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37 白エルフ共の陰謀

私の名はウルファー。

シェズリーの森に住む闇エルフ一族の族長だ。


ある日の夕暮れ時、狩りから戻った狩人より、森で呪いの毒蜘蛛が見つかったという報告を受けた俺は、直ちに戦士達に招集を掛けた。

幸い今日は訓練の日だった為、ほとんどの戦士達が森には出ずに村で用事を済ましていたようだ。すぐに皆が集まった。

「皆よく集まってくれた。先ほど森で呪いの毒蜘蛛が見つかったそうだ。明日討伐を行うので、退治の準備をしてくれ」


俺の宣言に皆がざわつく。

呪いの毒蜘蛛とは、光の邪神を崇める白エルフ共が使う、邪悪な化け物を呼び出す呪いだ。

穢れた呪いの核を地面に打ち込むと、半月ほどで巨大な毒蜘蛛と無数の小さな毒蜘蛛が産まれるのだそうだ。

巨大な毒蜘蛛は強力な魔物で退治が難しく、伴って産まれる子蜘蛛は数が多く駆除が困難。

我々ダークエルフだけでなく、森の生物も大きな被害を受ける、忌まわしい呪法だ。

先代族長の頃には度々使われたと聞くが、奴らの筆頭呪術師を暗殺する事に成功して以降、使われていなかった筈だ。

この呪いが使えるような、新たな呪術師が育ったのだろうか。忌々しい話だ。


「相も変わらず姑息な…神聖な森を乱す屑共めが…平地で人間共と混ざりあっておればいいものを!」

暗黒司祭が忌々しげに怒りの声を上げる。

神聖なる暗黒神のもたらす恩恵は清廉な物が多く、このような汚らわしい術はない。

先代の頃より、何度もこの呪法の被害を目の当たりにしてきた司祭は、特に怒りが大きいのだろう。

これが司祭の予見した森の危機なのかも知れんな…。


「ラルズよ、何人か戦士を選び、司祭と共に大蜘蛛を探してくれ。他の者は二人組となり、子蜘蛛の駆除を頼む。子蜘蛛は熱を感知して物陰から襲ってくると言う。十分に注意してくれ。」

いかに我らの夜目が利くとはいえ、小蜘蛛は物陰から襲ってくる。夜に駆除をさせるのは危険だ。

呪いの毒蜘蛛に初めて対する若い戦士がざわつくが、年嵩の戦士達が備えや心構えを指導してくれる。

多少の被害は出るだろうが、大きな被害を出さぬように収めねばならない。


戦士達は皆、装備を整える為に立ち去っていく。

ラルズが何やら不機嫌そうだったが、訓練で何かあったのだろうか。

大蜘蛛に後れを取らねば良いが…。

戦士達を見送った俺は、俺は村に残る女子供が森に入らぬよう、緊急用の回覧板を用意することにした。



翌日、夜明けを待って戦士達が森に入る。俺は村に残り、彼らを見送った。

全体の指揮を取りつつ、もし村まで毒蜘蛛が至った場合に備える為だ。

念のため、村の家々には窓板を下ろすし、外出は控えるよう伝えてある。

村人に被害が出なければよいのだが…。


昼前、子蜘蛛の駆除に出かけた何人かの戦士が戻った。

報告を受けた所、どうやら子蜘蛛の数が思ったより少ないらしい。朗報だ。

まだ孵化しきっていないのだろうか。

早い内に巣を見つけて叩ければ、子蜘蛛の被害は押さえられるかも知れない。


暫くすると、大毒蜘蛛を探索に行ったラルズ一行が戻った。

嫌に早い。大毒蜘蛛が彼らだけでは手に負えない程だったのだろうか。

「族長よ、無駄足だったわ。終わっておったぞ…」

相変わらず機嫌が悪そうだ。だが終わったとはどういう意味だろうか?


彼らが大毒蜘蛛の巣に至った時には、巣には大毒蜘蛛も、子蜘蛛の卵も無かったらしい。

変わりに、巣の中で黒い芋餅が寝ていたそうだ。

「黒い芋餅というのは何だ。最近村に居着いた赤芋餅の事か?」

赤芋餅というのは、最近村に居着いた謎の生物だ。

村の食料である森芋の粉で作った芋餅に似ていることから、子供達が赤芋餅と呼び始めた。

餅のような丸い塊で、ピーピーと口笛のような声で鳴く。

「よく分からん。色は赤ではなく黒だった。だがアザリンに妙に懐いておったから、赤芋餅なのかも知れん。最初見た時は青かったと聞くしな…」

「何故蜘蛛の巣穴に赤芋餅が居るのだ?大毒蜘蛛は何処へ行った?」

ラルズは不機嫌に首を振った。

「俺が知る訳無かろうが。ひょっとすると白い屑共の企みが不発に終わったのではないか?」

そうかも知れないが、分からないまま放置する訳にも行かない。

俺は詳しい事情を聞く為、アザリンと赤芋餅を呼んだ。



「本当に黒くなっているのだな…赤いのと同じ個体なのか?」

「そんなこと私が知る訳無いではありませんか…」

「赤芋餅はお前に一番欲懐いているのだろう?何を行っているのか通訳出来ないのか?」

アザリンは心底嫌そうに答えた。

「皆にも言いましたが、私が飼い主という訳ではないのですから…。もし飼っていたとしても、黒森狼が何を言っているのか狼使いにも分からないでしょう?」

「それは道理だな。だが、今回の件は分からんからと放っておけるほど軽くもない。大毒蜘蛛が何処へ行ったのか、何とか聞き出してくれ」

「はぁ…一応やりますが…」


芋餅の方にしゃがみ込んで、やり取りを始めるアザリン。

ピュルピュルと触手を蠢かせながら鳴く芋餅。

後で俺も見ていたが、見事に何の事やら分からん。

アザリンもお手上げのようだ。当たり前だな…。

酷なことをさせてしまった様だ。


二人?を帰らせて、司祭と今後の対策を話し合った。

魔都から念話術の使い手を呼び寄せて芋餅の話を聞くしかあるまい。

あと当面は、子蜘蛛の駆除を続けながら、同時に大毒蜘蛛を探索は続ける。

面倒なことになったものだ…。

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