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片桐が寝て、その時周りに誰もいなければ何とかなると思って、俺は機会を待った。
しかしその機会はなかなか訪れなかった。
片桐が寝ても近くに人がいたり、まわりに俺と片桐だけになっても、片桐が起きていたり。
条件は二つしかないのだが、それが都合よくそろってくれないのだ。
俺は待った。
待ち続けた。
そして待ち始めて半年が過ぎたころ、ようやくチャンスが訪れた。
片桐が寝て周りに誰もいない状態になったのだ。
俺は片桐にそっと近づくと、その髪の毛を一本つかんでゆっくりと抜いた。
抜いた瞬間、片桐の身体がぴくっと動いた。
俺はあせったが、片桐は起きることなくそのまま寝続けた。
俺は虎の子の髪を財布の奥にしまいこんだ。
退社後、家に帰るとさっそく準備をした。
財布から慎重に片桐の髪を取り出した。
するとその髪が前方にふわりと飛んでいってしまった。
暑いから開けていた窓からの風によるものだ。
――おいおいおいおい。
俺は髪が落ちたとおぼしきあたりを探した。
するとほどなく見つかった。
――ふう、ちょっとあせったぜ。
俺は道具一式を持つと、車に乗り込んだ。




