絶望の目覚め
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「なんで……まだ生きているんだ……?」
荒れた呼吸と共に、少年は呟いた。
肺が焼けるように痛い。
心臓が、壊れそうなほど脈打っている。
その視界の先――
無数の肉片が、地面に散らばっていた。
血の匂い。
ぬるりとした感触。
そして、その中心には――
黒い短髪の少女が、静かに横たわっている。
動かない。
呼吸もない。
「……リナ」
声が、震えた。
膝が崩れ落ちる。
「……ごめん」
震える手で、彼女に触れようとして――止まる。
触れてしまえば、すべてが現実になる気がした。
「……なんでだよ」
顔が歪む。
「なんで……俺だけ……」
涙が溢れた。
「代われるなら……俺が死ねばよかったのに……」
――その時。
背後で、何かが蠢いた。
ぞわり、と背筋が凍る。
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは――
巨大な黒い蜘蛛の怪物。
まだ、生きている。
瞬間。
ミナトの中で、何かが切れた。
「……ふざけるな」
低く、掠れた声。
「なんで……お前が生きてるんだよッ!!」
地面を蹴る。
次の瞬間には、身体が動いていた。
無意識に、傍らの剣を掴み取る。
青く、淡く光る魔剣。
振り下ろす。
何度も、何度も。
肉が裂ける音。
骨が砕ける感触。
青い光が弾け、血飛沫が舞う。
それでも止まらない。
止められない。
怒りも、悲しみも、すべてを叩きつけるように――
やがて。
怪物は動かなくなった。
静寂。
荒い呼吸だけが、そこに残る。
ぽたり、と血が滴る音。
ミナトの視線が、ゆっくりと下へ落ちた。
そこには――
再び、リナの亡骸。
「……終わったよ」
掠れた声で呟く。
「……遅かったけどな」
拳を握り締める。
◆
やがて、ミナトは小さな墓を作った。
無言で土をかける。
花を添える。
最後に、一度だけ振り返った。
「……行くよ」
誰にともなく呟く。
そして――歩き出した。
見知らぬ空の下。
遠くには、石造りの街が見える。
ここがどこなのか、分からない。
だが――どうでもよかった。
「……全部、壊してやる」
低く呟く。
「この世界も……何もかも」
青き魔剣が、微かに光を放った。
――その時。
頭の奥に、声が響く。
『ミナト……』
微かで、か細い声。
『……殺して……殺される前に……』
ミナトの瞳が、ゆっくりと見開かれた。
◆
2022年3月――東京。
ある高校で、奇妙な事件が発生した。
全校生徒と教師が、一瞬にして消失したのだ。
校舎に残されていたのは、
途中で止まった授業。
置き去りにされた鞄。
手つかずの食事。
そして――
防犯カメラに映っていたのは。
校舎全体を包み込む、真紅の光。
それがすべてを――奪い去った。
初めまして。本作はダーク寄りの復讐ファンタジーです。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。




