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49.愛情

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いつもの時間に起きてこない私を心配したクリスお兄様が様子を見に部屋にやってきた。


「リィ、まだ寝てのか……………何があったんだ!?」


涙を流しすぎて目を真っ赤にし震えている私を見て血相を変えて私の方へ近づいてくる。


「あっ……………くっ……………クリスお兄様……………。…………そっ…そんな時間になってたのですね………。支度をしないと…………。」


「リィ!どうしたんだ!?何があったか話してくれ。」


震える体で必死に立ち上がり歩こうとすると、フラフラして倒れそうになったところをクリスお兄様に支えられた。


「クリスお兄様……………わっ私が……グレイ様の側を離れなければ…………………グレイ様を呪うと………………カヴァル・シーファさ……様が言われました…。」


震える声を搾り出しながらクリスお兄様に伝えた。


「カヴァル・シーファだって?」


クリスお兄様が顔色を変えて名前を連呼したことから、もうすでにヒロインはクリスお兄様には接触してたんだと思った。

でも、ヒロインのあの言い方だとクリスお兄様含めた攻略対象のみんなはヒロインに靡いていないみたいだった。


ぽつりぽつりと震える声でクリスお兄様に夢でのこと、魔術師のこと、休み明けまでにと一方的なヒロインの言い分を話した。

ずっとクリスお兄様が抱きしめてくれていて言い終わる頃には、震えが止まっていた。


「クリスお兄様、聞いてくれてありがとう。」


「少しは落ち着いたみたいだな。リィ、話してくれてありがとう。」


頭を撫でるクリスお兄様が柔らかく微笑んでいるのを見ると心から安心できた。。

落ち着いたら冷静に考えられるようになって、クリスお兄様に疑問に思ったことを言ってみた。


「ごめんなさい。クリスお兄様には何がなんだかわからないですよ……ね。」


突然、公爵令嬢の私がたぶん小説の設定では男爵?令嬢だったはずの女性を知ってるように話すんだもん…なんで知ってるんだってなるよね。

ヒロインのことを話すとなると、私が転生者であることとか小説の世界の話も含んでくる。

クリスお兄様に話すのは………というか家族に話すのは全然いいんだけど、どんな反応されるか怖いだけ。

今は………自分の気持ちよりもグレイ様も関わってくる事態を避けなければ!!


「クリスお兄様実は………。」


ポンっと頭を撫でられてクリスお兄様を見上げるとにっこりと微笑んでいた。


「知ってるよ。」


「えっ!?」


「実はグレイセドに聞いたんだ。リィに危害が及ばないように、グレイセドが目の届かないところは見守ってほしいってね。あいつ、本当リィのことになると我を忘れて突き進むよな。愛されてるなリィ。」


クスクス笑いながら話すクリスお兄様を見ながら、まさか知っていたとはビックリしたがグレイ様が信頼していることは見てるとわかっていたから、なんとなく『そうだったんだ』と納得してしまった。


「ふふふ。そうだったんですね。ごめんなさい、隠してた訳じゃなかったのですが………反応が怖くて……クリスお兄様や家族には嫌われたくなかったんです。」


「これだけは言っておくよ。リィが前世の記憶があったとしてもそれをひっくるめて俺たち家族のリィなんだ。リィが読んでいた小説と酷似してるかもしれないけど、今の状況を見てごらん!家族からも友達からも愛されている。誰もリィのことを悪役令嬢だと思わないよ。リィが生きてきたここ現実は変わってるんだ。リィは大事な大事な妹だ。断罪などウォレット家の名誉にかけてさせないよ。」


ポンポンと頭を撫でられ、撫でられる度に瞳から涙がこぼれ落ちた。

クリスお兄様の気持ちが嬉しい。


「クリスお兄様、大好きです。」


嬉しくて嬉しくて、ぎゅっーーーーと抱きついた。

クリスお兄様もぎゅっーーーーと抱きしめてくれて家族に愛されてる嬉しさと喜びにまた涙が溢れてきた。

私はこんな素敵なお兄様がいてくれて幸せ者だぁ。


ガチャリとドアが開く音がして誰だろうと気になったが、侍女達だと思った私は涙を見られたくなくてクリスお兄様から離れなかった。

クリスお兄様はドアの方を見たのか、上から『タイミングいいね』と言って笑う声がした。


人の気配がするけど、声を発しないから誰かわからない。

うーん、侍女達クリスお兄様好きだからなぁ~ボーと眺めてるのかな。

それならそれで泣いて抱きついている私は、侍女達からしたら羨ましい視線を送られてたりして。

それほどまでに何故かすっごく視線を感じるんだよねー。


「おいおい、そんなに睨むなよ。」


クスクス笑いながらクリスお兄様がドアの方に向かって話している。

ん?ちょっと待って。

クリスお兄様がこんな言い方するって侍女達じゃないよね。

もしかして……………。


「おはよう。リィ。」


上を向くと目の前からクリスお兄様、後ろからグレイ様の顔が…………こんな至近距離で朝から整った顔を並んで拝めるなんて素晴らしいですね。たまらんです。


「ごっごちそうさまです。」


この瞬間は何もかも忘れて朝から萌えていました…………しかも二人がキョトンとした顔をしたのがまたキュンキュンです。


「とりあえず、今日は学園休んで王宮に行こうか。」


グレイ様を見ながら夢の話を思い出し、これからどうすべきかを悩んで落ち込んでいるとクリスお兄様が突然休み宣言をして王宮に行くことになった。

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