94.裁判6
「カヴァル男爵、私欲のため罪なき人達を巻き込み国家の資金まで手をつけるとは…救いようがないな。領地の返還、爵位の剥奪及び国家資金を横領した分鉱山で労働し返金せよ。」
今まで黙って裁判を聞いていた国王様から判決が下った瞬間、カヴァル男爵は真っ青になりその場に足から崩れた。
………当たり前の結果だ。
この判決は死刑は免れても死刑に値するくらい酷だろう。
鉱山は罪人の集まりで起きている時間ほぼすべての時間を労働に費やさなければならない。
カヴァル男爵は国家の資金を巨額に横領していた。これから数十年………命がつきるまで働いても返せるわけがない。
ここまであらゆる人を巻き込み苦しめたのだ……死刑よりも生き地獄を味わうがいい。
「カヴァル・シーファ嬢、カヴァル男爵からの仕打ちは同情するが、リーゼ・ウォレット令嬢に対する行いや罪なき人達を巻き込んだ罪は重い。よって王都より一番遠い厳しい修道院へ行ってもらう。そこで一生をかけて今までの罪の償いを行いなさい。」
カヴァル・シーファ嬢は不安な顔をしていたが修道院行きを告げられるとその後は俯いて気付かれないようにニヤリと笑っている。考えてることがバレバレだ。余程あいつに会いたいんだな。残念だったな。修道院よりも過酷なことになるなんて思ってないだろうが。
リィと離れなければならなくなった状況を作った張本人を簡単に許しはしない。
想い人と甘い時間が送れると思っていたら大間違いだ。
まぁ、今までの行いを包み隠さず言ったのは良しとするが。
残念ながら反省する気は無さそうだ。少しでも反省のいろが見えたら……と思っていたがとことんどん底を味わうがいい。お望み通りあいつの元へ送ろう。
それにしても、未遂に防げてよかった。
事前調査でわかってはいたが、あんな気持ちでリィを他の男が見ていると思うと腸が煮えくり返った。
膝の上で握りこぶしを作り耐えていたが………隣のクリスから「今は耐えろ。」とブレーキがなかったら飛び出して殴りかかっていただろう。
リィの笑顔もすねた顔も………とろけた顔も声も心も身体もすべて俺のものだ。
他の男は想像だけでも死に値する!!
あの連中は………俺のリィをあんな目で見やがって………後でたっぷりと地獄を見せてやる。
これで小さい頃からのリィの不安は取り除けたかな。
さっきからリィを見ていると考え込んでいるのか心ここに非ずで何か様子がおかしい。
明らかにカヴァル・シーファに耳打ちされてからだな。
止めるべきか迷ったがリィも最後に思うところがあるだろうと何も言わなかったんだが………何を言われたんだ?
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ヒロインに最後に言われた一言が頭から離れない。
『頑張って』と言った表情は本当に応援されてるかのような気になった………本心かわからないんだけどね。
これから厳しいと言われる修道院に行くことになるのに清々しい表情だった。ヒロインも何か吹っ切れたのかな。
「…………ィ、リィ!?」
目の前にグレイ様の顔があり、やっぱりかっこいい。今にもキスできそうな距離で思わず吸い込まれていく………て何を考えているんだ私は!!しっかりしろ!
「グッグレイ様!?すみません気付きませんでした。」
とりあえず少し後退をしながら言うとガシッと腰をフィールドされグレイ様から離れるどころか胸に引き寄せられた。
ぎゃぁぁーーーー!グッグレイ様、家族やカペロ様や騎士達、学園の人達や傍聴人が沢山いらっしゃいますよ!!目の前にはグレイ様の着ている洋服が見え………周りからの視線をひしひしと感じてますがとても周りを見渡す勇気がありません。
「リィ、小さい頃からの悩みは解消されたかな?」
グレイ様の言葉に前世の記憶を思い出した日から走馬灯の様に頭のなかを駆け巡る。
断罪に怯えた日々、グレイ様が何度も心折れそうだった私を支えてくれて不安を安心に変えてくれた日々。
いつも一緒にいてくれたグレイ様には感謝しかない。
思い出して目がうるうるとしてきたが力強く返事をした。
「はい。今まで一緒にいてくれてありがとうございます。」
「よかった。」
ポロリと涙が出たが悲しい涙じゃなく嬉しい涙だ。
そっと私の涙を親指で拭ってグレイ様は微笑んでくれた。
これは…………私が話をした前世の記憶をグレイ様も共有して一緒に動いてくれたことの結果だ。
私もグレイ様を見て微笑み抱き合って見つめあっている状態になっていることに気付いていなかった。
まだグレイ様には言えないが、ヒロインからの一言で悩みができてしまった。あれはどういうことなのだろう………。
「リィにグレイセド周りを見てみろ。」
クリスお兄様の言葉でハッとして周りを見渡すと、クリスお兄様があきれた顔をした隣でカペロ様が複雑そうな顔をし………お父様は今にも私とグレイ様に割って入りそうなところをセディオお兄様や騎士達に押さえられ、お母様は相変わらず「あらあらあら、うふふ。」と笑みを浮かべてる。
……………学園のご令嬢達には頬を真っ赤に染め胸当たりで両手で握り拳を作りキラキラとした眼差しで見られていた。
えーーと、それぞれの言いたいことはわかりますがご令嬢達のあの眼差しはどういう意味でしょうか!?
裁判が終わりホッとし私は今までの不安から解放されて浮かれていた。
この裁判でのことがあんな騒ぎに発展するとは夢にも思わなかった。




