10話 嘘で塗り潰された場所
なんだろうこれ。大きい花と小さい花が一つになっている。
「……ふみゅふみゅ。これは、どう思いまちゅか?ゼロしゃん」
「ふみゅふみゅ。これはあれですね。歳の差を破壊したいという深層心理の現れかと。エレさんはどう思いますか?」
「ふみゅ。エレもそうだと思いまちゅ」
「そうですよね。そうとしか考えられませんよね」
「ふみゅ」
それだけはないと言いたいけど、言えないよ。もしそうなると思うと。
二人の事をじゃなくて、年齢は何も考えていないと思うんだ。そこは気にしていないと思うんだ。
多分
「ふみゅ、これでエレの安念は守られたの」
「ふみゅ、これでゼロの安念は守られたの」
エレとゼロが嬉しそう。
「でもでも、げぃいんのちゅいちゅうちゅるの」
「そうだね。それも必要だ」
主様の仕事だから、僕らには無縁だけど。
あー、でも、その主様から直接頼まれれば断れないか。
「原因は」
「はんちょくりちゅを誰かがあげたからだと思いまちゅ」
「思います」
あれは、フィルでも扱いに困るような代物。そんなのを簡単にいじられるとは思えないんだけど。
主様はどう判断するんだろうか。
「エレ達」
「夕食作る」
「待ってて」
「エレもついでに待ってて」
「ふぇ⁉︎」
びっくりするエレが可愛い。ゼロは過保護だから、できればエレに料理させたくないんだろうね。
それ以前に、エレに任せると、毎回焦がして何作っているのか分からなそうだけど。
「エレもいっちょにやるの。いっちょにやるの。一人やだー。エレもー」
「エレは料理下手なんだから待ってろ」
「デザート上手。ちゃらだちゅくれる。可愛い」
料理するのに最後の可愛いは必要ないと思う。
「エレをちゅれてけば、後悔なんてちゃちぇまちぇん。エレを買うんでちゅ」
「……」
「でちゅ」
「……フォル、エレの相手してて。料理はルノとデューゼにぃに頼むから」
「……ふぇ」
ゼロに無視されたからって、僕に抱きついて泣くのはなんでなんだろう。エレの生態ってほんと謎。
ゼロは、泣いてる妹無視。
「エレ」
「ゼロきらいきらいなの。エレはフォルの子になるの。ゼロの子違うの。今日からフォルのペットなの」
ん?えっ?待って、今変な事聞こえたんだけど。
ペットって、まさか、エレは、ゼロに飼われてる認定なの?
エレが自分からペットって言ってる?エレにそんな頭があるとは思えないんだけど。この子、ゼロの入れ知恵でここまで色々としているけど、エレ自体は知っている事は少ない純粋な子だから。
「エレ、ペットって誰が言ってたの?」
「時々、様子を見にきてくれるにゃむしゃん」
「……」
自由気儘で、ほとんどギュリエンにいない神獣。ニャフビュム。彼は、エレとゼロが気に入っているらしくて、ギュリエンに来るたびに、双子宮に寄っているとは聞いていた。
こんな事を教えているなんて知らなかったけど。
「あとね、あとね、おもちろいおくちゅりの調合おちえてもらったの」
「面白い薬?どんなの?」
「エレの事をちゅきになってくれるおくちゅり」
「悪戯にも程があるだろ」
「うん。今度会ったら、エレに余計な事教えないように念を押しておかないと」
「みゅ?にゃみゅ?わかんにゃいの」
ほんと可愛い。ゼロの入れ知恵なしの純粋エレ。
「おにぃちゃん、これ部品わたちゅから、解体ちていい?」
目を輝かせている。エレって、ほんとに魔法具の解体好きだよね。気になる魔法具とかあると、すぐに解体しようとするんだ。
「一人でできるか?」
「ふにゅぅ。おてちゅだいちてほちいの」
エレとフィルが、あれを解体する。あれだけいやがっていたというのに、解体する時は、全然いやがっていない。
動いている時は、虫として認識して、動いていない時は、魔法具として認識しているのかな。
見た目は変わっていないのに、不思議。
「ふみゅ。これは……ふみゅ……これなの……そうなの……きっとそうなの……そうじゃないの」
何に気づいたんだろう。そして、何が違ったんだろう。
「……フォル、これちゅごいの。とってもちゅごいの」
「何がすごいの?」
「ふみゅ。これね、はんちょくの方法ちゅごいの。ちょれに、ちぃれに」
「フィル」
「繁殖の方法。ここで卵を産んでる。方法は……この魔法石に繋がっているこれだ」
魔法石の魔力から、擬似生命体を生成するのとおんなじ要領か。
それに、これは……面倒だけど、後で主様に連絡しておくか。
突然大量繁殖はありえない。この情報は、早急に伝えた方が良い。エレとフィルの解体が完全に終わり次第だけど。
「ふにゅ。これは、あれなの」
「あれだな」
「とりあえじゅ、おまちゅりたのちむの。これはほっといていいの」
「フォル、後で教える」
「うん」
エレがほっといて良いっていうのは疑うけど、フィルまで何も言わないなら良いのかな。
「……珍しい。オルベア様から連絡だ」
「……⁉︎……みゅぅーみゅぅー」
「……」
どうしたんだろう。二人とも、顔を逸らして。
とりあえず、出てみよっと。
『あの二人を止めろ』
「えっ?どうしたの?」
「おにぃちゃん、逃げるの勝ちなの」
「だな」
なんなの。急にオルベア様から連絡くるし、エレとフィルは逃げるし。
……逃げたって事はやましい事があるって事のはずだ。ほっといて良い魔法具……あの繁殖方法は、普通ではできない。それに、一箇所に大量にいるという事は今までも報告がない。
この魔法具ってもしかして
「あれって、オルベア様が作った、監視用の魔法具ですか?」
『そうだ。魔力の回復に時間をかける点は、効率が悪いが、一度に大量の情報を収集できる優れものだ』
「フィルが魔法具故障させられたって」
『その魔法具が何か聞け』
多分、作ってはいけない類だね。そういえば、魔法具の故障って、エレとフィルからしか聞いた事ないかも。
「……」
『二人はどこいる』
「オルベア様から連絡来た途端逃げ出し増田。解体して気づいたでしょうね。一応言っておきますよ」
『慣れんな』
「仕事なんで、慣れてください」
『……エルグが怪我をしたと報告を受けてから、何年経ったか。あんなの気にしてるのは、フォルだけだ』
……そんなの、分かってる。分かっていたって、そうできないだけだ。
「エレエレのフォルいじめるなーー」
『どこがいじめていたんだ』
「エレエレのフォルは、今のままでもじゅぅぶんかわかわなの。これ以上、エレエレのフォルにむぅむぅ言うと、エレ、みゅぅむぅってなるの」
エレ、僕のために怒ってくれてるのは分かるけど、何言いたいのか全然分かんない。
『良い嫁を持ったな』
「嫁じゃないから」
「ちょうなの。えれえ……エレゼロは、フォルのお嫁しゃんなの」
「だから、嫁じゃないって。オルベア様も、変な事言わないでください」
『変な事ではないが』
「変な事です。ただでさえ、隙あらば、外から埋めていこうとしているんですから。そこが可愛いんですけど」
『……そんなふうに笑えているなら、余計な心配だったな。エレも、それを分かっての事か』
笑えてる?僕が?嘘、今、自然と……あれ以来、ずっと振りしかできなかったのに。
「ふみゅ。エレゼロは、フォルとにみゃにみゃらぶらぶせいかちゅ送るの」
「……オルにぃ様、連絡してくるなら直接来てくれない?ついでにこの暴走姫の世話してよ。たまには弟休ませてやろうって優しさ見せてくれない?」
『今度、暇な時にでも行こう。エレ、今度挨拶に行く。弟をよろしくと』
「待ってるの」
「だから、僕は」
……切られた。少しくらい弟の味方しろよ。
「……ふみゅ。ゼロがご飯できたって。いっちょにいこ」
「うん」
「……エレはフォルの味方なの」
だったら、突然来たと思ったら、お嫁さん発言しないで欲しいんだけど。
「お嫁さん発言やめれば信じるよ」
「……良いんじゃないの?」
「口外を許可した覚えはない」
「みゅ?だって、フォルのお嫁しゃんになるためにも、フォルの身近な人達にあいちゃつちないとだめなの。これは、大事な事だって、ゼロが言ってたの」
またゼロの入れ知恵か。
「あっ、ちょれともうひとちゅ。あちたはいちょがちいの」
「君らが?」
「ふにゅ。おまちゅりにちょなえていちょがちいの」
祭りで忙しいって、なんでエレが。まぁ、明日になれば分かるだろう。今日はもう何も考えたくない。面倒見てて疲れた。
「ふみゅ。エレがおまちゅりいっぱいたのちいっていわちゅの」
エレは張り切ると必ずと言って良いほど失敗する。だから、あんまり張り切って欲しくはないかな。
ほどほどで、やってくれれば良いんだ。なんて言ったら、やだって返ってきそうだ。
「……じぃー」
「どうしたの?」
「エレは、フォルがたのちいって言ってほちいの。たのちいって事をいっぱいちてあげたいの」
「なら、いつも通りでいて。結婚を迫る以外はだけど、僕、君らといると楽しいから」
「……うちょちゅき」
走って、どっか行っちゃった。
「エレは、あの時、主様の側にいた。目撃者が誰一人としていない。当然、エレが主様襲撃の犯人と疑われた」
「……」
「エレは、気にしていないように見せようとしているだけだ。誰にも言えない秘密を一人で抱えて」
「秘密?」
「あの時の真実。主様が、フォルを外へ出す事を許可した理由も、その中にある。噴水のところにいるから、行ってやれ」




