第一話.破滅のディーラー
この作品は主人公がディーラー側です。
結構理解力が要ります。
地下へ続く階段は、やけに静かだった。
湿ったコンクリートの匂いと、靴音だけがやけに響く。
「……ここが、最後の賭けになるかもしれないな」
挑戦者の男は、わざとらしく笑った。
だが、その喉は乾いている。
当然だ。ここで負ければ、死ぬ。扉が開く。
眩しいほどの白い照明。中央には一つのテーブル。
そして、その向こう側に――
「ようこそ」
ディーラーがいた。
年齢不詳の青年。整った顔立ちに、感情の薄い目。
「本日のゲームを担当します」
ゆっくりとカードを切る。
シャッフルの音が、妙に心地いい。
だが男は知っている。
その指先が、“人を殺す”ことを。
「……お前が、“破滅のディーラー”か」
青年は、わずかに笑った。
「呼び名には興味がありません。ただ――」
カードを一枚、滑らせる。
「勝者が生き、敗者が死ぬ。それだけです」
男は席につく。
震えは、もう止まっていた。
覚悟が決まったのか。それとも、壊れたのか。
「ルールはシンプルです」
ディーラーの声は、どこまでも冷たい。
「貴方の勝利条件は4ターンでの合計金額で私より高い事。」
その言葉に、説明は不要だった。
「イカサマは禁止、ですよね?」
男が探るように言う。
その瞬間。ディーラーの目が、わずかに細まる。
「もちろんです」
間。
「ただし――」
カードが、テーブルに落ちる。
「見抜けなかった場合に限り、ですが」
沈黙。男の背中を、冷たい汗が流れた。
(やっぱりか……)
ここは、ただのギャンブルじゃない。
騙し合いだ。心理戦だ。そして処刑場だ。
「では、始めましょう」
ディーラーが微笑む。その笑みは、人間のものではなかった。
「あなたの運命を賭けて」




