90.裁判2
裁判が始まるとカヴァル男爵の今までの行いがグレイ様により読み上げられる。
「カヴァル男爵は他国から主にハアラという綺麗なお花を密輸した。ハアラを加工して服用すると自我を失っていくとわかっていながらだ。1度だけでは効き目が薄く何度も服用することで身体が蝕まれていくといった花を私利私欲の為に国内で自分の娘を使って広めたことは認めるな。」
「………………………………………………はい。」
下を向き認めざる終えない態度……素直に認めるのね。
自分の娘を使って………ヒロインは親から言われて逃れられなかったのかな。。
「他に思い当たることはあるか?」
「特にありません。」
本当はわかってるんだろうな…………わかっていて本人に言わせたいのだろう。
だけど………カヴァル男爵は今のこの状況でもまだ大丈夫と思ってるのか。
「カヴァル男爵は全然反省してないのだな。娘が財務官の息子に近づき財務官を脅しまた国家のお金を横領した積みも重いぞ。」
「そっそれは言いがかりです、私がしたとの証拠がおありで…………?」
言い訳をしたそうだがグレイ様の圧が凄すぎてもう言い逃れできないと悟ったのだろう最後の悪あがきをするがカヴァル男爵は唇を噛み締めて顔を歪めている。
ざわっと会場がどよめきだす。
私も正直ビックリした。人を脅し国家のお金に手をつけるなんて………命知らずにもほどがある。
ばれないとでも思ってたのかな………浅はかな考えだ。
ヒロイン………………何てことに手を染めてしまってたの!!
可憐なヒロイン像が話を聞くたびに崩れていく。
こんなどす黒いヒロイン設定と思わなかった。
財務官の息子さんは大丈夫なのかしら。。
カヴァル男爵の隣に立っているヒロインは大人しく親の罪状を聞いている。
バサッ。
グレイ様が合図するとクリスお兄様とカペロ様がテーブルの上に大量の書類を置いた。
「証拠と言ったな。書面や証言に証人全部出すことができる、言い逃れはできない。お前はだいぶ前から見張られていたんだよ。何時何処で誰と会って何をしていたのかも全て記載されている。自分の利益のためにどれだけの罪を犯してきたんだ。国家のお金に娘や妻までも犠牲に……人の人生をなんだと思ってるんだ。」
グレイ様の言葉に下を向いていたヒロインが目を見開いてカヴァル男爵を見る。
「まっまさかお母さんを利用してたの…………!?逃げ出したって…………。」
震えながらカヴァル男爵に問い掛けているヒロインを横目でジロリと睨んで不敵な笑顔をしたカヴァル男爵。
「お前の母親はメイドだったが綺麗な女だったから俺が見初めてやったんだよ。お前を生んでも衰えることなくある時家に来たお客様があいつを気に入ったんで交渉がうまくいくようにお相手をさせたんだよ。それを何度か繰り返してるとお前をつれて逃げやがった。可愛がってやったのに恩を仇で返しやがって……ようやく探しだしたらお前が成長しててちょうどよかったからな~。お前も楽しんだろ~よかったじゃないか。ははは。」
「あんなに優しいお母さんになんてことを………人間のクズがぁぁぁ!!」
涙を流しながらカヴァル男爵に怒鳴り散らすヒロイン。傍聴している人達もあまりの酷さに言葉が出ず静まり返った。私が聞いてても怒りが込み上げてくるゲスだ。当人はもっと悔しいだろう。
「カヴァル男爵、お前は違反物を所有しさらに売春といえる行為を強要し国のお金まで手をつけた………何より何人もの人達の人生を狂わせた罪の重さは死だけでは償えない。それ相当の罰を覚悟するがいい。」
グレイ様は冷酷なまでに低い声でカヴァル男爵を見ていった。
誰もがグレイ様と同意見だと言うように傍聴人達もカヴァル男爵に冷たい目線で見ている。女性は特に怒りも含まれてるように睨んでいる。
「あぁぁーー…………………。」
さっきまで強気な態度をヒロインに見せていたカヴァル男爵は完全にどうにもならないことがわかったのだろう膝から崩れ落ち嘆いた。
そんな親を横でずっと冷たい目でヒロインは見つめていた。
「さて、カヴァル男爵に利用されていたことは不憫であったが、どんなことがあろうとも手を貸してしまったら罪になる。カヴァル・シーファ嬢お前は色々と動きすぎた………親に言われていること以上にやってしまったな。特にリーゼ・ウォレットへのあたりは強く許しかだい。」
「グレイセド様の言葉に異論はありません。私はお父様の行っていることが悪いことだと知っていましたが、逆らうと体罰があり怖くて逆らうことが出来ませんでした。他国から密輸しハアラの加工は男爵家の温室の一角でひっそりと行われてました。私はお父様に言われた通りにやっていたので、お客様達にどんな方がいるのか全員は把握しておりませんが………私が相手をしていたのは将来有望な令息や上位官僚数名です。」
隣で項垂れているカヴァル男爵はヒロインを終始睨みあげていたが淡々と罪を前を見据えてしっかりと答えるヒロインは何かが吹っ切れたように見えた。
「なるほど。カヴァル・シーファ嬢の方が素直に認めてるな。それからもう一度忠告をしておく。何度も言っているが私は名前を呼んでいいと言った覚えはない。次はないぞ。」
グレイ様は冷酷な目でヒロインを睨んでいて……本当に嫌そうだ。と言うよりも怒ってるように見える。
それがようやく通じたのかまずいと思ったのかヒロインが震えていた。