中央広場5
『集え! 勇気あるプレイヤー諸君!
ルナリード領では、鎮めの森の邪龍退治参加者を募集中です。
ログアウトスペース、各種神殿リスポーン地点、無償提供。
参加いただければ、高額報酬、邪龍退治達成者には課金アイテムを進呈!
募集条件︰街の法令を守れる方』
各街、各村にこのような立て札が立てられた。
ルナリードの街でプレイヤーを雇うという旨の立て札だ。
普通のNPCが読んでも、ほとんど意味が通じないゲーム用語の羅列だが、プレイヤーたちはピンと来た。
これは、イベントだ。
そう考えたプレイヤーたちは、続々とルナリードへと押し寄せて来た。
この立て札はルナリード公爵の発案だった。
人が集まると問題が起きるのは当たり前のことだった。
もちろん、素直に邪龍退治に向かうような神兵ならば、そのまま使えばいい話だ。
しかし、ルナリード公爵の狙いは問題を起こす者たちであった。
『公共の場での魔術書使用禁止』
同時に、ルナリードの街にはこのような立て札が立てられた。
一般的なプレイヤーは、この世界の文字を魔術書を通してしか読めない。
つまり、この立て札を読もうと思えば、魔術書を開いて確認するしかないのだ。
理不尽だと怒る時には、処罰房と呼ばれるルナリード公爵の玩具部屋の中だ。
そうして、プレイヤーが一人消え、擬似不死薬が数本、対魔騎士を中心に配られることになる。
対魔騎士の半分は結局のところルナリードの街の守りという名目で残されることになった。
やっていることはプレイヤーの道案内である。
しかし、コッパーは街の外へと出ていた。
擬似的不死の力を得たコッパーの性格はまるで変わってしまっていた。
それはルナリード公爵に見せていた勇猛果敢な対魔騎士の姿そのもので、嘘の顔が本当の顔になってしまったような変わり様だった。
案内人としての仕事がなくなったルインは、宝石器の冒険者に痛めつけられた身体に包帯をぐるぐる巻きにして、クロスボウを手に、中央広場に陣取っている。
それくらいしかやれることがないのだ。
アジ・ダハーカが生み出す魔物に追われた第一波の魔物を退け、今はいつ来てもおかしくない第二波の魔物たちを食い止めるべく備える時間。
大通り以外の小道に出来うる限りのバリケードを置き、街の外では壁や門の補強を施す。
矢玉を揃え、食料を集め、全員が一丸となって、第二波に備えていた。
ルインだけが何もしていない感覚に囚われる。
事実、ルインは空を睨むだけだ。
四つ足の獣型魔物を見れば、足が竦む。
鎮めの森に挑むでもなく、第二波に備えた斥候に出るでもなく、壁の上に立って魔物を待ち受けるでもない。
唯一、できそうなのは空を来る鳥型の魔物を撃ち落とすくらいのことだ。
それとて、痛みに震える腕で、どこまでやれるのか……。
だからといって、街の人々もルインに構ってやれるほどの余裕はない。
だが、そんなルインに近づく影があった。
老婆ノルナニアである。
「痛むかい、坊?」
「ババア……」
「家で寝とりゃあいいのに……」
「落ち着かなくてな……」
「因縁の相手だからかい?」
「……まあな」
ノルナニアはひと瓶の薬を取り出す。
「効果は四半刻てとこかね。
痛みが消えて、元気に動けるよ。
ただし、使った後は死んだ方がマシな痛みに苛まれるよ」
「ありがたい……」
「使う機会は自分で作るこった。
坊が紹介してくれた弟子に最低限のことは仕込んだし、必要なら連れていきな」
「すまない」
「カカッ、何言ってんだい。
神兵は死なないくらいしか取り柄がないんだ。
せいぜい、しごいてやんな」
そう言って老婆は去っていく。
残されたルインは、大事そうに薬を懐に仕舞うのだった。
今年の投稿はこれで終わりになります。
来年は元旦予定!
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皆様、良いお年を。




