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悪役令嬢RTA(リアルタイムアタック)~断罪イベントまで残り10分ですが、最短ルートで国外追放されてみせますわ!~  作者: 高橋 淳


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8/8

第8話 RTA走者、実況される

国外追放処理保留。


—全てが前代未聞だった。


王国側の書類不備。

隣国側の外交確認待ち。


さらに。


『王太子自ら追放撤回を求めて隣国入りした』


という情報まで加わった結果、エルーゼ・フォン・アルヴィアの処分は完全に宙ぶらりんになっていた。


正式追放でもない。

帰国済みでもない。


極めて微妙な状態。


そして人々は、こういう妙な話が大好きだった。


結果。

噂が爆発した。


「聞いたか?王都を半日で追放された令嬢の話」


「断罪を自分から進行したらしいぞ」


「荷造りを一瞬で終わらせたとか」


「王太子が追いかけて隣国まで来たんだろ?」


尾ひれがひどかった。

しかも広まるのが速い。


商人。外交官。吟遊詩人。


特に最後がまずかった。


数日後。

ベルグラード中央広場。

一人の吟遊詩人が高らかに歌い上げていた。


♪銀の令嬢 涙を隠し

♪愛する祖国を後にして

♪愛する人の未来のため

♪ただ一人 身を引いた――


「誰がですの????」


宿屋二階。

窓際でエルーゼが机を叩いた。


侍女が気まずそうに目を逸らす。


「最近、大人気でして……」


「事実が一割もありませんわ!!」


実際には。


・断罪を急かした

・説教を三行要求した

・荷造りをバグ技で飛ばした

・行政処理へキレた


である。


どこに悲劇のヒロイン要素がある。

だが世間から見れば違った。


気丈に祖国を去った令嬢。

最後まで王族の名誉を守った女。


……みたいな感じに解釈されていた。


(風評被害ですわね……)


エルーゼは頭を抱えながら、机へ向き直る。

そこには大量の紙束。


タイム計測。イベント発生順。ルート分岐メモ。


完全にRTA検証画面だった。


「初動はかなり良かったですわね……」


エルーゼは真剣に分析を始める。


「断罪高速化、荷造りスキップ、書類処理短縮。ここまでは理論値に近かったですわ」


さらさらとペンが走る。


「ですが説教イベント圧縮が甘かったですわね。あそこで好感度を上げたのが致命傷ですの」


さらに別紙をめくる。


「あと隠し攻略対象との遭遇条件。あれは完全に事故でしたわ」


現在の総評。


—記録不成立。


理由は明確。


「追放撤回イベントが発生した時点で、RTAとしては失敗ですわね……」


エルーゼは遠い目をした。


そう。最大の問題はそこだった。


攻略対象たちが隣国まで追ってきたことで、


『処分見直しの可能性あり』


という扱いになってしまったのだ。


つまり現在、エルーゼは正式な国外追放状態ではない。

タイマーストップ条件未達成。


RTA用語で言えば。


—No Clear。


「……悔しいですわね」


エルーゼはぽつりと呟く。


「かなり良い走りでしたのに」


その時だった。


パチと、背後で音がした。


エルーゼが振り向く。

誰もいない。


だが。


部屋の空気が、妙に冷えていた。


《警告》


無機質な文字が、突然視界へ浮かび上がる。

エルーゼの背筋が凍る。


「……なっ」


《本来存在しない進行速度を確認》


《シナリオ崩壊率 上昇》


《攻略対象への異常影響を確認》


文字列が次々現れる。

まるでシステムメッセージ。


いや。本当にシステムそのものだった。


《警告》


《このままイベント破壊を継続した場合、物語構造に深刻な障害が発生します》


エルーゼの顔から血の気が引く。


(……ゲームシステム側ですの!?)


そして最後に。

ゆっくりと、一文が表示された。


《これ以上、RTAを続行しないでください》


部屋が静まり返る。


窓の外では、吟遊詩人がまだ歌っている。

だがエルーゼだけは、笑えなかった。


なぜなら彼女は、RTA走者だから知っている。


 “システム側からの警告”。


それは大抵。

もっとヤバいバグの前触れだった。

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