カナリアの気持ち
「神父様、本当によろしいのですか? そんな娘をこの教会に泊めて」
「構わん。この私が決めたことだ」
「神父様、こんな娘を泊めたらみんな泊めないといけなくなりますよ。ここは宿ではありません!」
「まぁまぁ良いではないかな?」
「神父様!!」
「この子はな……」
「えっ!? 本当ですか!?」
「間違いない、あの夫婦は6年前にもこの教会に来ていた」
「あの…何のお話しですか?」
「ああ…君と一緒に来ていたあの夫婦、実は6年前にも君のお姉さんを連れて鑑定に来ていた。君のお姉さんはスキル、治癒魔法があったため、聖女に選ばれたが、現在、噂では大聖女になっていると聞いている」
「お、お姉様が大聖女!?」
「うん」
神父様がにっこりとした表情で大きく頷きました。
凄い、お姉様が大聖女! なんて誇り高きお姉様なのかしら。私からしたら大変、尊敬できる姉です。
「だから私は、君をこの教会に泊めておけば、お姉さんであるアンジェリアさんに会わせてあげれるかも知れないと思ってな」
「そ、そうだったのですか?」
「それより、ユリナ、教会の中を案内してあげなさい」
「し、神父様。私がですか!?」
「そうだ、ベテラン聖女である君ならの役目だ」
「う〜ん。もう、分かりましたよ。私が案内しますよ。仕方ありませんね。この子だけ特別ですよ」
白銀のコート、大きめの金色の星の紋章が刻まれている頭帽を被っている女性、ユリナさんが私に近づきました。
外見が凄い可愛らしくて、着ている服が凄くカッコいい感じです。
「大丈夫ですか? 立てますか?」
「は、はい!? 手を差し伸べていただいてありがとうございます!」
「今回は神父様の判断ですから。本来なら、この教会に泊まることは出来ませんからね」
「わ、分かりました」
「それでは行きましょうか」
「は、はい!」
「そんなに緊張しないで下さい」
「ご、ごめんなさい」
「謝らないで下さい」
「は、はい」
これは緊張する……。ユリナさんって何か付き合いづらそう。そう思っていると、神父様が言いました。
「ユリナ、暫くはカナリアちゃんと同じ部屋だ」
ちょっと待って! ユリナさんと同じ部屋! 滅茶苦茶緊張するんですけど…どうしよう。
「えーっ!? もう、神父様!……。仕方ありません。こうなったらとことん面倒みます」
こうして私はユリナさんに教会の中を案内されました。みんなで一緒に食べる食事場、お風呂場、そして、部屋です。
そしてこの教会にいるなら、毎日、神様にお祈りをすること。朝、昼、晩の三回です。日課として決まっていることです。また、教養もする必要があります。
天界にいらっしゃる神様のこと……。また、聖職である聖女のこと……。しかし、私は聖職ではないので、そこまでしなくてもいいとのこと。
早速、私もこの教会の一員になるため、聖女の格好を致します。しかし服がぶかぶかで裾が床に少し曲がって付いてしまいます。
私からしたら少し大き過ぎたのでしょう。まだ私は背が小さい方ですから。
「ごめんなさい、服が大きい物しかなくて、これで我慢して下さいね」
「あっ、はい」
「それと、部屋は自由に使って構いません。私とあなたのお部屋ですから」
「はい、ありがとうございます」
こうして、教会での暮らしが始まりました。まずは洗濯です。当番で回ってくるため、私とユリナさんのお二人でみんなが着る聖女の服を近くの川に行って洗濯します。
水が透き通っていて、とても綺麗です。底まではっきり見えます。
私の手つきが慣れないせいで、中々洗濯をするのも難しいです。始めての経験でした。洗濯をするということは。
今までは屋敷にいた一人のメイドさんに家事全般をさせていたので、楽でしたが、まさか、洗濯一つしてもこんなに大変だなんて思いもよらなかったです。あのメイドさんの苦労がとても分かりました。
一方でユリナさんの手つきは凄いです。慣れていて、とても早いです。それだけではありません。丁寧なのに無駄がありません。私とは大違いです。
「カナリアさん? でよろしいのですよね?」
「はい、私の名前はカナリアです」
「あの、カナリアさん。ずっとお聞きしたかったのですが、この教会に来たということは、鑑定スキルを受けに来たということですよね?」
「はい、神父様に鑑定スキルを受けたところ、踊りの能力を持っていると言われました」
「踊りの能力?」
「はい! 実は私、踊りが好きなんです」
「踊りが好き?」
「はい、それに幼い頃から踊るのは得意で」
「そうなのですね…。踊りが好きな上に得意なのね。そうね……。そうだ、今度、この国で舞踏会が開催されるわ。隣国の方々も加えて。それに行ってみたらどうかしら」
「私がですか?」
「うん。ここにいても良いけど、王子様の玉の輿に乗れたら、あなたは一気に幸せになるかもよ」
「玉の輿…私が」
「顔も小顔な上、美貌だし、ひょっとしたらカナリアさん、凄く人気出そう…」
「あ、ありがとうございます。褒めていただいて」
「後で私から神父様に相談してみるわ。だからお部屋で待っていて」
「はい」
洗濯を終え、教会に戻った私はお部屋に待機しておりました。私はあることを考えておりました。
もし、本当に舞踏会が開催されるなら、是非とも行ってみたい。そして国の王子様、若しくは隣国の方々と踊れるなら是非とも踊ってみたい。
でもこんな私を王子様達は選んでくれるのかしら? もし、選んでくれなかったとしても、私は一緒に踊ってくれるパートナーのことを大事にしたい。
今日、ユリナさんに舞踏会のことを言われてダンスが出来るチャンスがあるなら行ってみたい、なんてことを考えていると、彼女が部屋に入ってきました。ユリナさんは少し残念そうな表情になっておりました。
「ごめんなさい、カナリアさん。やっぱり神父様と相談していて思っていたんだけど、あなた、年齢が若すぎるのよね。まだ、そんなお年でもないのよね」
年齢か。確かに私は12才という年だけど、でも踊ることに対しての気持ちは他の誰よりも負けていない自身があります。それに、私はダンスが大好き! だから大舞台で他のみんなに見てもらいたい。
私は、今、思っている気持ちを彼女に打ち明けることにしました。
「ユリナさん、私、舞踏会に行きたい! 行って好きなだけ、ダンスを楽しみたい!」




