ノルナニア薬店2
裏路地から裏路地へ、更にはスラム街の中を通るようにして、ルインはアワツキを案内した。
アワツキは律儀に教えられた道を必死に覚える。
何度も曲がり、時には廃墟の中を通ったりするのは、誰にもバレないようにという細心の注意を要した結果だろうとアワツキは考えていた。
着いた先はスラム街の入口近く、今にもスラムに呑み込まれてしまいそうなボロ屋だ。
「ここが?」
「ノルナニア薬店、ババアが一人でやってる」
「え、薬屋さん?」
「表向きはな……」
それを聞いてアワツキは息を呑んだ。
ルインは当たり前のように扉を勝手に開けて、中に入っていく。
アワツキはそれを見て、慌てて着いて行く。
「ちょ、ルインさん、ノックもなしに……」
「そんなことしたって出て来ないからな」
ルインがいつものように、ずかずかと中に入ると、何故か普段は決していないのに、店内に椅子が置かれ、そこに一人の老婆が座っていた。
「うおっ……ババア!」
「坊、その娘はなんじゃ?」
ルインは普段にないノルナニアの対応に面食らって、身体を仰け反らせる。
「あ、ああ、あの、えっと、プレイヤーのアワツキと申します!」
アワツキは前に出て、急いで頭を下げた。
ルインはひとつ咳払いして、説明する。
「アワツキさんは魔法使い見習いなんだそうだ」
「ふん……なるほどね。
何かあったら坊が責任を取るってことだね。
まあ、いいだろう。
坊は私の弟みたいなもんだ。
坊が認めたなら、修行させてやってもいいかね……」
「お、おう、よろしく頼む……」
異常にすんなり進む話に、不信を感じながらも、ルインは頷く。
「にしても、珍しいな……ババアが店に出てるなんて……」
「ああ、占いに出たからね」
「わ……本物っぽいですね」
アワツキは感動したように呟く。
「ああ、紛うことなき本物だからね。
アワツキだったね。
私の弟子になったら、他のやつに師事はできないよ。
いいかい?」
「あ、そうなんですね……いえ、ぜひお願いします」
瞬間的にアワツキはシステム的なことを考えたが、すぐに思い直す。
今まで、自分で魔法使いを探しても、ただの一人も見つけられなかったのだ。
これはもしかしたら、レベル的な問題か、友好度的な問題かもしれないが、だからといって他を探すという選択肢はあまり考えられなかった。
アワツキはこのゲームを、あまりゲーム的に考えてはいない。
もちろん、プレイヤーの中ではの話だ。
だが、だからこそ、アワツキは縁だと感じて、それを大事にしたいと考えたのだ。
「はっはっはっ……弟子になる以上、私の言葉は絶対だ。
それでいいんだね!」
「え、あ、はい。よろしくお願いします!」
これが魔法使いクラスの縛りなのだろうと理解して、アワツキは頭を下げた。
「いいだろう。じゃあ、坊は今日はもう帰りな。
弟子はこっちだ。ほら、行くよ」
言ってノルナニアは立ち上がって、ひょこひょこと歩き出す。
「え、あ、は?
ああ、えっと、いいのか?」
ルインはこんなにスンナリ話が通って、終わりでいいのかと、頭を捻っていた。
そんなルインを置き去りに、ノルナニアとアワツキは奥に去って行く。
「お茶だけ飲んでいってもいいかな……」
ルインは誰に言うでもなく呟くのだった。




