プロローグ
本日二つ目です!
勇人は燃える家の中にいた。そして目の前には酷い火傷をした妻のエリーとルーシー。それと彼女たちに守られ、火傷はないが、このような状況下で苦しみ、泣いている、一人息子のコウがいた。
「あなた、私たちの息子を頼みますよ。」
と、エリーが今にも消え入りそうな声で勇人に言った。
「なんで…なんでそんなことを言うんだよ!お前はコウの産みの親で俺の妻だろ!絶対に死なせはしない!」
「いいえ、私たちは…もう死に…ます。火傷が喉…まであって、息ができ…ないの…です…わ。だから、貴方たち…だけ…でも…早く逃げ…て。」
と、ルーシーがほとんど息だけの声で言う。
「馬鹿野郎!そんなことできるか!お前たちは俺の全てだ!見捨てることなんて…できるわけがないだろう!!」
「馬鹿はあなたでしょう!あなたには父親としてその子を守る義務があるではありませんか。それを放棄することは私が許しませんよ。」
「でも、エリー。俺は!」
「分かっています。もう十分です。それに、いい死に際ではありませんか。愛しい愛しい我が子を守って死ぬなんて。でも、私は最底の母親ですね。何もこの子にしてあげられなかった…でも、約束です。絶対に守り抜きなさい。」
「もういい、何も喋るな!今すぐ治療師を呼ぶ!」
そう言って勇人は直ぐに村の治療師を呼ぼうとした。
しかし、現実は、あまりにも無情だった。
勇人がその場で立ち上がり、家を出ようと振り返ると、黑い空が突然光り、勇人の目の前に落ちた。
そこには、体からバチバチと雷が発生している、神々しくも、どこか禍々しい、白い獣がいた。
「おっ、お前は、まさか麒麟!何故こんなところに!」
「ここに美味そうな魔力があったもんでな。しかも二つも。だから喰いに来た。」
と麒麟は言う。
「あと1人は…コウか?」
「そう、そこの餓鬼だ。我は千年に一度、大量の魔力を喰らわねばならんからな。だから大人しく我の糧になれ。」
麒麟はそういうと、勇人たちを喰らおうと、口を開け、突撃してきた。
麒麟とは、この世界なおいて、天災や厄災とも呼ばれるもので、その起源は一億年に昇るとも言われている。
麒麟が降臨した際には、数千万に昇る人が喰われて死ぬという。そして、今までに一度も倒されなかった。
いや、倒すことは不可能だったのだ。
何故なら、麒麟は神の使いであり、不死の存在であったからだ。
しかし、勇人は諦めなかった。何か麒麟を倒す手段がないかを必死に模索しながら、麒麟に魔法を叩きつけ、いい作戦を思いつくまでの時間を稼ぐ。
「大人しく我が糧となれ、脆弱なるニンゲンよ。無駄な足掻きはするだけ我の怒りをかうぞ。」
「お前の好きになんか、させるかぁぁぁ!」
勇人はそう叫びながら、自身の魔力の全てを使って、一つの装飾も何もない、銀色のペンダントを作った。
それは、この世界の人々ではとても作れない、異世界からきた勇人だけが作れるペンダントであった。
そこには、勇人が異世界から召喚されたときに身に付けた無属性魔法の中でも最高位魔法。縛命封印結界と呼ばれるものであった。
この魔法は、その名の通り、使用者の命を用いて対象者の命を縛り、封印するという効果をもつ。
倒せなければ、倒さなければいい、と、いうことである。
「貴様ぁぁぁ。なんだこれは。こんな魔法、聞いたことが、ない!この我を封印するつもりか!」
「そうだ。お前にはまだうちの子をくれてやる訳にはいかないんでね。それに、いくら俺とて、お前に勝てるとは思えなかったんでね。長々とお前と話している時間はないようだ。そのまま大人しく消えてもらおう。ではさらばだ。」
「貴様ぁぁぁぁ!」
勇人がそういうと、麒麟は、ペンダントの中に吸い込まれていった。
そしてそのペンダントを息子のコウのすわったばかりの首にかけ、妻たちをみた。すると、彼女たちはすでに息絶えていた。その顔は、とても満足気で、美しかった。
「俺もすぐにそっちへいくよ。もう、歩く力ものこっちゃいない。でも、そっちにいく前に、やらなくちゃならない事があるな。」
そう言って、勇人は残りの魔力を全て使って、コウに転移魔法をかけた。
「これが、俺が父親としてできる最後の仕事だな。こんな火の中にはお前を置いていけない。
もっと、お前と話をしたかった。もっとお前の成長していく姿を見たかった。お前の先に死んでいくお父さんたちを許してくれ。
お前に苦しい思いをさせてしまって、ごめんな。
どこか争いや暴力のない、平和な村に飛んでいってくれ。
エリー、ルーシー、約束、守ったぜ。今から俺も、そっちへいくよ。」
そう言うと、勇人は息絶え、コウは光と共に、黑い雲の隙間から差し込む、一筋の光りの中へと、進んでいくのだった。
いやー長い前振りでしたね。いよいよ物語がスタートです!!




