↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛し方を間違えた鬼は、何度でも君を失う  作者: 白 月虹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/24

1話 木蓮の木の下

【貴方に伝えたい事があるの。

―――私はちゃんと、貴方の事を、

愛してましたよ。】


時は遡ること約八百年前。


夜、モクレンの木の下に、着物姿の人間の娘が佇んでいた。


(…こんな夜更けに、女一人。

何をしているんだ?)


黒い鬼は人間の姿に変え、少しずつ近づくと、その娘は泣いていた。


「っ!なんと、美しい…。」


娘が顔を上げた瞬間、朔夜は息を呑んだ。


月明かりに照らされたその顔は、人間など興味もなかった朔夜の心を、一瞬で奪っていった。


「え…。」


「いや、すまない。…こんな夜更けに…物騒だぞ?」


「…すみません。」


黒い鬼は、手ぬぐいをパッパッと払うと、視線をそらしながら差し出した。


「これ、良かったら…。」


「…ありがとうございます。」


娘は受け取ると、涙を拭った。


「送って行こう。家はどこだ?」


「……。」


風がモクレンの木を揺らすと、花びらが散り、娘の頭の上に落ちた。


「俺は、朔夜(さくや)。」


頭に乗った花びらを取ると、娘に微笑みかけた。


「私は、心乃葉(このは)と申します。」


その佇まいから、どこか百姓の娘か武家の娘か…。涙の理由も気になったが、この時間が続けば良いと、朔夜は思った。


「…モクレン。好きなのか?」


「はい…。」


「そうか…。」


会話は途切れる。

けれど、続くのは心地よい沈黙。


「…屋敷は、近いので大丈夫です。」


「そうか…。良ければ、また明日同じ刻に、ここで…。」


心乃葉は、一瞬目を見開くと、ニコリとしてその場から離れて行った。


(なんだ?心の臓が…早い…。鬼の俺が?)


次の日――少し約束の刻に早く、朔夜はモクレンの木を眺めていた。


「朔夜様?…遅くなってすみません。」


早足で来たのか、心乃葉は乱れた髪を指先で整える。

そんな何気ない仕草に、朔夜の心はざわついた。


「気にするな。それと、これを…。」


手の上にはモクレンの押し花が乗せられていた。


「これは…まぁ、凄いです。モクレンで押し花なんて!」


鬼の朔夜には造作もない事だったが、心乃葉の反応を見て、人間は出来ないのかと、内心は焦っていた。


「…貰って欲しい…。」


「ありがとうございます。」


心乃葉はニコリとすると、手のひらから押し花を受け取った。

少しの違和感を抱いたまま…。


「…私、父に紹介された方と、結婚する事になったんです。」


「……嫌、なのか?」


風がモクレンを揺らす。


「……好きな人が、居るんです。」


想い出すと心乃葉の頬に、涙が伝う。


「そうか…。」


朔夜はそれ以上何も言えなかった。

好きな人…昨晩出会った自分ではない事は明らか。それでも心が動くこの娘に、何かしてやりたいと思った。


そうして次の日の朝、心乃葉の許嫁の太田が、河川敷で遺体で発見された。



つづく。

読んで頂きありがとうございます。

これからよろしくお願いします(*_ _))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。