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70 さらば魔都!猫を撫で回して旅立て!

俺の名は山口寿明。

色々あって異世界でスライムに生まれ変わって、町の知り合いに別れを告げて回っている男だ。


『と言う訳で森に帰る事にしたよ』

『ふーん』

そっけない対応をされたが俺は別に傷付いていないぜ。

猫って言うのはそう言うもんだしな。

『最後にブラッシングさせておくれよ。気になって仕方ないんだよね』

『嫌』

『何でそんなにブラシ嫌がるんだよー。気持ちいいよー多分』

『嫌』

とりつく島もないわ。まぁまだ会って数日だもんなー。懐かなくても仕方ないか。

ダクエル村の犬と違って餌付けも出来ないし、なかなか難しいな。


『じゃあお別れの挨拶に背中を撫でさせておくれよ。俺の種族はそうする習わしなんだよ』

触手をヒュルヒュルさせながらシレッと嘘をつく俺。

『はぁ?ホントなのそれ?』

『本当だよ。別れを惜しみながら背中をヌルリヌルリと撫でるんだよ。撫でさせておくれよ』

かなり怪訝そうだったが、何とか撫でさせてくれた。

まず触るステップはクリアしたな。

次は撫でながら触手の先をブラシ状にして、いつの間にかブラッシングしてやるぜ。

そんな企みがあるとは知らず、触手で撫でられているシピにゃん。

嫌がっていた割には、撫でられるのはまんざらでもないようだな。ククク。

『この触手撫で回しには癒しの効果があるんだよ。傷や魔力が回復するんだよ』

適当な事を言いながら、俺が満足するまでヌルリヌルリとシピにゃんの背中をなで回しておく。

本当に回復するかどうかは知らん。


『ふぅ、満足したぜ。また町に来たら撫で回してあげるからね』

『あんた、いちいち発言がキモいわね…』

文句を言いながら、途中から触手の先を三又にしてワシワシしても嫌がらなかったので、シピにゃんも嫌ではなかったのだろう。

俺も思う存分巨大猫をなで回して満足した。

大きな哺乳類を好き勝手に撫で回すのは、体を許されている的な嬉しさがあるよね。

シピにゃんの勤務終わりまで見張り台でダラダラと食べ物トークなどして、朝になった頃に分かれた。

またこの町に来たら白い巨大猫を探して撫で回そう。


朝になったので再び城に出向いてインコマンを尋ねたが、またも不在との事。

どっかに出張でもしているのだろうか。忙しい事だ。

最初に尋ねた時、たまたま居てくれて良かったよ…。

一応2回も尋ねたのだから、最低限の義理は果たしただろう。

仕方ないので、これで出立する事にした。


『さらば魔都よ!』

別に誰に見送られるでもないし、大した思い出もないが、一応雰囲気作りとして言い放っておいた。

そういえば魔都の町名はなんて言うんだろうな。

今更疑問に思ったが、まぁ知らなくても大した問題は無かろうて。

ヌルヌルと街道から外れた草原を進む。

往路での教訓は忘れていないので、集落や人影は出来るだけ回避して進むぜ。

テレパシー魔法をゲットしたとはいえ、コミュニケーションが可能になっただけだ。

デスキャバクラみたいな殺し系コンテンツの場合、テレパシーが出来たとしても断りづらくなるだけだしな。

異世界では何があるか分からないので、用心に越した事はない。

出来るだけ道から遠ざからず近づきすぎずの距離感を保って移動しよう。


さて、帰り道は迷わない!と誓って出発してはみたものの、往き道しこたま迷ったのに帰りがスムーズであるはずがない。

帰路も当然のように道に迷ったのだったが、今回の俺には打開策があった。

何かって?それはもちろん風魔法による飛行だよ君ぃ!

田端さんには止めろよと言われたが、あれは「町中では」という意味なのだ。多分。

こんな事もあろうかと、道すがら突風を出せるようになるまで風魔法をチョコチョコ練習しておいたのだ。

実際の所は、突風魔法が出せるようになるまで迷い続けていたという事になるが、その辺は言い方の問題だけだよね。

作戦としては、まずスライム大ジャンプで出来るだけ上空に飛び上がる。

そしてムササビ状の形態に変形して、斜め上に向かって突風魔法を使う。

失速して落ちそうになったら突風魔法を使う。

これだ。これで洋画に出てくるウィングスーツを着た特殊工作員みたいに空を華麗に移動できる筈なのだ。


と言う訳で早速実践してみましょうねぇ。

まずはブラック形態になってから初めての大ジャンプだ。これでまず10メートルくらい飛び上がりたい。

『トゥゥゥゥー!』

ライダーっぽい掛け声で大ジャンプ一閃!

みごと10メートルくらい飛び上がれたぞ!良い感じ!

ここからムササビモードに変形しうおお落ち始めたやばい風魔法を!

『うぉああああー!!』

斜め下後方から吹き上がった乱気流により一時的に上に吹き上がったが、バランスを崩して錐揉み落下する俺。

バスウンという鈍い音と共に激しく地面に叩き付けられた。

物理ダメージがほぼ無効化されるスライムで良かった…。これは人間だったら死んでいるね。

『これは…思ったより練習が必要だぜ…』

飛行は想像以上に難しかった。

これは安全策として考えていた、風船みたいな形にチェンジして下から風を吹かせて付近を偵察するというプランに変更した方が良いのかも知れん。

でも練習はしばらく続けておこう。空を自由に飛べたらカッコいいし便利だしな。


実際のウィングスーツはライセンス取得も大変だし死人もいっぱい出ているのでマネをしないでね。

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