中央広場2
いきなり始まったプレイヤー数人によるPvPイベントは、ルナリードの街、中央広場でのNPC大量虐殺からスタートした。
最近、著しく治安が低下したとはいえ、ルナリード領は多数の対魔騎士と冒険者を抱える大都市である。
人々はそれなりに安心しきっていた。
まさか、自分がNPCキラープレイヤーに狙われることはないだろう、と大多数の人々が考えていたのである。
そんな中、始まってしまった大虐殺。
昼日中に暇をしている冒険者は少なく、対魔騎士の巡回や兵士の巡回はあるものの、人々を守るのに充分な人員がすぐに対応できる訳でもない。
NPCキラープレイヤーが経験値稼ぎという名の大虐殺を始めて、最初に気付いたのはそれでも冒険者たちだった。
昼日中の冒険者たちというのは、大抵の場合、仕事を終え、疲弊して帰って来た者たちである。
それに気付いた冒険者たちは、疲弊した身体に鞭打って、なんとかしようとしたが、プレイヤーの使う技は達人級のキレを見せる。
銀器以上の冒険者でもなければ、まともに受けることすら叶わなかった。
そして、次に気付いたのがルナリードの街を中心に活動しているプレイヤーたちである。
これはある意味、予定されていた行動でもあった。
ただし、ルナリードの街を活動の中心に据えているプレイヤーたちは、何のイベントなのかを知らないまま、ただプレイヤー主催のイベントがあるとだけ知らされていたのだ。
ルナリードの街を中心に活動するプレイヤーからすれば、なんともはた迷惑なイベントだった。
ようやくコネを作ったNPCや思い入れのあるNPCなどが、一部のプレイヤーの経験値稼ぎのために消費されていく。
これがゲームだと割り切っている者からしても、迷惑行為に他ならない。
そして、衝突が起きた。
このゲームでは技の善し悪し、武器の相性などがあるものの、レベルは強弱を決定づける絶対的なものではない。
VRを極限まで高めた結果、リアルスキルがかなりの比重を持つゲームになっているのだ。
もちろん、レベルによるHPの差や能力値による差はある。
しかし、戦いの勘や覚悟といったものは完全にプレイヤーのリアルスキル頼りだ。
喧嘩慣れしていたり、格闘技経験者ならば踏み込める一歩。
そして、なにより人を殺した経験値に出ない経験による一歩が踏み込めない者は多い。
最前線と呼ばれるルナリードを中心にしているプレイヤーたちが、一番強いとは言い切れないのだ。
それを証明するためのPvPイベントでもあった。
NPCキラープレイヤーたちは、NPCを殺して来た。
つまり、経験値に出ない経験を得ている者たちだった。
最前線プレイヤーの中には、野盗などを斬り捨てた経験をした者もいるにはいたが、それは極少数と言わざるを得ない。
戦えば、その経験の差は如実に現れていった。
そこに対魔騎士や兵士が乱入してくる。
NPCからすれば、奇異な見た目のプレイヤーは、まとめて神兵〈しんへい〉でしかない。
NPCキラープレイヤーと最前線プレイヤーは、どちらも街中で剣を振り回す危険分子である。
そこでさらに最前線プレイヤーたちの剣は鈍る。
ひどく混乱した現場だった。
乱戦に次ぐ乱戦、敵味方が入り乱れ、最前線プレイヤーのほとんどがどうにもならなかった。
「たたた、大変です!
街中でNPCキラープレイヤーたちがいっぱい一斉に辻斬りをはじめて、それを止めようとしたプレイヤーと戦いになって、そこに兵士とか騎士の人たちが来て、と、とにかく大変なんです!」
一見するとNPCにも見える黒髪のプレイヤー、アワツキがそう叫びながら縋ったのは、ルインだった。
久しぶりに普通の旅人の案内をしていたルインは、アワツキの薄汚れた格好に驚きつつ、詳しい事情を聞くことにしたのだった。




