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第74話 魔法部門決勝トーナメント 3

 武闘会魔法部門決勝トーナメント。

いよいよ準決勝だ。


『準決勝第一試合、美少女vsロレンタ!お二人には優勝してジュン様に勝ったら何をお願いするか聞いて見ました!美少女は旅にあると便利な魔法道具が欲しいそうです!ロレンタさんは魔法兵団一ヶ月間夏の地獄訓練に参加してもらうそうです!』


 無口っ子の要求は、まあ普通だろう。

オカマさんや三兄弟の要求に比べたらなんてことのない要求だ。

というかやっぱり普通に喋れるんだね。


 ロレンタの魔法兵団の訓練に参加もまあ大丈夫だと思う。観客席にいる魔法兵団の兵達が喜んでいるのが気になるが。


『それでは!試合開始です!』


お互い知り合いでも無いので語る事も無いのだろう。静かに試合が始まる。


「まずは魔法の打ち合いで様子見かな?」


「ロレンタはそうみたいだけど無口っ子はそんな余裕は無さそうだけどな。直ぐに切り替えて勝負に出るんじゃないか?」


「どうして?お兄ちゃん」


「無口っ子の魔力残量は少ない。ベリンダに粘られたのが効いてるんだ」


「ジュン君て、他人の魔力量が分かるの?」


「最近になって。魔神の紋章が目に宿ってる影響でしょうかね?」


 それとも魔法に関する事だし魔王の紋章の力だろうか。どちらにせよ師匠の言うように紋章力は成長する。

その結果なのだろう。


「あ、無口っ子が何かするみたい」


「精霊を呼び出したみたいね」


 ベリンダ戦で見せた時は三体の精霊を呼び出したが

今回は倍の六体。

火・風・雷・水・土・氷の精霊を呼び出したようだ。


「六体の精霊を呼び出して制御するのってやっぱり凄いの?」


「まぁね。普通は二体、三体で上等ってとこらしい。聞いた話だけどね」


「ちなみにジュン君は何体までいけるの?」


「九体までは試して、行けましたよ」


「流石ねぇ」


 試したのはずっと前の事だから今ならもっといけると思う。


「さて、対するロレンタの動きは?」


「ゴーレムを三体、精霊を三体呼び出してるね」


舞台に使われてる石材や地中にある石を利用して作ったらしいストーンゴーレムが三体。

火・氷・風の精霊を三体か。


「同じ数の精霊を呼び出した方が楽じゃないの?」


「対応はしやすいだろうけど、それは相手も同じだしね。それに普通の魔法使いは接近戦は苦手だ。武器の使用や武術を禁じてる魔法部門は特にね」


 水と土の魔法はストーンゴーレムには余り有効ではない。

雷の精霊と無口っ子の魔法はロレンタが自分で防いであとは精霊に防がせてゴーレムに無口っ子を攻撃させる積もりなんだろう。

実際に戦局はそのように動いてる。


「ほらほら、もっと動かないとゴーレムに捕まるよ!」


 結局三体のゴーレムの内二体が接近に成功。

精霊達は今はもう消えている。

魔法を使う間を与えられていないので

このままではゴーレムに捕まって無口っ子の敗北だろう。


「あ、捕まった!」


 ついにゴーレムに捕まった無口っ子は場外へと投げられる。

誰もが無口っ子の負けだと思っただろう。

しかし、無口っ子は飛行魔法で空中で停止。

舞台に戻ってくる。


「飛行魔法まで使えるとはね。まだ子供なのにそこまで魔法を使えるなんて大したもんだ。何か紋章も持ってるね?」


「肯定」


 やっぱりあの無口っ子も何か紋章を持ってるのか。

初めて声を聞いたけど単語しか言わないのかな。


「何の紋章を持ってるんだい?」


「秘密」


「そう言わないで。教えてくれたら私の紋章も教えるよ?」


「拒否」


 やっぱり単語しか言わないのか。

綺麗な声してるのに。


「そうかい、仕方ないね。しかしあんた流石にそろそろ魔力が限界なんじゃないかい?降参したらどうだい?」


「肯定。でも、拒否!」


 無口っ子は最後の攻撃に出るらしい。

急速に魔力を高めていく。


「最後の足掻きかい?防ぎ切ってやるよ!」


 まだ残っていたゴーレムを壁にするように自分の周りに置き、防御魔法を張るロレンタ。

言葉通りに防御を固めて耐えきるつもりか。

防御を固めたロレンタへ無口っ子の魔法が襲う。


「サンダーストーム!」


 あれはバハムートが使ってた雷系最上位魔法じゃないか!

まともにくらったら生きていられないぞ!


「ロレンタ!」


 舞台には粉々になったゴーレムの残骸と無口っ子しかいない。

ロレンタの姿はない。


「ロレンタ‥‥‥消しとんじゃたの?」


 舞台にロレンタの姿はない。死体すら。

跡形も無くなるとは思えないんだけど。


「私はここだよ」


 会場がざわめき始めた頃に上空からロレンタが降りてきた。


「結構やばい魔法を使いそうだと思ったんでね。ゴーレムの影から飛行魔法で上空に逃げといたのさ。耐えきる自信もあったけどねぇ」


 そこら辺の勘の良さは年の功か経験の豊富さから来るのか。

流石魔法兵団団長だな。


「さてと、あんた。今の魔法は私じゃなきゃ死んでたかもしれないよ。私なら死なないと踏んだのかもしれないけど殺してしまう可能性も感じてたろう?それでもやったのは負けるのが嫌だったのだろうけど、相手を死なせるかもしれないような手段は使うもんじゃないよ。試合ではね」


「ごめん、なさ、い‥‥‥」


 パタリと。

謝罪の言葉を口にしてから倒れる無口っ子。

魔力を使い過ぎて限界が来たんだろう。

ロレンタの勝ちだ。


『試合終了!ロレンタさんの勝利です!』


 ウーシュさんがロレンタの勝利を告げ拍手が送られる中、仮面少女が観客席から飛び出し無口っ子を抱える。

そしてロレンタに頭を下げてる。


「いいさ、気にしてないよ。その子も謝ってたしね。早くその子をベッドで寝かせてやんな」


 もう一度頭を下げてから無口っ子を抱えて外に向かう仮面少女。

連れの男二人も出て行くみたいだし宿に向かうのだろう。

それにしてもいい人だなぁロレンタは。

どこか残念な女性が周りに沢山いるせいか余計にそう思う。


「何よ、ジュン。ロレンタを見るその目は。まさか惚れたんじゃないでしょうね」


「違いますよ。ただいい人だと思っただけですよ」


「本当でしょうね?」


 今までシャンゼ様の前だからか静かにしてたコルネリアさんが絡んでくる。急にどうした?


「大丈夫よ、コルネリア。ジュンはどっちかと言えば年下好きだから」


「そう。それなら安心‥‥‥出来ないじゃない!」


「ジュン君、それ本当なの!?」


「ジュン様、本当なんですか!?」


「どうなんですか、ジュン様!」


 シャンゼ様にユーファさん、クオンさんまで絡んでくる。

一体どうした。


「あ~まぁ、どちらかと言えばそうかも知れませんね。ただ年上が嫌いなわけじゃないですよ?」


 ボクの言葉で考え込む皆さん。

一体どうした。


「大丈夫よ、シャンゼちゃん。ジュンは嫌な事は嫌って言える子よ。シャンゼちゃんとの婚約を嫌だなんて一度も言った事ないから。心配ないわ」


 確かに言ってないけど、他の事では言っても押し通されたきがしますママ上。

でも、そうか。

シャンゼ様は婚約者だった。それで心配したんだな。他の三人はどうしてかわかんないけど。


「そうですよね!大丈夫よねジュン君!」


「ハハハ、そうですね。あ、そろそろ次の試合ですよ」


「ちょっとジュン君?そこははっきりしてよ!」


 シャンゼ様は軽くスルーしておく。

だってなんか薮蛇になりそうだし。


『さあ、続く準決勝第二試合!フレデリカvsシルヴィエッタ!

お二人にも優勝してジュン様にも勝ったら何をお願いするか聞いて見ました!フレデリカさんはデートして貰うそうです!ただのデートで満足出来るんでしょうか!』


 ただのデートでいいじゃない。

普通がいいよ、普通が。


『シルヴィエッタさんは娘さんと仲良くしてやって欲しいそうです!ちなみに娘さんは武術部門でベスト4まで行ったフィーリアさんです!』


 何という衝撃の事実。

シルヴィさんに娘さんがいたのにも驚きだが、それがまさかフィーリアさんだったなんて。

全くの予想外。

だってシルヴィさん、子供がいるように見えないし。


「知らなかった…セバスンは知ってたの?」


「いえ、ジュン様。未亡人だとは聞いていましたがフィーリアさんの事は初耳です」


 未亡人だったのか。

それも知らなかった…


『それでは試合開始!』


 試合が始まった。

フレデリカは今までなら治癒魔法が使える利点を生かし消耗戦を挑んで来たが一転して魔法による接近戦を挑んだ。

動きからして身体強化の魔法も使っているようだ。

シルヴィさんはフレデリカの動きが予想外だったのだろう。

先手を取られ今は防戦一方だ。


「訓練生時代から見てて思ってたけど、あの子は優秀だよね。訓練生の中でもトップクラスだったんでしょ?」


「別に成績をつけたりはしてないから順位とかはないんだけど魔法の実力は確かな物があったよ」


 元魔法兵団にいただけあって魔法の知識も豊富だった。

治癒魔法使いにならず魔法兵団にいてもいつか大成しただろう。


「あいつの実力はロレンタも認めていた。ロレンタの次の魔法兵団団長はフレデリカだと噂されるほどにな」


 そうだったのか。

まさに魔法のエリートじゃないか。

それなのに治癒魔法使いになったのか。

魔法兵団を辞めてまで。


「まあ、そこはあいつなりの理由が在るんだろ。気になるなら今度聞いてみろ」


 そうだな、機会があれば聞いてみよう。

シルヴィさんはフレデリカから距離を取る事に成功。

ようやく態勢を整えれたようだ。


「う~ん、びっくりしちゃった~。今のが貴方の本来の戦い方なのかしら~?」


「さぁ?どうでしょうか?」


「秘密なの~?まあいいわ~。じゃあ、私は本気出してあげる~」


 シルヴィさんはそう言うと一匹のスレイプニルを召喚してその背に乗る。


「まだまだ、この子だけじゃないのよ~」


 続けて精霊も二体呼び出した。


「水の中位精霊ネレイナと風の中位精霊エアリアルか」


ネレイナは水で出来た人魚の姿をした精霊でエアリアルは緑色の半透明な鳥の姿をしている。 


「そして私は~これで戦うわ~」


 シルヴィさんの手にあるのは魔力で出来た弓矢だ。

普通の弓矢と違い壊れたり矢が折れたりしない。

魔力がある限り射る事が出来る。


「スレイプニルに乗るのは有りなの?」


「召喚魔法は有りだからなぁ。有りなんじゃないの」


 スレイプニルに乗りながら魔法で攻撃、二体の精霊に壁役をさせるのがシルヴィさんのスタイルか。


「では、私も」


 フレデリカも本来のスタイルで戦うようだ。

火属性魔法、炎の鞭を手に持ち精霊二体を呼び出し魔獣を一体召喚した。


「雷の中位精霊ヴォルトと火の中位精霊サラマンダー。魔獣はなんだろう、虎?」


「ありゃ幻獣だ。ホワイトライガー。珍しい幻獣と契約してるな」


 幻獣と契約してるのか。

凄いなフレデリカ。

フレデリカもホワイトライガーに乗り戦うようだ。

炎の鞭は伸縮自在。魔法の弓矢は無軌道に飛ぶ。

精霊達も飛び回りフレデリカとシルヴィさんも召喚した魔獣に乗って縦横無尽に駆け回る。

魔法も飛び交いまるでイリュージョン、サーカス、大スペクタクル。

そんなイメージが浮かぶ戦闘だ。


「凄い派手ね」


「観客は大喜びだな。しかしフレデリカとシルヴィさんもあんなに戦える人だったのか」


「状況は五分五分だね」


 そうだ、状況は五分五分。

そろそろ二人とも何かするだろう。


「シルヴィさんはさらに精霊を二体追加か下位の名も無き精霊だけど」


 中位精霊を二体と下位精霊二体では消費する魔力が違うし制御も中位精霊の方がやはり難しい。

自身も戦闘しながらなら尚更だ。

シルヴィさんの限界が中位精霊二体、下位精霊二体が限界なのだろう。


 対してフレデリカは舞台の床に敷かれてる石材からストーンゴーレムを三体作成。

そして再び戦いが始まる。

それから数分は戦い続けただろうか。

フレデリカの仕掛けていた罠にシルヴィさんが捕まる。


「え!」


 シルヴィさんが乗るスレイプニルの足元の床が突然崩れた。

スレイプニルは穴に嵌りシルヴィさんは投げ出される。

そこへフレデリカが距離を詰めシルヴィさんの首に触れないように炎の鞭を絡めもう片方の手を向け魔法を放てるようにする。


「う~ん、私の負けね~」


「はい、私の勝ちです」


 シルヴィさんが敗北を認めフレデリカが勝利を宣言する。


『試合終了!フレデリカさんの勝利です!』


「あの床が崩れたのは貴方が仕掛けた罠なの~?いつ仕掛けたの?」


「ええ、まあ。ゴーレムを作った時、必要な石をワザと数か所でまとめて集めました。故に見た目は普通でもただ蓋をしてるに過ぎない床が出来たんです。そこに貴方が嵌るかは運次第でしたが」


とはいえシルヴィさんは罠の存在に気が付いて無かった。

フレデリカは罠の位置を当然把握していたろう。

嵌るのは時間の問題だったはずだ。


 これで魔法部門の決勝戦出場者も決まった。

明日はいよいよ最終日。優勝者が決まりボクが戦う日だ。

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