第ニ章終幕『盗賊さん』
「あっ!盗賊さん!起きた!!」
自室で気絶から目覚めたニックに小麦色に焼けた肌が良く似合うゴホード王国の姫リーナが陽気な声をかなりの大声でかける。
「気を失ったのか。リーナか。って俺は盗賊じゃねぇ!ニックって名前があるんだ!うわっ」
起きたて早々に怒りで身体を起きあげたが力が抜け、ニックはベッドに再び身体を預ける。
「まだ万全じゃないんだからイライラしないの!それにそんなに親しい関係じゃないからしばらく盗賊さん!」
「なんで親しくもないやつの部屋にいるんだよ。それに親しくなくても、もっと他の呼び方があるだろ」
「ほっほっ、何やら楽しそうですね。失礼致します。ニックおぼっちゃん」
二人で問答している間にリーナの声を聞きつけたヒリタスが部屋に入ってきた。
「ヒリタスさんっ!」
「あっ、片眼鏡のおじさん!」
「お前失礼だぞ!」
「お前って言う方も失礼だよ!」
「ほっほっ、いいんですよニックおぼっちゃん。こう歳をとると何事も可愛く思いますゆえ。体調はいかがですか?」
左目のモノクルに手を当てヒリタスが場を和める。
「ヒリタスさんがそう言うなら。なんか体に力が入らなくて、もう少ししたら起きあげれそうです。ちなみに俺が気を失ってからどれくらい経ちます」
「六時間くらいでございます。その間にご主人とリーナ姫が我が国の王に会い、正式に同盟が締結され今しがた戻ったところでございます」
「無事に同盟が組めたんですね!良かった」
(そういえばこの国の王様の名前とか知らないな。あとで聞くか)
「もうすぐ出発の話し合いを応接間で致しますが、来れそうですか」
「はい!行きます」
「リーナも行くー」
△▼△▼△▼
応接間には、ヴェルナドット、ヒリタス、プリメラ、レオル、リーナ、ニックの全員が集まっていた。
「無事霊器を解放できたか」
「なんとか、レオルさんの助言もあって」
「生命エネルギーが足らなければ魔力で補うがそれができないとなれば自力で解放するしかない、何よりだ。無事に従えることもできたのであろう?」
「どうなんですかね?なんか生簀かない感じでしたけど」
「そうか。解放直後に霊獣に殺されるケースが稀にあるがそれがなかったという事は問題ないだろう」
「えっ、どういうことですか?」
ヴェルナドットの問いにニックは困惑する。
「なんだレオル言っていないのか?」
「あっ、あー、あんま脅かしちゃうまうと返って良くないと思って」
ニックがレオルを睨む。
「霊獣が気に食わなければ、解放早々に戦闘だ。そこで調伏できれば良しだが、できなければ使用者を殺すか生命エネルギーを吸い切りリンクが切れるて自由の身だ。霊器の状態に戻るやつもいるが」
「レオルさんどう言う事ですか!基本的には従うって」
「だから、マスターも稀にって言ってただろ!言わなかった事は悪かったよ。ほんとにすまん!!でも、無事に解放したじゃねぇか」
「それはそうですけどっ!」
「しかし、一分程度の解放で気絶では戦闘にはまだまだ使えないな。特訓を積んでおけ。時間が惜しい話を進めるぞ」
「はーい」
レオルを不貞腐れ気味な目で睨みながらニックはヴェルナドットに返事をする。
「それで、プリメラ。魔獣はどれくらい残ってる」
腕を組みながら話を聞いていた少女プリメラは、瞑っていた瞼を開け琥珀色の眼を覗かせ喋り始める。
「契約していた魔獣共を弱い順に召喚して、どこまで命令を聞くか試した。強さ的に中の下で契約が切れちまった。まぁケルベロスなんだけどよ、一人じゃ殺れなかった」
プリメラは伏し目になり嘆息した。
「ほっほっ、私がお手伝いしました」
「そうか、ご苦労だった。プリメラの力を取り戻すのは急務のようだな」
少し重苦しい空気になっているが、ニックはそれどころじゃなかった。
(ケルベロスっ!!ゴホード砂漠でプリメラ先輩が召喚したミツ首の魔獣!!!あれが中の下の強さ??ヒリタスさんと一緒に殺した?ヒリタスさんって戦えたの?えっ、めっちゃ強くないか?俺より普通に強くないかそれ??俺はケルベロス倒せないぞ!!)
「どうした坊主?そんな悲観的になんなよ。プリメラはある程度の強さは残してる。むしろ吉報だ」
「そ、そうですね」
レオルは見当違いの声をかけたが、実際にケルベロス以下の魔獣ではあるが、それを使役できている事は確かに朗報だ。
「リーナ、同盟は無事済んだ。その黒装束の男をどこに飛ばしたか教えてくれ。ヒリタス」
ヴェルナドットはヒリタスに地図を持って来るよう促す。
「はーい!私達がいたゴホード砂漠から南西に千キロだから地図だとこの辺だね!」
リーナがテーブルに広げられた地図に指を指す。ニックは地図から分かる距離感に、改めてリーナの魔法の桁違いさに感服する。
「ガージ大森林。広大過ぎるが奴の場所にピンポイントで飛ばせるのか?」
「もちろん!そこは問題ないよ!」
「マスター!あいつはまだそこにいるんですかね?」
ヴェルナドットとリーナの会話にレオルが割り込む。ニックも思っていた疑問をレオルがヴェルナドットに投げかける。もうすでに幾日も経っており、移動魔法も割れてる。自分だったら相手が追って来ると考え、とっくに移動している。
「それに関しちゃ問題ねぇよ。ワシはアイツの心臓に呪いをかけといた。とんでもねぇ激痛のはずだ。解くために待ってると思うぜ!実際、呪いの魔法を感じる位置はそこら辺だ」
「なるほど、それなら納得だぜ。そんでいつ出発します?」
「今から行く。そして、私も行く」
「マスターも!!?」
ヴェルナドットも同行すると聞いてレオルは驚愕を隠せないでいる。
「先程も言ったがプリメラの力を取り戻すのは急務だ。プリメラの弱体化が世に広まれば、この国は攻め込まれる。早急に支度をして向かうぞ」
「それもそうだな!了解!」
目的地が決まりガージ大森林への任務が始まる。




