80.決意の夜会7
ざわついていた会場はグレイ様の声で一瞬で静まり返った。
夜会で……しかも王宮の夜会となると国が関わることもしくは重罪といった発表に繋がることを夜会に参加している貴族達には周知の事実だ。
会場に緊張が走りピリピリとした空気になっている。
「そこにいるカヴァル・シーファ令嬢についてだ。」
ヒロインは自分の名前を呼ばれるとは思っても見なかったのかビックリしたようにグレイ様を見上げていたが、数秒したらニヤリと笑いだした。
「ようやく私のことを婚約者にしていただけるのね。卒業式がイベントだと思っていたけど、こんなに早くイベントが発生するなんて~いつも冷たい態度をとられてたけど、内心は想ってくれていたのね~ふふふ。」
ヒッヒロインは本当に心が図太いですね!!
この状況でその考えに持っていけるなんて…………グレイ様もピリピリとした言い方をしてるのに気づかないのかな。。
「まずは許していない名前で呼んだ皇太子への不敬罪だ。これよりも重い罪として……ハアラの花だ。わかるだろ?」
ヒロインがみるみると青ざめていく。
ここまで動揺するヒロイン初めて見た。。
ハアラ?って何??
花がどうしたの???
「さっき捕らえたカヴァル男爵もここへ連れてこい。」
ん?捕らえたって言ったよね。
カヴァル男爵って………ヒロインのお父さんに当たる人?
どういうこと??
抵抗することなく…………いや、ギリッと歯を食い縛りながら連れてこられたから騎士の前だと抵抗できないだけか。
「グレイセド皇太子様。何故このようなことをなさるんですか?」
カヴァル男爵は手を後ろでロープで縛られている。
「何故??それはカヴァル男爵が一番わかっているだろう。さっき逃げようとしたからではないか。」
「お父様……………。」
青ざめた顔でヒロインが捕らえられているカヴァル男爵を見る。
「もう終わりだ、カヴァル男爵。お前がハアラの花を密輸し加工したものを国内で使用していた罪は重い。密輸の資金は国の資金を横領し使用していたな。」
『密輸』『国の資金』『横領』よからぬ言葉のオンパレードで周りはざわざわし始める。
「なっ何故そのことを…………。」
「隠せると思っていたのか?証拠も証言も揃っている。カヴァル男爵逃れることはできないぞ。お前は自分の娘を使って王宮の官僚と接点を作っていたな。己の欲望のために娘も関わった人達の人生を潰した罪は一生かかっても償えないだろう。これからみっちり聴取してやるよ。洗いざらい吐いてもらう。」
「はっ。シーファがどうなろうと知ったことではない。だいたいメイドの子で平民だったのを呼び戻して貴族にしてやったんだ、俺の駒に過ぎない。親である俺のために動くのは当然じゃないか。シーファもいい思いをしてたよな?」
ひどい…………酷すぎる。
自分の娘をなんだと思ってるの!!
ヒロインがそんな設定………いや、ここはもう現実だ。ヒロインの過去はまだしも男爵である親がこんなに酷いなんて………。
ヒロインは貴族になって良いこともあっただろうけど、引き取られず平民の方が幸せに暮らせてたのかもしれない…。
こんなこと聞いてヒロインが大丈夫といいけど、、。
「ふふふ。こんな最低男を親だなんて思ったことないわ。私のお母さんの弱味に漬け込んで遊ぶだけ遊び私がいることがわかったら追い出す最低のクズよ。貴族になれるから大人しく言うことを聞いてただけよ。こんなやつさっさと処刑しちゃってよ。」
ヒロインを見ていて気づいてしまった。
…………手が震えていることに。
どんなに強い心を持っていても傷つくよね。。
傷つかない人間なんていない。
…………親に自分を否定されたらなおさら。。
「なっ!?シーファァァァァァァ!!!!!親にむかって言う台詞かぁぁぁぁ!」
「最低のクズ様。貴族を味わわせてくれてありがとう。さようなら。地獄に行ってください。ふふ。」
ヒロインは満面の笑みをカヴァル男爵に向けて言うと、カヴァル男爵は顔を真っ赤にして怒りで何を叫んでいるかわからない状況になっている。
「カヴァル男爵を牢屋に連れていけ。そこでもう一度本人からの聴取をしろ。カヴァル男爵は数日後の裁判にかける。そこで今後が決まることになる。……………連れていけ。」
カヴァル男爵は会場から出るまで言葉にならないことを叫び続けて連れていかれた。
会場はあまりにも予想外のことが目の前で行われたため、ざわめくこともなく言葉を発することもなくただ行く末を見守っていた。
「カヴァル・シーファ令嬢、あなたはハアラの花の加工を服用すればどんなことになるかわかっていただろう?」
「………………………。」
ヒロインはグレイ様の言葉に身体がビクッとなり返事はせずこくりと頷いた。