71 祝え初飛行!翼を得たスライム!
節分おめでとうございます。
豆も鬼も鰯も柊も出てきません。
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わって、空を飛ぼうとして墜落死しかけた男だ。
フワァ…
『おおおお これは可能性を感じるぞ!』
失敗は成功の母とか言う伝説の通り、墜落事故を踏み台にして、俺はボディを風船の様な膜状にして下から風魔法を吹かせて浮き上がるという方法を試し始めた。
もともと気球は膨らます為に送風機を使うのだが、その感じで結構勢いよく風船ボディは膨らんだ。
風力不足で飛ぶまでは行かないが、割と好感触だ。
熱気球みたいに火魔法で空気を加熱すれば?というのはNGだ。
だって火はスライムにとって鬼門だからな。多分焼け死ぬ。
と言う訳で、火魔法はまだ一回も出してない。
風速20~30メートルの台風で人が吹っ飛ぶんだから、気球やパラシュートに強風を吹き込み続ければ空だって飛べるはずだ。
理屈としては間違ってないと思う。
風魔法の練習を繰り返して風力を上げれば…これはマジで飛べるな…!
大ジャンプしてパラシュート状になって方向を偵察しつつ、滑空の仕方を練習。
そして歩きながら風魔法と水魔法を練習。
うむ、完全な旅程だぜ。
魔法の練習をしつつヌルヌルと進み、シェズリーの森が見えてきた頃には十分な風力が確保できた。
今こそ大空を我が手にする時!
『風魔法最大出力!』
クラゲのようなパラシュート状にスライムボディを変形させて、腹の下から出来る限り強い風魔法を吹かせる。
フワリ
おお、浮き上がったぞ。これは行ける!
風魔法を維持していると、結構いい勢いでグイグイと空へ登っていく。
『おおおお ホントに飛んだぞ!すげー!』
ある程度の高度まで行けば、
しかし空から見ると、この森スゲー広さだな。
向こうの方に見える山の方向から考えて、村はあっちの方だなと言うのは何となく見当が付いたので、フワフワ風を斜め下から吹かせて進む。
『ふほほ、これはいいぞ。なんかこういう泳ぎ方のちっちゃいイカかタコかなんかいたよなー』
日中は飛行で進んで、夜は森で狩りをしてゲル補充して、と言うサイクルで行けば、大きく迷わず戻れそうだな。
スピードは大して出ないが、パラシュートは円形より四角っぽい滑空用みたいな形の方がスピードが出るので、風を吹かせたり滑空したりしながら、クラゲのようにフワッフワッと森の上空を漂いながら進む。
うーん、なかなか気持ちいい。
ワイバーン的な飛行系クリーチャーに襲われたりしないかとビビって周辺警戒していたが、普通の鳥くらいしか飛んでおらず、今のところ安全そうだ。
空を飛びながら、他にはどんな魔法が出せるんだろうかと考えてみる。
今のところ、光、水、風が出せるんだが、後はどんな物が出るんだろう。
出してない物の中では火は確定してるが、土はNGというのも確定してるんだよな。
田端さん曰く、電気も非効率だが出せるらしい。
あとは…闇ってのはあるんだろうか?
光は電磁波の一種だが、闇って光が届いてない状態だから、それを発生させるってのはあり得るのか?
あるとしたら、電磁波が届かない空間を出現させる…んだろうか?
光や雷の形で電磁波が出せるならマイクロ波も出せそうだな。電子レンジ的SATUGAI…。グロいな。
自分に誤爆したらゲル内の水が発熱して自滅したりしそう。やめとこ。
あとは重力とか…?基本出すだけしか駄目みたいな話なので、重くするだけなら出来るのかも知れないな。
酸素とかの気体系の物も、出せるなら毒ガスとか窒息とか、そういう嫌らしい事が出来そうだ。
魔法は好き勝手に試してみればいいよというの、ちょっと途方に暮れる部分もあるけど、自由度があってなかなか楽しいな。
どんな魔法を試そうかと夢想しつつ空を飛び、夕方になってきたら森に降りて獣を狩る。
空飛ぶのに魔法使いまくりだから、ゲルの減少がちょっと気になってきたので、狩り比率は多めだ。
やはり無制限に魔法使い放題というわけではない様だな。
ちなみに道すがら試した所では、雷気は出た。
電気は強まってくればかなり使えそうなんだが、もっと高効率で出せる神聖魔法とやらに興味が湧く。
しかし多少不便でも、あの貧乳邪神みたいなのと関わり合いになるのはご免だ。
神聖魔法とやらには近づかないぞ。
闇は出そうなんだが出なかった。
田端さんの話聞いてても、かなり観念的な物のようだから、イメージとかやり方の問題かも知れない。
だが今時点では、やみのきもちになってみても出ないので無い物と思っておこう。
重力は出てるっぽいぞ。
ポイというのは見えないからだ。
木の枝とかに向かって出すとしなっているので、出てると思う。
重くする事に利点ずあるか思いつかないので、まぁこう言う使い方もあるね、という程度で心に秘めておこう。
さて、魔法を使いながら何日かフワフワしていると、結構ダークエルフ村に近づいてきたという実感が出てきた。
向こうの方に、うっすらと見覚えのある湖も見えてきたしな。
とうとう帰ってきたぜーとテンションが上がりかけたのだが、それも即急降下だ。
というのも、村の当たりと思われる所から煙がもうもうと立ち上っているのだ。
村が火事か!?急がねば!
俺はすぐさま飛行モードを解除して、高速移動で村に急行した。




