘つきなの」
「リーグ嘘つき」
「嘘ではありませんよ。毒の調合とか刺激的ではあるでしょう」
「エレ知らないもん」
時間を無駄に使って八つ当たりしてる。
でも、これが宝だとは思わなかったかな。持ってきてはいない。
「ミュンねぇ、なにか隠した?」
「かくちた?」
「指輪をもらったので、隠しておきましたわ」
「指輪……これなの!」
「どこに隠したんだ?」
「ここですわ。隠すのであれば、身の回りが一番ですわ」
どこに隠せとは言っていなかったけど、まさかの身につけている。これなら聞かれない限り気付けないだろうね。
「ふみゅ、ゼロ」
「一応全員に聞いてはみよう」
二人とも指輪が正解だと思ってるよ。これも、エレとゼロを釣るためのものなのに。
「クリーにぃ、なにか隠した?」
「……魔法石」
「どこに?」
「あそこの棚」
「ふみゅ、ゼロ」
「魔法石はねぇだろうな」
魔法石はないというのはあってるけど、どういう基準で判断してるんだろう。
「デューゼ」
「訓練生時代使っていた教科書を隠した」
「それは違うの」
「そうだな。ルノは?」
「星のペンダント」
「ふみゅ、フォルなら星と月をセットにする気がするの」
「ならこれも違うな。けど、可能性としてはあるかもしれねぇから場所だけ聞いておくか」
「……エレの宝箱」
「ふみゅ⁉︎これかもなの!」
エレ、これは流石に驚くとこないでしょ。なんで驚きなのって言いたそうな大げさポーズを取ってるんだろう。
「ふみゅ、後で見ておくの」
「エルグにぃは?」
「フォルが自分で揉み消した資料の数々」
「これは絶対違うの」
「揉み消してはいないから。ちょっと、事実と違う事は書いたけど」
僕が関与したって事実だけ書かなかっただけなんだ。
「絶対違うの。自分の不正をお宝にしないの」
「そんな言葉どこで覚えた」
「じぇ……綺麗なおねぇさんから教えてもらった」
ジェルドから聞いたのか。後で余計な事教えないように言っておかないと。
これで残すは僕とフィルだけかな。
「おにぃちゃん」
「愛を隠せとか言われた」
「愛じゃなくて網って言ったんだけど。花を守るために使っている網」
「……置いてあった場所にある」
それはそうだろうね。聞き間違えて隠してないんだから。にしても、フィルがこんな可愛い聞き間違えをするとは。確認しなかった僕の責任でもあるんだけど。
「網はないの。フォルは?」
「エレの庭園のどこかに花を隠した」
「みゅ?どんな?」
「ピンク色の花。花びらが多い」
「……どう思いまちゅか、ゼロ」
「花言葉でって可能性もあるが、フォルの言ってる特徴と、愛してるとかそれ系の花言葉はない」
「ふみゅ、それで?」
「違うと思う」
「エレは指輪の方が可能性的に高いと思うの」
隠した場所に行けばヒントがあるんだけど、これは行きそうにないかも。花には興味なさそう。
「エレのお宝箱は見ておくの」
「そうだな」
「ふみゅ⁉︎もうそろそろ時間」
「行けるとしてあと一つか。どうする?」
「エレの本能はお花って言っているけど、お宝箱なの」
「じゃあ花だな」
不正発覚。エレの本能というチート発覚。これ、失格処分とって良いと思う。どれか考えて行動する。それを見ようとしたのに、本能任せはズル。不正。
でも、エレとゼロが失格処分なんて言ったら泣きそう。
「……」
「諦めろ」
「別に、断る口実でやってないよ」
「そっちじゃない。エレに考えさせる系は諦めろ」
「……うん」
ルーってほんとによく見ているよ。この目的に気づいてたのは、フィルとルーだけみたいだから。フュリーナやにぃ様あたりは、目的あっての事くらいしか気づいてなさそう。
ルノは、協力してもらう前に話していたから知っている。でも、それ以外はこの目的を話していなかったのに。
「ていうか、時間全然まだあるのに」
「そうだな。エレのいつもの勘違いだろう」
「いくつか候補探し行って、そこからどれか考えさせようとしてたんだけど」
「あの本能には勝てん」
「あれ反則」
「それで反則判定出せば、エレとゼロが大泣きし出すだろうな」
「……分かってるよ」
だからどうしようか悩んでいるのに。
「……そういえば、みんなも、もし本気でギュゼルに入りたいなんて思うなら試験はやってもらうから」
「こういう試験ですか?」
「いくつかあるよ。それにこんなに簡単じゃない。適正テストも兼ねているから、できないのがあっても、はい不合格入れませんとかは言わないから」
エレとゼロは別だけど。
ちなみに、僕らもやっているよ。内容は違うけど。
僕の場合、凶悪な魔物がいる中で、魔力封印と魔力放出の魔法具つけられて、なにも持たずにぽいって捨てられた。そこで、一定期間過ごす事が試験内容。
まだ、転生前の記憶が曖昧な頃にそれをやられた。種族が種族なら大問題になってるよ。
僕ら神獣は、このくらいは日常的にやるような事だから、なにも言えないけど。
あとは筆記試験もあったかな。調合とか各種試験の実技も。
「ふみゅぅ、お花さん持ってきたの」
「……ルー」
「……合格だ」
この純粋無垢な笑顔を悲しみに染めたくはないか。しばらく眠っていてエレの本能を忘れていた自業自得って事で、合格にしておこう。




