ノルナニア薬店4
ノルナニアによる魔法談義は続く。
「神々は混沌から世界を作る。
では、混沌とは何か知っているかい?」
「混沌、ですか……色んな物がぐちゃぐちゃ〜ってなって、混ざりあった……」
「ああ、それを世界と呼ぶのさ。
いいかい。世界が混沌に包まれた時、神々は世界を最初からやり直す。
だから、混沌は終わりで始まりで延々と連鎖しているのさ」
「あ……そういう……」
設定になっているんですね、という言葉をアワツキは飲み込んだ。
「お前の魂は生まれ、死に、また生まれと、肉体と観念を行き来している。
これもまた、連鎖の中のひとつなのさ……」
「輪廻とか……」
「そうさね。だが、この連鎖はもっと長く大きな目で見るものだよ。
悠久の時の連鎖の中で、世界もまた生まれ、死にを繰り返していく。
私ら魔法使いは、その悠久の中で魂に貯まった記憶を消費しながら、魔法を使うのさ」
「魂に貯まった記憶ですか?」
「ああ。魂というのは、記憶に鎧われて強度を増していく。
巨大な樹の年輪みたいにね。
つまり、魔法を使うというのは、その年輪を一枚ずつ捨て去っているようなものなのさ。
まあ、今はまだ分からないだろうけどね。
魔法を深く知れば、それが如何に重大なことなのか分かって来るはずだよ」
アワツキは、いまいち腑に落ちていないままに「はあ……」と答えた。
MPは魂の記憶ということなのだろうか。
プレイヤーにはフレーバーとしての意味しかないような気がするが、設定自体はアワツキとしても面白く感じるもので、お話を聞くだけでもいいか、と思うのだった。
それからアワツキの修行が始まる。
基本は錬金術と座学だった。
アワツキにとって、ゲーム内で魔法薬を作るのは、料理や化学実験のミニゲームのようで楽しかった。
また、座学というのもゲーム内の設定を深く掘り下げるのに役立ち、楽しいと感じる。
はたと気づくと、自分のクラス欄が『魔法使い見習い』から『魔法使いの弟子』になっていた。
ただ、これは嬉しいながらも困った事態だった。
本当は他のプレイヤー、特に同じ『魔法使い見習い』を選んだプレイヤーに自慢したい。
だが、ルインとこの事は秘密にすると約束した以上、口外する訳にはいかず、なんとも悶々とした気分になってしまった。
だが、NPCとの約束を律儀に守ろうとする。
それこそがアワツキの特異性なのかもしれなかった。




