亀裂
この盾……何で出来ているんだ?壊れもしないし、焼けもしない。ミオンも僕も吉田も、盾の性能に少し驚いていた。
「ちょいと面倒だね……この盾全然壊れそうに無いじゃないか」
ミオンが言っている途中、吉田が銃を撃ったが、空間に亀裂が入り、銃弾は何処かへ消えた。
「……よし。逃げるか」
星が煌いているが、それ以上にミオンの出した炎の方が力強く、輝いている。こんなやつに勝とうなんて……正直無理だ。吉田はなんとかなるけど……僕が振り切れるのか?
盾構えておけば何とかなるが、逆から来られたら間違いなく死んでしまう。とにかく、走るか。
吉田と僕はほとんど同じタイミングで走り出した。僕は中学時代陸上部仮入部だけであって、なんとなくはわかる。が、吉田はどうなのだろうか。
「待って……疲れたわ……俺は……内申稼ぎの幽霊部員だったというのに……」
駄目だ。元陸上部員が2人いても、ミオンには勝てる気がしない。ミオンは余裕そうな笑を浮かべ、指をぐるぐるさせている。
「逃げられるわけないだろう?」
そう言うと、僕らは大きな風に包まれ、完全に囲まれてしまった。これでは……死なない身でも逃げることができない。
「……攻略方法がわかったような気がする」
吉田がニヤリと笑いながらそういうと、銃でミオンの指に向かって銃弾を撃った。が、やはり止められてしまう。
「今だ!撃てぃ!」
僕はもうわけがわからなくなってエアガンを撃った。僕が撃った瞬間に吉田も細長い銃を構え、撃った。
「何やってんの君たち」
ミオンがそういうと、周りに亀裂が入り、銃弾は細切れになってしまった。
「もしかして……さ、指壊せばどうにかなると思ってたりするの?」
吉田はバレたかみたいな顔をしていた。たった一つしかない弱点も、完全にカバーされてしまっている。これでは勝ちようがないじゃないか。
「まぁ……いいか。別に死なないやつの回収は私の友達に任せてあるしね。君だけ死んでもらうよ。須藤くん」
なぜ……僕の名前を?
そう思った瞬間に、僕は背中を炎で引き裂かれた。どういう威力してるんだと言うくらいの火力で、吉田も巻き添えを喰らった。火の粉が舞い、僕の死はとても格好よく映っている……だろう。
だが、僕が弱点のバックアップも取らないほど間抜けだと思ってたのか?残念だが、僕も生き返るよ。勝てる気はしないけど。
「さ……て。賭けをしないか?次の攻撃で最後にする。僕は今から最後の攻撃まで何もしない。これに耐えたり、避けられたりしたら見逃してあげるよ。どうする?」
確かにこのままでは負けが確定する。そうなるなら、どうせ同じ死なら、賭けてみるか。
「やるぞ」
「俺ぁ死なないからやるけどな。お前さん面白いやつだよ。殺しの癖に対象を見逃……」
「煩いよオッサン」
吉田はびびったのか立ちすくむ。これは……僕に与えられた試練……かもしれない。
「さて。20秒後に決める。覚悟はいいかい?」
出来てるわけないだろうが。ミオンの言っていることが本当なら、攻撃は1度きり……だが、生命のバックアップはもう使ってしまった。あと1時間ちょいの所か。最悪、体の何処かは無くなってもいいから、逃げることだけを考え……
「使えよ」
吉田が渡してきたものは……なんだこれ
「靴だよ。スプリング式のやつ。高速移動が出来るんだ。俺も試しに履いてみたが、50m走で8秒出せたぞ。お前さんなら逃げられるんじゃないか?風のところに」
……そうか。風に逃げれば風の影響は受けるけど、向こうは行動が読めないから逃げられる……はずなのか?
「あと10秒だね」
僕は靴など履かずに盾を吉田に投げつけ全力疾走した。途中何度か体が追いつかずになって転びそうになったが、まだ、仮入部の力をナメてもらっては困る。
風は、目の前にあった。僕を殺そうとする大いなる強かな敵。そいつから逃げられるかもしれない敵の力。爆発でも、火炎でも、何でも来い。多少の怪我は付き物だ。もうどうにでもなれ。
「怖気付いた……のかい?そんな後ろに逃げても無駄なもんは無駄なのさ。あと3秒。祈っておけば?」
ミオンのカウントダウンが進む度に、僕は恐怖が倍になっていく。が、飛び込めば……全てがどうにかなるはずだ。
僕が飛び込んだ後、ミオンは驚いたような顔をして、攻撃を一瞬遅らせた。最後の攻撃まで何もしないんだよな?なら、勝てる。
「こりゃ……考えましたね」
ミオンは黒い何かを構え、薄ら笑いを浮かべている。まだ勝機があるというのか?
ううっ……吐き気がしてきたぞ。これは長く持たなそうな気がする。
見えたのは、一瞬だった。
ミオンの攻撃は風もろとも全て包み込み、僕の目の前を暗転させる。
「これが……僕の最後の攻撃。終身刑さ」
閉じ込められた……?まさか……嘘だろ?姑息すぎるだろ。これでは吉田も負けてしま……
「生き残ったじゃないか。ご苦労さん。それでは僕はここから立ち去ろうではないか」
元から殺す気だったんだ。きっと。こんな、こんな、理不尽なやり方だとは……僕も吉田も、思わなかった。




