慧×結花
「もう逃さないよ?」
ネクタイを緩めながら私に覆いかぶさり、息が苦しい程に何度も唇で口を塞がれ、愛しそうに頬を撫でられる。数年ぶりに会ったこの人が、こんなに私を想ってくれていたなんて知らなかった。
ーーーーー
幼い恋の始まりは中学2年生の時だった。転校生だった私は教室に入った瞬間恋に落ちた。
「白河結花です。隣町から引っ越してきました。今日からよろしくお願いします。」
席は端の所な!と先生に言われ席に着く。周りの子達が色々話しかけてくれ、雰囲気の良いクラスで良かったと安心した。恋に落ちた相手は入山慧君という名前だと教えてもらう。スラッとした体型でサラサラした髪に切れ長の綺麗な目に私は夢中になった。
それから私は事ある毎に入山君にはなしかけた。最初は素っ気なかったけど、段々話してくれる様になり徐々に仲良くなっていった。からかわれる事もあったけど隠す事無く、毎日入山君に話しかけた。
「白河はどうして僕に話しかけるの?」
「好きだからだよ。」
沈黙が流れ僕もって言ってくれた。嬉しくて嬉しくて天にも昇る気持ちだった。それ以来休みの日に一緒に出かけたり、試験前はお互いの家で勉強したりもした。呼び方も下の名前で呼ぶ様になり、中2が中3になっても1度も喧嘩すること無く交際は続いていた。そんなある日、慧が他校の子デートしていたと噂を耳にする。
そんな訳ないと反論し聞きに家に向かうと、慧の家近くで女の子と居るのを見かけた。見たことの無い子で抱きあっている。私は急いで家に帰り涙が止まらなかった。そこから私は慧を避けた。家に来ても居留守を使い学校でも徹底的に逃げた。
夏休みを前にお母さんに話があると呼ばれリビングに行くと、お父さんもいて重々しい空気が流れている。
「転勤が決まった。やっと慣れた結花には悪いが8月に引っ越す事になる。」
「…わかった。」
言っても仕方無い。お父さんが転勤族でいつも引っ越しばかりしていた私は慣れていた。慧に出会えた街を出るのは寂しいけど、忘れるためにはちょうど良い。親友の1人にだけ告げ先生には誰にも言わないようにしてもらった。これで私の幼い初恋は終わった。
そんな相手が何故か目の前にいる。大学を卒業して入社した会社に慧がいた。同期だと言う。戸惑ったけど慧が普通に接してきたので私もそうした。呼び方が入山君に戻り不思議な気持ちの中、社会人1年目がスタートした。
入山君は会社内でも人気があり常に話題の人だった。どれだけアプローチされても、長く付き合っている彼女がいるらしく断っていた。そんな人がいるんだと胸が締め付けられる。
仕事でいつも助けてくれ入山君はとても頼りになる存在だった。ある日私の失敗で残業でしていた時も一緒に残ってくれ励ましながら手伝ってくれた。昔と変わらないな。いつも知らない間に助けてくれる人だった。本当大好きだった。離れてもずっと忘れられなくて想いつづけていた。もういい加減諦めないと。
資料室で探し物をしていると、入山君が手伝いにきてくれた。あ!っと思った瞬間ハシゴを踏み外す。
「結花!」
昔みたいに名前が呼ばれた気がした。痛くないと思い目を開けると、私は入山君に抱きしめられていた。
「ゴメン!重いよね?」
離れようとするが腕の力が緩まらない。あの…と声をかけると、目の前で入山君が見つめている。私は真っ赤になってしまう。頭を支えられ唇が重なる。結花と囁きながら唇が降ってくる。
「俺あの時何かした?何で急にいなくなった?」
「彼女居るんでしょ?!こんな事しないでよ!」
「結花の事だよ。俺は別れたと思ってない。認めてない。ずっと会いたかった。」
抱きしめられている腕に力が入る。首元に擦り寄ってきてサラサラな髪がくすぐったい。え?私まだ彼女?あの時の子は?
「慧が女の子と会って抱きあってるの見た。デートしてたって噂も聞いたよ。」
慧がバッと顔を上げる。また慧って…と嬉しそうにしている。中3の時だよね?あれは違うよ。いとこで久しぶりにアメリカから帰って来てたんだって。
「…言ってくれれば。」
「説明したかったけど、ずっと避けられてて…ある日結花が居なくなった。」
私の勘違い?勘違いで慧を傷つけた?ゴメンと慧に抱きつく。抱きしめられたまま床に座った状態でしばらく話をした。慧が私をずっと好きだった事、探したけど見つからなかった事…凄く酷い事をしてしまった。
「私もずっと慧が好きだった。」
忘れられなかったと伝えると軽く口付けをされ、仲直りねって笑ってくれる。立ち上がり帰りご飯に行く約束をする。また後でねって唇が重なり資料室から慧が出て行った。
退勤時間になり慧と会社を出る。ゆっくり話をしたいから家に来ない?って誘ってくれ途中テイクアウトを購入し慧の家に向かう。一人暮らしの家は綺麗に整っていて、シンプルながらこだわりのある部屋だった。昔の慧の部屋もこんな感じだったなって思い出す。
「ご飯食べる?」
「先に結花食べる。」
抱っこされ寝室へと連れて行かれる。戸惑っていると唇が重なり押し倒される。もう逃さないよ?ってネクタイを緩めながら近付いてくる慧は色気が爆発していた。抵抗虚しく隅々まで見られ愛され尽くした。
「ご飯食べれる?」
「無理かも…もうちょっとしてからにする。」
あとで一緒に食べようって口付けをされる。慧がこんな甘々だったなんて知らなかった。
「いつ結婚する?結花の家に挨拶行かないと。」
「え?結婚するの?」
逃さないって言ったよね?て首元に慧の唇が落ちてきて、また嫌ってほど翻弄された。その後は話がどんどん進み、この週末にお互いの実家に行く事になるとは思わなかった。勘違いで傷つけた分これから大事にしたい。




