ハジュマルナ街道5
【精霊武装】を半ばから断たれたブレイクだったが、残された精霊たちが形を変え、元の金の手を形成していく。
対するルインは崩れ落ちるように地面を舐めた。
「くくく……精霊を斬れるのは驚きだがな……それで精霊が死ぬ訳じゃねぇ。
既にぼろぼろのポンコツ野郎は、振り絞ったところでポンコツだったな」
ブレイクはニヤニヤと立ち上がった。
ルインは先に食らった【龍砲】によって、傷だらけだった。
「【断馬】は斬る技じゃねぇ。
渾身の力を爆発させる技だ。
悪食の伝説も腐り落ちたな」
ブレイクは軽く腕を振ると、金の手は薄く細く軽い剣へと変形する。
ルインを殺すのに、全力はもう必要ないという判断だ。
ルインはどうにか立ち上がろうと藻掻く。
「知ってるよ……くそ、野郎……」
風前の灯のような声で悪態をつくが、その声は余りにもか細い。
「じゃあな、さっさと消えてくれ」
ブレイクが金の手の剣を振り上げた瞬間、アワツキの【鬼火】が金の手の剣を弾いた。
「やらせません!
ルインさんは私が守ります!」
アワツキの【鬼火】では金の手の精霊を散らすようなことはなかったが、それでもアワツキはまるでイベントシーンはもう充分だとでも言うように攻撃を放った。
「てめぇ……プレイヤー風情が!」
視線を向けたブレイクに、アワツキは慌てて剣を抜く。
だが、その腰の引け具合をみれば、結果は誰が見ても一目瞭然だっただろう。
「くっ……ステータス、技一覧!
もっと大きな魔法、行きますよ!」
アワツキの掛け声にブレイクは一瞬、身構える。
ブレイクはあまり魔法に詳しくない。
しかし、その恐怖と絶大な力は知っている。
だからこそ、間が生まれたが、そこでアワツキに何か策がある訳でもない。
使える魔法は師匠が見つけられないままなので【鬼火】ただひとつである。
だが、アワツキは自分の技ページに新しい技が浮き出ているのを見つけて驚いた。
「これ……」
だが、技の一覧ページの中で灰色になっている技は現在、使用不可を表している。
「う……足りない……」
光明が見えたかと思った瞬間に消えた。
「……おい。ただのハッタリか。
くそ女が!」
ブレイクが一気に距離を詰めていく。
アワツキは死を感じたが、自身の死は、即ちルインの死なのだ。
それを考えると、死ねない、と強く思った。
ブレイクはアワツキを敵として認めていない。
言うなれば、獲物。もしくはストレスのぶつけ所だろうか。
黒髪のプレイヤー。
プレイヤーのくせに黒髪というのが珍しくて、覚えていた。
尤も髪色だけだ。弱いやつで簡単に殺せたような気がする。
だから、ブレイクは無造作に剣を振った。
技もなく、ただ力任せの一撃。
「【袈裟斬り】!」
アワツキは死ねないという思いの一心で、ブレイクに向けてではなく、ブレイクの剣に向けて技を発動した。
金属同士のぶつかり合う音が響く。
だが、ブレイクの方が膂力は上だ。
押し勝ったブレイクの金の手がアワツキを浅く斬った。
その一撃だけでアワツキは吹き飛んだ。
「ケッ……弱え……」
ブレイクは興味を失って、ルインにトドメを刺すべく、ルインへと向き直った。
「【鬼火】!」
アワツキはダメージに驚きながらも、火弾を放つ。
ブレイクはそれを背中に受けた。
「あぁん? 先に死にてえようだな……」
ブレイクのマントは耐火性能があるようで、火弾によるダメージはあるものの、『燃焼』することはない。
「ルインさんは、希望です!
こ、殺させません!」
のしのしとブレイクはアワツキへと歩み寄る。
アワツキは強がりを言うので精一杯だった。
カービンたちキマイラキラーズが気付いてくれるまで、注意を引きながら、死なないようにする、それだけを考えるのだった。




