第75話 武闘会武術部門決勝
『さぁ~!ついにやってまいりました武闘会最終日、決勝戦です!』
まずは武術部門の決勝だ。
師匠と仮面少女。
予想では残念だが師匠が若干不利だ。
あの仮面少女の紋章の力はまだよくわからない。
分かっているのは身体能力と武器の大幅強化が可能。
消耗が激しく長時間は使用できないということだけ。
これ以外にもまだ何かありそうだ。
『まずは武術部門決勝!美少女vsカイエン!御二人には優勝してジュン様に勝ったら聞いてなかったので聞いてみました!美少女はすんごい事要求する、だそうです!なんでしょうね、すんごい事!』
なんでしょうね、すんごい事。
内容がはっきりしないって怖いわ~。
『カイエンさんは娘さんの将来の安泰だそうです!流石イケメン!娘さん思い!噂によるとここ数日でカイエンさんに告白して撃沈した女性は七人!オカマさんも含めると十五人!モテモテですね!』
オカマさんのほうが多いやないかい。大変だな師匠。
『それでは武闘会武術部門決勝!試合開始!』
「始める前に一つ聞きたい」
珍しく師匠が対戦相手に話しかけてる。
なんだろう?
「貴方はジュン様と何か関係があるのか?ジュン様は貴方とはドレンの宿に武闘会出場者を迎えに行った時に初めて会ったと仰っていた。それにしては貴方はジュン様に何やら関心が強いように見える。その理由を聞きたい」
ノエラとセバストにも言って四人組の事は監視してもらっていたけど結局怪しい行動は何一つなかったらしい。
本当に正体を隠して武闘会に参加してるだけのようだと。
だとするなら尚更、仮面少女がボクに関心を持ってる理由がわからないんだよね。
仮面少女は少し仮面をずらし口だけを出し喋りだす。
「僕と彼は本当にあったばかりだよ。ただ初めて会った気がしないって最初から僕が勝手に思ってるだけ。貴方が心配してるような事は何もないと思うよ」
やっぱり喋れるんだ。
そしてあの仮面はやっぱり喋れなくなる効果のある魔法道具なんだろう。
「そうか。質問に答えてもらい感謝する。では始めよう」
仮面少女の答えに納得できたのか剣を構える師匠。
仮面を元に戻した仮面少女も剣を構え、突撃する。
まずはお互い紋章を使わず剣術のみの勝負のようだ。
「剣の腕は互角?」
「いや、師匠が僅かに上だ」
師匠は掠りもしてないが仮面少女は服が斬れたり髪が斬れたりわずかだが掠っている。
「それってジュンと互角って事だよね」
「う、まぁ同じくらいになると予想される・・・」
ボクと師匠での模擬戦も仮面少女と師匠の戦いと同じくらいの差だったからだ。
模擬戦と試合じゃ違うし試合と実戦とは違うというのはボクとアイもわかっているけど。
「でも、これくらいの差じゃあの力を使われたらアッと言う間に逆転だよね」
「ああ。双剣豪の紋章の力だけじゃあれには対抗できない」
様子見は終ったのか、仮面少女が遂にあの力を使うようだ。
クリステアを倒した時と同じくらいに輝いている。
「遂に来ますか。ならばこちらも」
師匠も双剣に剣気を宿す。
スピードもパワーも、恐らくは剣の性能も上げているあの力。
それに対抗するのに剣気だけではクリステアの二の舞。
一体どうするのか。
「師匠!そのまま打ち合ったら剣が持たない!」
師匠が理解してるのはわかってるのに思わず叫ぶ。
が、実際にはそんな事はならず師匠は仮面少女と武器を壊すことなくやり合っている。
「どうして?クリステアの剣と盾は斬られたのに師匠の剣は斬られずに済んでるんだ?」
「簡単だ。剣に宿す剣気の量と密度がクリステアのモノとは桁が違うからだ」
「わかるんですか?お父さん」
「ああ。紙や布だって小さく纏めてれば硬くなるだろう。それと同じだ。カイエンは剣に纏う剣気の量を増やし細く小さく凝縮してるんだ。だからあの攻撃を剣で受ける事が出来るんだ」
なるほど、理解した。
それは恐らく理屈では簡単なんだけど実際にやるには簡単ではないのだろう。
少なくとも剣豪の紋章を得たばかりのクリステアやボクでは難しいはず。
師匠はその点、何年も前から双剣豪の紋章を使って来た。年季が違うのだ。
だけど防ぐので手一杯、防戦一方で攻撃出来ていない。
普通ならそれでは勝てない。
だけど相手は普通じゃあない。
「このままいけば防戦一方でも師匠が勝てるよね、多分。このままいけば」
「このままいけば、ね」
アイの言う通り、このままいけるはずがない。
師匠もそう思ってるはず。
「やはり、まだ力を上げる事が出来るか」
仮面少女の輝きが更に増し師匠に襲い掛かる。
仮面少女の攻撃は激しさを増す一方。
それでも師匠はなんとか耐えている。
このまま再び防戦一方かと思ったが師匠が攻撃に転じた。
剣から剣気を飛ばして仮面少女の肩を僅かだか傷つけた。
まるで飛ぶ斬撃だ。
「その光、防御能力まであるのか。強力過ぎるな」
確かに強力過ぎる。
剣気を纏った剣も斬り、身体強化、自己治癒力の向上。
オマケに防御能力まであるとなると、生半可な紋章じゃない。
それこそ魔神の紋章や魔王の紋章に匹敵するかそれ以上の物。
思いつくのは一つだけ。
あの紋章の持ち主なら正体を隠すのも分かる。
確証はないけど多分当たってると思う。
「しかし、やはり消耗が激しいようだな。見ただけで分かるぞ」
仮面少女が消耗してるのは明らかだ。
しかし消耗が激しいのは師匠も同じだ。
仮面少女ほどではないがあの力に対抗するために剣気の力をかなり使っている。
師匠の消耗もかなりのものなはず。
さて、どうするのか。
少しの間動きを止めて睨み合ってた二人。
先に変化が出たのは仮面少女の方だ。
少女が纏ってた光が小さくなる。
だけど弱くなったのではなくむしろ光は強くなってる。
「これは、もしかして」
「うん、多分カイエンさんの剣気の纏い方を真似したんだ」
それはつまり、今まではただ紋章の力を使ってただけで使いこなしていなかったと。
しかも見ただけでその場で真似してみせる才能。
とんでもないな。
「剣の光も小さく纏まってる。今まで普通に使っててあの威力だったのが収束されたとなるとどんな威力になるのか。本人にもわからないんじゃないか?」
準備が終わった仮面少女が動き出す。
師匠は先ほど使った飛ぶ斬撃で迎撃するが。
「堅い!さっきまでとはまるで別物!」
身に纏う光を収束した事で防御能力が大幅に向上したらしい。
さっきは僅かにだが傷をつけたのに今は表面で弾かれてしまった。
そして剣の威力も上がったようだ。
先ほどまで打ち合えてた師匠の剣に皹が入る。
これではもうまともに打ち合えない。
師匠は回避に専念しているがここでまた仮面少女が才能を見せつけてくる。
「あれは!」
「師匠の飛ぶ斬撃!」
あの技も一瞬で真似してみせるなんて。
師匠は剣で受けようとするが剣は砕け腕を負傷する。
「ここまで、か。敗北を認める」
師匠は双剣の使い手。
剣が片方砕け、腕を負傷したとあっては勝ち目がないと判断したのだろう。
『き、決まったー!武闘会武術部門優勝は謎の仮面美少女剣士に決定だー!優勝賞金の金貨五百枚は貴方の物!』
師匠が負けてしまった。
なんだろう、この気持ちは。
なんだか凄くくやしい。
あの少女を恨む気持ち等はないけど師匠の敵討ちはしたいと思う。
「元々負けるつもりはなかったけど、これはもう負けられないな」
「お、ジュンが珍しく燃えている」
「お兄ちゃんなら勝てるよ!」
魔法部門の決勝が終われば優勝者とボクの試合が始まる。
負けるわけにはいかないな。




