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矛盾 8


 リチャード達の拠点に襲撃を掛けた大坊達は、徐々に押し返され始めていた。

 私兵達の装備と数を前にして、ジリ貧を強いられていた。精鋭達にも徐々に損害出始めた頃、シアン色の強化外骨格(スーツ)を装着した男は言う。


「リーダー。先に行って下さい」

「シアン。アレを使うんだな?」

「はい。本当は巨大怪人とか怪獣用のガジェットですが。許可は貰えますか?」

「構わん。ぶちかましてやれ。七海、伝達だ」

「了解」


 七海がガジェットを起動させると、カラード達全員に指示が飛んだ。一糸乱れぬ動きで所定の位置に付くと、一斉に行動を開始した。


「フォースプロテクト!!」


 オリーブ色のカラードが盾型のガジェットを起動させると、地面のコンクリートが迫り上がり即席の防御壁が築かれた。

私兵達が携行型のガジェットでは威力が足りないと判断したのか、火力要請をしようとした時。辺り一面に大声が響き渡った。


「アクセス! グレートキボーダー!!」


 上空から強大な質量が降り注いだ。衝撃波で周囲のコンテナや私兵達を押し潰しながら降り立った物体は、周囲を巻き込みながら合体していく。


「あげっ」


 進路上にいた者達を容赦なく跳ね飛ばしながら、轢き潰しながら、合体した物体は巨大な人型の兵器『グレートキボーダー』はスピーカから喧しく音声を流しながら、爪先の装甲部分がスライドさせた。内部には機体サイズに見合った砲口の機関砲が何門も並んでいた。


『明日への希望! 阻む物は許さない! 必殺のグレートキャノン!』


 勇壮なBGMと共に機関砲が火を噴いた。改良型の強化外骨格(スーツ)も質量の暴力には打ち勝てずに引き裂かれて行く。


「よし。これで……」

「急接近する反応あり! これは!!」


 瞬間。グレートキボーダーの頭部を一閃の光が貫いていた。胴体部分を担当しているシアンが被害助教を調べながら、忌々し気に舌打ちをした。


「観測主のマリーンがやられた。アイツら、レールガンも製作してやがった」

「ならば、コイツを食らえ!」

『明日を掴め! 希望を目指せと輝き轟く! ロケットフィスト!』


 五指を広げたままに射出された腕は、自分達を貫いた兵器が放たれた地点まで飛んで行った後、兵器と射手達を握り潰した。巨大な掌には、人間だった染みだけが残っていた。


「リーダーが戻って来るまで、露払いは俺達がするぞ」

「了解」


 グレートキボーダーを操るカラード達は、仲間の死に動揺することなく。淡々と眼下の敵達を蹂躙していた。


~~


 内部へと侵入した大坊達を迎え撃ったのは、十重二十重に張り巡らされたトラップだった。エスポワール戦隊の基地にも取り付けられているガンカメラから、侵入者を切り刻むレーザートラップ、浴びた者の骨まで溶かす猛毒の液体によるシャワー。

 1人、また1人と仲間を失いながらも奥まで進むと、リチャードもまた精鋭達を引き連れて待ち構えていた。


「Mr.大坊。良い顔つきです。何としてでも、私を殺そうとする気概に満ちています。私が尊敬していたヒーローを体現しています」

「お前の目的は何だ。俺に何をさせようとしているんだ?」


 ゴク・アクや播磨とは違い、リチャードは自分達エスポワール戦隊の信念に心から同意してくれている物だと思っていた。融通してくれた資産や兵器は数知れず、これからも共に歩んでいく同志だと信じて疑わなかった。


「決まっています。悪の根絶です。人々の意識から消し去ることが目的なのです」

「今、俺達がやっている活動では駄目なのか?」


 エスポワール戦隊の制裁は今も続いている。殺人や恐喝などの犯罪から、転売やイジメ等から幅広く取り締まっており、批判を浴びる一方で、支持してくれる者達もいることは理解していた。


「嘘を付きなさい。今の貴方は、客寄せに必死になっています。でなければ、ハト教の様な施設を作ったりはしません。悪に、赦しの機会を与えるなど。あってはならないのです。貴方は悪を滅ぼさなければなりません」

「……誰からも理解されなくてもか?」

「何故、理解など求めるのですか? 普遍的で一般的な倫理観こそが、悪を蔓延らせているのです。私と出会った時の様に! ガイ・アークを滅ぼした時の様に! 許し無き、冷酷で無慈悲なヒーローこそが世界を変えられるのです!」

「それは、ヒーローなのか?」


 大坊の問いかけにリチャードは頷いた。言いようのない齟齬を感じていた。まるで、昔の自分が自分ではなかったかの様な錯覚に陥った。


「貴方は! ソレが正しいと信じたから! 復活した幹部達を皆殺しにしたのでしょうが! 誰からの視線も気にせずに!!」

「……お前が欲しいのは、誰の為のヒーローなんだ?」

「善意と希望の為のヒーローですよ。今の貴方は見る影もなく、矮小で卑小な存在です。原因の一人を吹き飛ばしてやれば、もう一度返り咲くと思いましたが」


 リチャードも装着したベルトを起動させた。人工筋肉を内蔵したタイツ状の物ではなく、全身が装甲板で覆われた鎧の様な造詣だった。


「だから、お前は播磨と手を組んだと言うのか」

「彼も望んでいましたよ。本物に会いたいと。女子供に現を抜かしている暇など無いことを教えて差し上げましょう!」


 リチャードの周囲に居た者達も、同型の強化アーマーを装着した。両陣営が駆け出しぶつかる中で、大坊はふと考えていた。


「(俺は、何の為にヒーローをしているんだ?)」


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