エサム廃坑
ルインはルナリード西の山、昔は希少な金属が取れる鉱山として活用されていたエサム廃坑にとある魔物を狩りにやって来ていた。
その魔物とはヒフキヒクイと呼ばれる二足歩行の鋼鉄の魔物を指す。
その足は普通とは逆に曲がる関節を持ち、火の玉を吐き出すための短い腕、全身に三十からなる目を持ち、溶岩を喰らう。
この魔物の持つキラキラと光る石の中に封じられた脳が、稀にルナリード公爵からの依頼として出るのだ。
ルインは四足の魔物相手では、身体が固まって、ろくに動けないが、そうでなければ昔と同様、金器の冒険者として働けることが分かった。
道中、四足の魔物用の冒険者なり、プレイヤーなりと組めば、難しい依頼もこなせるのだ。
そんな状態で、ギルドがルインを放置しておくはずもなく、肝いりの依頼などがルインに回されることとなった。
最近ではプレイヤーの流入も増え、案内人としての仕事も続けているので、まともな冒険者をやるのは、たまにではあるが、それでも、ようやく街の外に出られたという喜びはそれなりにある。
「くっ……鉱山熊だ。
豆腐メンタルさん、頼む……」
廃坑では、ほとんど四足系魔物は出ないが、まったくいない訳ではない。
今回、協力してくれるのは、頭頂部が緑でそれ以外は赤茶という奇抜な髪色をした色白な大剣使い豆腐メンタルという男性プレイヤーと、黄色髪に褐色肌、カトラスという薄刃の片手剣を使うプッツンプリンという、やけに扇情的な薄着の女性プレイヤーだ。
「おおっし、力比べだ!」
豆腐メンタルはその名に反して、豪快な性格をしており、大剣使いというのもあってか、少しブレイクに似ている。
「レッツ、ダンシング!」
プッツンプリンは遊撃を得意としており、夢はソードダンサーと語る。
だが、ソードダンサーという職業はなく、言うなれば片手剣使いである。
ルインは、鉱山熊を見てしまえば、身体が硬直してしまうので、慌てて隠れる。
だが、戦い方は知っているのだ。
「横に回れ!
鉱山熊は向きを変える時、棒立ちになる!」
「ごへっ! なんてパワーだ……」
「話、聞きなさいよ」
二人のプレイヤーにとって、ルインはお助けNPCでクエストをくれるキャラだ。
弱点が設定されている辺りも、NPCとしては合格点と言える。
ついでに自分たちの技を解放してくれれば、もっとNPCとしての評価は上がるだろう。
そうして三人は廃坑の奥深くへと潜っていくのだった。




