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その日、臆病者が壊れた

夜明けと共に――

重い足音が牢獄の通路に響いた。

騎士たちが近づく。

鍵の音と共に、独房が一つずつ開かれていく。

鉄の軋む音が静寂を切り裂いた。

ミナトが出る。

ニナが出る。

セラが出る。

だが――

カイトだけは違った。

「いや……嫌だ……!!」

ベッドにしがみつき、体を震わせる。

騎士の一人が近づき、腕を掴む。

「離せ!!」

だが、誰も聞かない。

無理やり引きずられていく。

やがて――

他の囚人たちと共に連行された。

鎖の音。

重い足取り。

息苦しい沈黙。

そして――

視界が開ける。

闘技場。

広大な円形の空間。

地面は黒ずんだ砂に覆われている。

至る所に――

剣が置かれていた。

まるで「殺せ」と言わんばかりに。

だが、本当に恐ろしいのは――

観客だった。

何千人もの貴族たち。

豪華な衣装。

笑顔。

だが、その目は――

飢えていた。

ミナトは顔を上げる。

王族席。

そこには――

シノハラ王妃。

タスキ王子。

そして――金髪の少女。

ミラ姫。

さらに――

シン。

彼はそこに立ち、微笑んでいた。

灰色の瞳がミナトを捉える。

ミナトも睨み返す。

青い瞳に怒りを宿して。

その時――

「皆様ぁぁ!!」

司会の声が響いた。

「本日の試合は――タスキ殿下のご提供でお送りいたします!!」

歓声。

拍手。

タスキが立ち上がる。

手を上げると、全てが静まった。

「楽しんでいけ。」

穏やかな声。

「今日は特別だ。」

「異世界から召喚された者たちだ。」

ざわめき。

「呪われた存在だ!!」

「殺せ!!」

「生き残ったら買ってやる!!」

ミナトは呟く。

「……人間じゃない……」

その瞬間――

騎士たちが首輪を外す。

魔力が戻る。

だが――

「無駄だよ。」

タスキが言う。

「我々には結界がある。」

地獄が始まった。

騎士たちは去り、門が閉じられる。

そして――

轟音。

巨大な門が開いた。

闇の中から――

怪物たちが現れる。

獣の姿。

だが歪み、巨大で、狂気に満ちている。

ミナトは剣を掴む。

ニナが叫ぶ。

「セラ!!守るわよ!!」

セラは目を閉じ、魔力を集中する。

カイトは震えながら立つ。

「お、俺も守る……!」

だが――嘘だ。

次の瞬間――

惨劇。

囚人の一人が突撃する。

だが瞬時に踏み潰され、喰われた。

カイトは凍りつく。

空から――

巨大な一つ目の鳥。

ニナが魔法を放つ。

結晶の矢が貫く。

落ちた瞬間――

ミナトが飛び込み、剣を突き刺す。

「セラ!!まだか!?」

「……静かにして。」

その頃――

ミラ姫が呟く。

「面白い……」

「魔法すら持たないのに……」

「生き残ったら……欲しいわ。」

シンが微笑む。

「厄介ですよ。」

「むしろ、楽しみよ。」

やがて――

セラが目を開く。

「……出来た。」

門。

光の渦。

出口。

だが――

「殺せ!!」

タスキが命じる。

「カイト!!先に行け!!」

だが――

カイトは動かない。

目の前で――

兎の怪物が少女を引き裂いていた。

もう一体は死体を貪る。

「……」

カイトの意識が遠のく。

だが――

止まる。

ニナが囲まれている。

ミナトが――

巨大な猿に締め上げられている。

「ぐぁあああ!!」

その瞬間――

何かが、壊れた。

(記憶)

いじめ。

笑い声。

倒れるカイト。

「やめろ!!」

ミナトが立つ。

手を差し出す。

「黒星ミナトだ。」

「友達になるか?」

「……うん。」

(現在)

「……無理だ。」

「え?」

「無理だ……」

震える。

そして――叫ぶ。

「ミナトは……俺にとって初めての友達なんだ!!」

爆発。

魔力。

嵐。

観客がざわめく。

王族ですら息を呑む。

煙が晴れる。

そこに――

カイト。

だが――別人だった。

長身。

引き締まった体。

長い黒髪。

黄金の瞳。

圧倒的な魔力。

ニナが呟く。

「さっきまで泣いてたのに……?」

ミナトも驚く。

「カイト……?」

カイトは笑う。

自信に満ちた笑み。

「セラ――」

「そこで待ってろ。」

視線を前へ。

「ミナトとニナは……俺が連れてくる。」

一歩。

そして――

本当の戦いが始まる。

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