68 新発明!ただし魔法は石から出る!
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わって、風魔法を習得した男だ。
『一応言うとくけど、風で空飛ぶとか試したらいかんのじゃよー。周りが滅茶苦茶になるんじゃよー』
む、読まれていたか。後でコッソリ、ウィング形態に変形して空飛んでみようと思っていたのだが。
『竜巻でも起こして都を破壊したら、さすがにもう庇わんのじゃよー』
『了解です。都では大人しくしておきます』
魔都からの帰りに、人里離れた辺りで試すから大丈夫なのだ。
それまでは風を良い感じにコントロール出来るように練習しておこう。
『もうだいぶ魔力の出力制御も慣れてきたみたいじゃし、あとは自己責任で魔法を編み出していけばええんじゃよー。気とかいう狂ったやつも勝手に試せばええんじゃよー』
『おお、遂に魔法免許皆伝ですね! あと気は狂ってないから!』
気が狂うって言うと別の意味みたいじゃねーか。
『ほな検査じゃけど、今日で最後なんじゃよー』
『と言う事は、魔法無料ゲットキャンペーンもこれで最後ですか…』
『自分で試行錯誤できるとこまで行ったらもう十分じゃよー。堀の件も隠蔽してやったし、釣り合ったと思うんじゃよー?』
『大変感謝しております。ありがとうございます。ありがとうございます。』
まぁ確かに、魔法の初級口座としては十分な成果だ。
特に何かを教えて貰ったという気はしないけどな…。
『今日はおぬしの体を直接魔法の触媒に出来るかどうかを試すんじゃよー』
『俺が爆発四散するとかそう言うのは止めてくださいよ?』
『また体を採取して、それを触媒にして魔法を発動させてみるんじゃよー』
『それってこの間5万で売ったアレと同じ事なのでは』
『そう言う事じゃよー。金欲しい?』
『いや、いらないですよ』
まぁちょっとくらいの事で、イチイチ金くれって言うのも器が小さいしな。
それに正直、魔法無料ゲットキャンペーンで得た物の方がデカい。
何やかんや言って、自分のゲルを水や風に変換出来るようになったんだからな。
しかもゲルはどうせ適当に動物とか食えば回復するし。これは物凄い事ですよ。
『ほー。また5万くれって言うかと思ったんじゃよー』
田端さんは俺のリアクションが意外だった様で、何だか関心している。
『正直、価値がよく分からない銭金より、もう一個くらいサービスで魔法とか教えてくれないかなって』
『正直でええんじゃよー』
キョキョキョと笑う田端さん。
なかなか好印象だったようだ。損して得取れ作戦成功だな。
まぁ小人お婆ちゃんの好感度上げて何の特があるんだって話だが…。
『ほなまたコップに体を分けるんじゃよー。ちょっとでええんじゃよー』
言われるがママに、ゲルをビーカーめいた器に少し注ぐ。
『これに儂特製の水魔法ストーンを入れると、みるみる水が沸き出してくる筈なんじゃよー』
『水魔法ストーンって何です?』
『自発魔法を使う時にやっている魔力と要素の変換を、代わりに出来るように作った魔法の石じゃよー。魔力をどっから確保するのかが課題じゃったんじゃよー』
田端さんがゲルの満ちたビーカーになんか丸っこい石ころをボチョリと入れると、ビーカーからゴボコボと水が湧き出してきた。
『おおー!ホントに水出てきましたよ』
『成功じゃよー。でもこんなに出ていらんのじゃよ』
無造作に石を取りだして空のビーカーに入れても、まだ石からは水がジョボジョボと湧き出し続けている。
付着したゲルの残りで水魔法が発動し続けているのだろう。
『あー、魔力の濃度が濃すぎたんじゃよー。しばらく止まらんかも知れんのじゃよー』
『もっと大きい器で水を受けないと駄目かも知れませんね』
『とにかく成功なんじゃよー。物体化した魔力を魔法ストーンに触れさせれば、魔法を使えないオーガみたいな種族でも魔法が使えるようになるんじゃよー』
おー、つまり俺の体を燃料にして石から魔法を…ちょっとまて。
『それってまさか、俺の体から定期的にゲルを抜き取って…みたいな?』
『人間共じゃあるまいし、そんなことせんのじゃよー。おぬし以外に同じ種族がおらんのでは、製造量も生産速度も限られて非効率じゃよー。魔力の物体化を模索した方がええんじゃよー』
おお、まさかここまで来て田端さんに捕まってゲル絞られエンドかと一瞬ビビったぜ。
田端さんが人道的というか効率的で良かった。
ただ、魔力の物体化とか言う研究が行き詰まった場合はヤバそうだが…。
さっきの言い方だと、スライムが大量にいた場合は種族ごと家畜にされたっぽいな。
まぁ前世でも、鳥とか豚とか工場で量産育成して肉にしたり、早く成長するように品種改良したり色々やってた訳で、スライムだけ保護されるべきとか言う気はない。
ただ自分はそうされたくないなと我が儘に思うのは自由だ。
『おぬしの体、採取した分が無くなったら定期的に採取したいんじゃけど、ずっと魔都に居るんか?』
『いやー、元々テレパシー魔法の習得と魔都観光がしたかっただけなので、ぼちぼちダークエルフ村に戻ろうかなって』
『シェズリーに行くのかー?遠いからちょくちょく採取できないんじゃよー。困るんじゃよー』
『そんなこと言われましても。この辺りだと狩りも出来ないんで、ゲルが回復できなくて困るんですよ』
実際問題、魔法をガバガバ使ったりゲル販売したりしているせいか、一回りボディが縮んだ気がするんだよな。
ちょっと水で薄めた方が良いかもしれない。
『ゲルはもうちょっと置いていきますし、これ水で薄められるんで、それで騙し騙し使って貰えますかね?』
『何言うとるんじゃよー。魔力が水で薄まる筈が無いんじゃよー』
いや、俺のゲルは水で濃度調整できるぞ。
ようやく水が止まった魔法ストーンビーカーの周りがびちゃびちゃになっていたので、触手でチューチューと吸い取って、触手の先っぽあたりだけブヨブヨになるように調整する。
緩んだゲルを別のビーカーに切り離すと、田端さんは不思議そうに希釈ゲルを眺めた。
『確かに水で薄まったように見えるのー?どうなっとるんじゃろ?なんで魔力の塊が水で薄まるんじゃよー?』
『しらんがな』
『もうちょっと研究したいんじゃよー。おぬしもうちょっと魔都におるんじゃよー』
うーん、残留要請されてもなー。
今週土日も更新お休みでございます。




