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第35話

その名を口にした瞬間、周囲の空間が揺れ動いた。突如として現れたのは無数の小さな人形たち。彼らは整然と並び、まるで儀式の開始を告げるかのように淡々とその手を叩き始めた。音は規則的で、次第に重なり合い、場に圧倒的な緊張感をもたらす。

「何だ……コハル何を?」

ラヴィアが苛立ちを露わにするが、人形たちは彼女の存在すら意に介さず、ただ舞台を整えていく。その拍手は徐々に高まり、空間そのものを震わせるような響きとなった。



拍手の最高潮に達した瞬間、周囲に濃密な闇の霧が立ち込める。その霧の中心に浮かび上がる巨大な階段。頂上には一つのステージが設けられており、重厚な赤色のカーテンがその向こうにステージの中央、まだ薄明かりの中、優雅なシルエットが現れた。

コーラスと共に音楽がなり、シルエットが踊りだした。

その踊りは優雅であり、どこか気品を感じさせる。そして、音楽が止むとシルエットがゆっくりとカーテンを引き裂き、その姿を見せた。



それは人形だった、だがただの人形ではない。力強い瞳、美しい顔、そして圧倒的な存在感を放つその体。その体は女性を模しており、その容姿は見るものを魅了する。

その姿はまるで女王の様であり、見る者全てを圧倒する力があった。

優雅に階段を下る度、彼女のヒールが鳴る。その音だけが劇場に響く。

そしてステージに辿り着くとゆっくりとドレスを持ち上げ会釈し、透き通るような声がホールに響く。

その声はその場の全てを一瞬で支配し、一つ瞬きをした瞬間には空間の温度が上昇したかのような錯覚を感じさせた。



「初めまして、私はアルケインエンプレス。創造主たる、コハル様とラヴィア様に感謝を申し上げながら、ここで一つ謝罪を……」

「申し訳ございませんコハル様、私は貴女望み全ては叶えられそうにはありません、ですがこの身を捧げ、粉骨砕身の覚悟をもってご協力する事を誓います」


(意志ある人形か、何かを媒体にせず。己のマナで作り上げた人形。私の時はことごとく裏切り続けたゴミカス共め)


「さて、ラヴィア様。もう一人の創造主たる貴方にこの鋭刃を向けるのは心が……いや、全然痛みませんねえ」


「ちっ、どいつもこいつも母なるものに対する礼儀が無い」

「はて、それなら親は子を愛する物では?ただの道具としてみている貴方に礼儀なんてものは要りませんね」

アルケインエンプレスが微笑みを浮かべたまま無から、杖を生成し構える。

「ふん、減らず口は聞き飽きている。さっさと来い」

「では」


杖でトンと床を突く、その瞬間に……時は止まった。

意識ははっきりとしている、体が動かないのだ。

ぴたりと、この場にいる全ての生物が動きを止めた。

ただ二人を除いて。


【星に手を】(スターロード)か……随分と懐かしい物を」

「効きませんか……」「見慣れた魔法だ、対策はしてあるさ」

「なるほど……では、始めましょうか。この人形劇を」

「ああ、そうだな。人形劇だ」

アルケインエンプレスは杖を再び地面にトンと突き、初弾の準備に移る。


【第一演目】ファストコンジュレーション


アルケインエンプレスの言葉と共に、人形たちが現れ一斉に動き始めた。

まるで舞台の演者が指揮者のタクトに従うように、流れるような動きで配置を整えていく。その動きには乱れが一切なく、完璧な調和を保っていた。

空中には無数の魔法陣が次々と形成され、光の軌跡が幾何学模様を描く。その全てがエンプレスの意志に従い、即座に次の動作へと移行していく。


ラヴィアは冷笑を浮かべながら、一歩前に出た。彼女の手には既に魔法の剣が形成されており、その刃先がきらめいている。

さらに魔法陣を浮かべ、そこから次々と人形を生成していく。その姿は動物のような物から人間の形に近いものまで、バリエーションに富んでいた。


「お前の最初で最後の饗宴だ、精々楽しめ」


それを合図に戦闘が始まった。互いの人形がまるで軍と軍のぶつかり合いの様にぶつかり合い、互いの属性が入り混じる。

魔力と魔法、熱と冷気、そして物理的な破壊力が全て支配する劇場はまさに地獄絵図。


【魔法統制】(アルケイン・ヴォンド)

その声とともにエンプレスを中心に結界が広がりその結界に触れたラヴィアさん側の人形が一切の行動を停止した。

「人形を制御しているその魔力の糸、切らしてもらいました」

「……は?」

ラヴィアはその現実に目を疑うように固まってしまった。

アルケインエンプレスはその光景を楽しむかのような表情を浮かべ、ラヴィアの方へ歩き始める。


瞬間、空中に並んだ魔法陣から膨大なエネルギーが放出される。光の矢、炎の弾、そして鋭い氷の刃が一斉にラヴィアを襲った。その数と速度は圧倒的で、まるで嵐のようだった。ラヴィアは剣を振るい、目にも止まらぬ速さで次々と放たれる攻撃を切り払っていく。


(何が起こった?私のマナが体外へ放出されない……つまり、魔法が使えない)

木偶の棒となったラヴィア側の人形を通り抜け、エンプレス側の人形がラヴィアに迫る。


「っ……いつもいつも邪魔をして来るのは私のスキルだな!」

向かってくる人形を次々となぎ倒しながら考える。

(あるマナは全て肉体強化に回せ!このアルケイン・ヴォンドが切れるまで)

猛然と向かってくる人形を何度も何度もなぎ倒し、現れる魔法陣を切り抜けるように水面を走るような小刻みな動きをした。


エンプレスが微笑むと同時に、人形たちが再び動き出し、別の配置へと変化した。新たに展開される魔法陣は、より複雑で、より強力な気配を漂わせていた。

「さあ迎えましょう、【第二演目】(グランドマニューバ)

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