外伝~プロローグ~
―――――悪魔の書
それがいつから、どうして存在するのか、人間は誰も知らない。
ただ遠い昔から存在し、その書を使い悪魔を呼び出せば、どんな願いもその悪魔に叶えてもらえるという話だけは伝わり続けた。
同時に、注意もつけ加えられる。
ただ願いを叶えてもらえることはなく、代償を払わなくてはならないと。
大抵は悪魔を呼び出しても、なぜかすぐに命を落とすため、悪魔の書を使えば死ぬとも伝わっているが、中には願いを叶えられた後、視力や四肢、財産等を奪われる者もいた。そんな彼らでも死後、悪魔と契約したということで、魂は天界へ向かうことはできず悪魔のモノとなる。
つまり悪魔の書は生涯で一度しか使えない。人は、魂を一つしか持っていないから。
代償だと生きながら苦難の道を歩いたにも関わらず、死後、魂を食らわれ消滅することを人間は知らない。
それでも人々は悪魔の書を欲し、願う。
ある者は病気を治したいと。
ある者は金持ちになりたいと。
ある者は憎い相手を殺したいと。
ある者は誤飲した毒の除去と。
ある者は愛する者の心を振り向かせたいと。
ある者は永遠の若さを。
ある者は領民の救いを。
その願いはまさに千差万別、十人十色。あらゆる願いを、悪魔は様々な形で叶えてきた。
悪魔の書と呼ばれる書物は数多く存在するが、それが本物かどうかは、人間に判別できない。
実行し悪魔が呼び出され、初めてその書物が本物だと分かる。
人の力では叶えられない、自分だけではどうにもならない。でもどうしても叶えたい。例え、どんな代償を払ってでも。
そう願う人間は悪魔の書を求める。そして悪魔は、そんな人間を見つけることが得意としており、彼らに悪魔の書が渡るように画策する。
悪魔にとって人間の魂は、好物だからだ。
人のように悪魔側にも個性や能力に差がある。悪魔の書を通じ、それを手にした人間の求める願いが分かり、叶えられる力を持つ悪魔が人間界に現れる。難解で強大な願いであるほど、高位の悪魔が呼び出されるのだ。
稀に世間知らずの幼い子どもが悪魔を呼び出し、すり傷を治してほしいと願うこともあり、その場合、どんな悪魔でも叶えることが可能なので、普段は人間界に来られない悪魔が我先にと、その席を取り合っていた頃もある。
その間、人間は待たされていた。その状況を悪魔界の王、悪魔王は問題視し、当番制を取り入れることに決めた。
なるべく公平に、可愛い配下たちへ魂を食らわせたいという、悪魔王の優しさでもある。
ただどうしても、大きな願いは高位悪魔しか叶えられない。
悪魔を滅ぼしたいから悪魔の書に頼る人間もいる。そんな願いを叶えられるのは悪魔王しかいないため、この願いの場合は毎回悪魔王自らが動く。
だが、どんな願いを叶えられると言われていても、悪魔を消滅させることは不可能。
例えば悪魔の力によって病が治り生きている者は、悪魔が消えればまた病人に戻るし、契約を不履行とし、代償を支払わないことを神も良いとしていない。そのため、人間と契約を結んだ悪魔は見逃される。だから悪魔が全滅することはない。
現在、悪魔たちが狙っている人間が二人いる。
一人は平民の女。娘を病で亡くし、早い別れに悲しみ、生き返りを望んでいる。
もう一人は貴族の女。娘が現在、完治させることは不可能な病に罹り、数年以内に死ぬと宣告された。
娘を愛する母親なら、悪魔の書を求めるのではないか。
彼女たちに悪魔の書が渡れば使用し、魂を手に入れることができるのではないか。
悪魔たちに狙われていると知らない二人の娘たちは、寂しさを抱えている。
母が自分を見てくれない悲しさを。
娘たちの悲しみを、悪魔たちに狙われている二人は気がついていない。二人の視野は狭くなっていた。
外伝本編は、まだ公開まで時間がかかりますが、まずはプロローグの公開です。
ルジーとは無縁の二つの家族のお話です。




