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忘却の魔法使い -漆黒の悪魔編-  作者: ルクラン
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第一章 龍人種の国 -デュトブロス-

「お、お前!!」


「顔を見せて会うのは久しぶりだな。」


面を外した下に見えたのは気の強そうな顔立ち、緑色の髪を後頭部で纏めた彼…ではなく()()だった。


「シェア?!」


そぉ。俺達がジゼトルスにいた時、ブリリア城跡地でゴブリン達から助け出し、オーガと共に戦ったシェア-ブリリアだった。

超絶不器用で何に対しても真摯(しんし)な彼女の性格は赤羽の騎士と瓜二つだと言われれば確かにそぉなのだが…気付くわけ無いだろ!?

いや。声もくぐもってたし全身鎧だから性別すら分からないんだよ?!分からないっての!


「あぁ。私だ。」


「なんで言ってくれなかったんだよ?!」


「言えばマコト達は躊躇(ためら)うだろう。そんな卑怯(ひきょう)な事はしたくなかったんだ。」


「あ、相変わらずの不器用っぷりだな…」


「む。確かによく言われるが…」


「それより…顔を見せたってことは…」


「うむ。マコト達の事を信じる事にした。」


「俺が言うのもなんだが…良いのか?」


「私がゴブリン達に捕まった時、躊躇することなく飛び出してきただろ?そんな人達があんな非道な事をするはずが無い。そぉ思った。だから…信じる事にした。」


「父親の事は?」


「…何故あの人がそれ程までにマコト達を恨んでいたのか…それは分からない。でもそれは必ず私が自分自身で突き止めてみせる。

まぁ裏に何かがあれば…の話ではあるが。」


「そぉか……それでこれからどぉすんだ?」


「マコト達は北へ向かうのか?」


「あぁ。龍脈山(りゅうみゃくさん)を越える。」


「…ならば途中まで付き合おう。」


「ジゼトルスは?」


「もちろん帰るつもりだ。」


「帰ってどぉすんだ?」


「色々と調べてみる。もう一度。それでもし何か分かってしまったら、直訴(じきそ)でもしてみるつもりだ。」


「それは止めとけ。」


「しかし…」


「シェアが思ってるほど上は綺麗な場所じゃない。秘密裏に殺されて終わるぞ。そんな事は誰も望まない。」


「そぉですよ隊長!やめてください!」


「だが放置など出来ん!」


「この超絶不器用が…」


「私の性分だ!」


「開き直るな!

はぁ…じゃあとりあえず情報を掴んだら何とかして俺に連絡してこい。ギルド経由でもなんでもいいから。」


「しかしデュトブロスにはギルドも何も無いぞ?」


「そぉか…完全に孤立した国家だったな…なら冒険者ギルドに話を通してフィルリアって女性に話をするんだ。

情報を集める際にも協力してくれるはずだ。」


「あのSランク冒険者のフィルリアか?」


「そのフィルリアだ。」


「分かった。ではそぉしよう。」


「そしたら俺達に出来ることはする。勝手に一人で直訴したり先走ったりは絶対にしないように。後ろの兵士諸君も隊長をしっかり見張っておけよ?」


「む。先走ったりしない。」


「隊長…いつも先走りまくってますよ…」


「うっ…」


「分かったみたいだな?」


「わ、分かった。気をつける。」


「頼むぞ…」


「分かったと言ってるだろ。」


「はぁ…気が気じゃないな…」


なんとも不安なシェアだが、今は信じるしかない。


シェアと兵士達を引き連れて俺達は龍脈山へと向かう。しばらく雪道を進むと次第に木々が増えてくる。

少しだけ気候が暖かくなり、芽吹き始めた木があちこちに見える。


「シェア達はこの先に行ったことはあるのか?」


「いや。無い。」


「危険なモンスターが出てくるらしいが大丈夫なのか?」


「ゴブリン如きに遅れを取ったのはほとんど生身だったからだ。今の私は騎士。そんな簡単にやられはしない。」


「それなら期待してるよ。」


「任せておけ。」


木々を避けながら先へと進む。山の(ふもと)まではまだまだ遠い。足場の事もあるし麓まで辿り着くだけで一日は掛かりそうだ。

馬は山に入れないので森に入る前に戻らせた。

静かな森の中、ギュッギュッという雪を踏み締める音だけが響き、その音さえも雪に吸われていく。

モンスターの類は今のところ見えないが、時折小動物の気配をチラホラと感じる。雪の下にある食べ物でも探しているのだろうか。


森に入ってから暫く経った頃、突然小動物の気配が無くなった事に気が付いた。


「マコト。何かいる。」


シャルの目線の先を辿るが、俺には特に変わった物は…いや。何かおかしい…

さっきまで散々見てきた森の木々。だが、先の一帯の木々には新しい芽が一切無い。


「トレント。」


シャルの一言で何がいるのか直ぐに分かった。


ランクCのモンスター、トレント。

日本のゲームやマンガでもよく聞いたモンスターだ。この世界のトレントとは、木に擬態したモンスターの事で、動きは遅いが枝に似せた触手はかなり素早く、獲物を捉えるとその養分を吸い尽くす。


今まさにそのトレントと思われる木々のある領域に小さなネズミの様な生き物が入り込んだ。


ビュンという風切り音が聞こえるとそのネズミが触手に捕まる。

ギューギューと叫ぶネズミに触手の先端が突き刺さると見る見るうちに養分や水分が無くなっていき一瞬にしてミイラのようにカラカラになる。


「こ、怖っ…」


「あの触手に捕まらないように気をつけて。マコト。」


「言われなくてもあんな死に方はごめんだよ…迂回出来ないのか?」


「この辺りはトレントの群生地みたい。迂回したところで状況は変わらない。」


「倒して進むしかないか…」


「弱点は火魔法。」


「助かるよシャル。火魔法で牽制しながら進むぞ!」


「はい!ファイヤーボール!」


凛の放ったファイヤーボールがトレントに当たると倒す事は出来ないがかなり嫌がっている様子だ。

枝の様な触手がうねうねと動き、雪の下に隠れていた根の様な足も動き回る。

近くにいたトレントだけで10体以上はいる。別に討伐する必要は無いが、行く手を阻むようにトレントが立ちはだかっている為数体の撃破は必要だろう。


「こいつら切ってもそんなに効果ねぇ!」


「再生能力高いから直ぐに治る。あの変な力使ったら効くかも。」


「だから俺の力は変なのじゃねぇっての!」


「魔法でも剣術でも無いものは変なのだよ。」


「2人共言い合ってないでさっさと片付けるぞ。」


「健のせいでマコトに怒られた。」


「俺のせいなの?!」


「健。外套の力使ったら無闇に攻撃されなくなるはずだ。前線頼むぞ。」


「おぅ!よっしゃ行くぜ!」


外套についている火の魔石を発動させる健。自身の周りに現れた火の玉がトレント達を遠ざける。


「よし!私達も行くぞ!」


「はい!隊長!」


シェアが構える直剣に火魔法が付与される。燃える剣を振り回しトレントの触手を切り取っていく。

兵士達もよく訓練されているし助ける必要は一切無さそうだ。

ゴブリン達に遅れを取った彼女の失態は本当に失態だったらしい。

キレのある動きと連携でトレントを難なく討伐している。


シェア達の助けもありトレントの掃討にはそれ程手こずらなかった。


「マコト。」


「どぉした?」


「この森は魔力が濃い。龍脈山も含めて。」


「シャーハンドの森みたいにか?」


「あれ程じゃない。でもモンスターの成長には凄くいい環境。」


「つまり元気一杯なモンスターがいるってことか?」


「それもあるけど、これだけ濃いと多分亜種とかも沢山いると思う。」


「確か亜種ってのはそんなに発見例が無いんだっけか?」


「亜種や希少種になると未だに能力さえも把握出来ていないモンスターも数多くいますね。」


「そんな奴らがうじゃうじゃいるって事か?」


「ここは昔からそんな感じの場所だぞ。龍人種ってのは魔法も使うが、基本的に剣術に特化した連中でな。剣術の為に魔法を使うって感じなんだ。

そんでもって腕っ節がそのままそいつの評価に繋がる。」


「強い奴こそ偉い!みたいな感じってことか?」


「まさにそぉ言った種族だ。」


「な、なんか生きにくそうな場所だな…」


「龍人種ってのはそもそも筋力が他の種族に比べて強いんだ。だからどんなに弱そうでも人間からしてみれば驚異的な腕力。なんて事もある。

そんな連中だから戦闘大好きな奴が多くてな。そこら中で決闘して人口が減らない様に決闘の法律まである国なんだ。」


「血の気の多い連中…なんだな。」


「基本的にはそんな事は無いぞ。気のいい連中だ。

だが、剣術においては誰しもがプライドを持っててそいつを馬鹿にされると…」


「決闘だ!ってなるのな。」


「ま、そんな所だな。

そんな奴らの中でも強いとされる五人の剣士の事を特別に五星龍(ごせいりゅう)と呼ぶんだが、そいつらの修練の場として龍脈山は使われてるんだよ。」


「へー。つまりそんな奴らが腕試しに使うくらい危険な山なのか…

因みにその五星龍ってのはどれくらい強いんだ?」


「さぁな。俺も知らない。ただ、キーカさんを基準に考えるとかなり強いと思うぞ。あの人があの国で一番強い特星龍(とくせいりゅう)だからな。」


「特星龍?」


「一星龍でずっと居続けるとなれるらしい特別席みたいなもんだな。つっても俺の知る限り特星龍はキーカさんだけだが。」


「ずっとってどのくらいなんだ?」


「確か…………」


「五十年ですよ。」


「そぉそぉ!」


「ご、五十年……長いな…」


「俺達にとってはな。龍人種ってのは長寿の種族だから、そんなに長く感じないとは言ってたぞ。」


「へぇ。エルフの感覚に似てるのか。」


「まぁ特星龍は別格だが、五星龍ってのはその下の連中って感じだ。五星龍の中でも一番強いのは一星龍(いちせいりゅう)、五番目は五星龍。こいつらの順位はコロコロ変わるらしいが、一星龍だけは俺達がいた時に五年連続で椅子を守り続けてたから今も居座ってたら十一年くらいになるはずだ。

名前は確か……」


「テュカですね。しっかり覚えていないのに話題に出さないで下さい。」


「うっ……」


「会ったことあるのか?」


「いえ。ありませんよ。話を聞いた事があるだけです。と言うよりキーカさんに相談されたんですよ。」


「相談?」


「テュカさんの事で真琴様が相談を受けたんですよ。内容までは分かりませんが…」


「そぉだったのか。まぁその辺は記憶が戻れば思い出せるかもな。」


「はい。」


「ま、話が色々と広がり過ぎたが、こっから先はそんな連中の腕試しの場所。強いモンスターがゴロゴロ出て来るから野営するなら初日はこの辺りの安全な場所が良いと思うぞ。」


「安全な場所ねぇ…」


周りを見渡しても雪と木だけ。変わらない風景の中に特別安全な場所は無さそうに見える。


「比較的って事だ。こっから先は交代で休んで行かないと危険だからな。休めるうちに休んだ方が良いぜ。」


「分かった。じゃあトレントの群生地から離れて野営地を作ろう。」


俺達は少しだけ奥へと進み比較的安全そうな場所にテントを張る。


「すまない…私達の分まで…」


「気にするな。異空間収納があるし食料には困ってないからな。」


シェア達はジゼトルスから来ているし野営の準備はあるのだが、暖かい食事の方が良いと誘ったのだ。

最初は自分達の分は自分達で、と言っていたが強引に連れて来るとおずおずと座り皿を受け取った。


「…んぐ。………う、美味い!!」


「当然!凛の料理だからな!」


「なんでマコトが威張るの?」


「ふっ。分かっていないなシャル。凛の料理が上達したのは俺の飯を毎日作っていたからなのだ。つまり俺が教えたと言っても過言ではない!!」


「……過言だよ。」


「細かい事は気にするな。大きくなれないぞ。」


「私の体は成長しないから関係ない。」


「心の話だ心の。」


「心?」


「そぉだ。」


「なるほど……」


「おい?!気付け?!騙されてるぞシャル!」


「騙しているのではなく説いているのだよ。健。これは悟りなのだ。」


「怖い教団の教祖だよそれ?!」


「見よこの後光を…」


「眩しっ!そんな事のために光魔法なんか使うなよ!」


「はっ?!後光が……」


「すいませーん!誰かこの可哀想な子を助けてくださーい!!」


「冗談だ健。」


「冗談。」


「わかってるよ?!馬鹿な子見るみたいに見ないでくれるかな?!」


「はは。相変わらず不思議な奴らだな。」


俺達の話を食べながら聞いていたシェアが口に手を当てて笑う。

こぉいうノリの会話はあまり兵士達の間ではしないのだろうか?


「そぉいやシェアはブリリア城は未だに行ってるのか?」


「こまめに行っているぞ。あの件以降はモンスターも巣を作っていないな。」


「良かったよ。ただ、あまり無茶するなよ。」


「皆にもそぉ言われたよ。」


「隊長は変に考え過ぎなんですよ。もっと俺達のこと頼って下さい!」


「出来る限りそぉしているつもりなのだがな…」


「足りないっすよ!」


「む…そぉか…」


「シェアこそ相変わらずだな。」


「うるさい。」


「はは。すまんすまん。」


「それよりマコト達は父と本気で戦った事があるのだったな?話を聞かせては貰えないか?」


「え?いやー…ははは…」


「な、なんだ?」


「聞かない方が…」


「いや。聞かせてくれ。父が毎度負けていた事は覚えているのだ。今更失望などしない。」


「な、なら…」


俺は毎度来ては氷漬けにされるシェア父の話をしてやった。


「失望した…」


「おいおい…」


「なんの勝算も無しに突っ込み続けるのはバカのする事だ。父がそんな事をするとは…」


「それについては俺達も不思議だったんだよ。部下の事を大切にしていたし無闇に突っ込んで来るくせに大敗はしないようにしている節があったからな。」


「というと?」


「例えばもっと突っ込んで来れば形勢を変えられるかもしれない時でも兵を引かせたりしていたからな。」


「何故そのような事を…?」


「分からない。」


「……」


「シェアの知るシェア父の姿を聞くと余計に不思議でならないだろ?勝算も無しに突っ込んで来る様な騎士には思えない。

何かあったのかもしれないな。」


「やはり父の事についてはもっと詳しく調べてみる必要がありそうだな。」


「無茶するなよ?もし本当に何かあったのだとしたら国が関わってる可能性が高いんだ。」


「信じたくは無いが…その通りだな。十二分じゅうにぶんに気をつけておくとしよう。」


「さて。明日も早いし交代で休むか。」


「真琴様は眠って下さい。」


「いや。俺は…」


「ダメです!」


凛がこぉいう顔の時は素直に従っておかないとマズいと事になる。

それがよくわかっているので素直に言うことを聞くことにした。決して怒った凛が怖い訳では無い。決して。


寝ている間にも、俺の見張りの時にもモンスターはちょこちょことやってくる。

そんなにランクの高いモンスターではないが、ここのモンスター達はかなり好戦的らしい。

それともこの森においてモンスター以外は餌でしかないのかもしれない。


翌日、山の麓へと向かっていると昨日話していた亜種に早速遭遇することになったなった。オーガ亜種。

筋肉隆々の体、額に二本の角がある所は変わらないが、体表は灰色ではなく赤。唸り声と共に口から火が吹き出している。

普通のオーガより一回り大きい。


「まさかこのタイミングでオーガとはな。」


「俺達とシェアが一緒にいるとオーガに出会うなんてジンクスいらねぇぞ?」


「私も御免だ。さっさと倒して先に進むとしよう。」


「賛成だな。」


「ゴァァァアアア!!」


オーガ亜種が叫び声を上げ、その弾みでボウボウと口から火が溢れる様に出てくる。


「あの時の私とは違うという事を見せてやろう!はぁぁ!!!」


シェアがオーガの元へと走り出す。

健や他の皆はシェアを援護する様に動きを合わせる。


「ガァァ!」


オーガの太く長い腕が振り回され、まるで大木が振り回されたかの様な轟音が鳴る。

シェアはそれを下に避けると、その後飛び上がり剣を振りかぶる。


「ゴァァ!!」


口を開いたオーガ亜種。豪炎がシェアに向かって放たれる。それを空中で身を(よじ)る事で(かわ)す。


「ブリリア剣術!流星(りゅうせい)!!」


強化魔法を剣に付与し、オーガの頭から真っ直ぐと剣を振り下ろす。そのまま地面まで切り下ろしシェアは後ろへと飛ぶ。


「グァァァ!!」


断ちにくいオーガの体に縦一直線の傷が入る。真っ二つとはいかなかったがかなりの深手だ。ボトボトと雪に落ちる血がそれを示している。


「仕留め損なったか。」


「十分だ!」


シェアの後方から飛び上がっていた健がシェアと寸分違わぬ位置に刀を振り下ろす。


「死んどけやぁ!!」


シェアは体勢を崩された事で浅い攻撃になってしまったが、健の攻撃には反応出来ていない。刃はしっかりとオーガへと届く。


「グァァァ!!」


断末魔の叫びを上げてオーガの体が雪の上に仰向けに倒れる。


「流石はケンだな。」


「何言ってんだ。俺はトドメを刺しただけだ。」


「それにしても大きいですね…」


「亜種はこのくらいなのか?」


「オーガの亜種自体それ程見つかっていませんから…比較のしようがありませんね。」


「そぉか…って。魔石大きいな。」


「この辺りの魔力を糧に生きてるモンスターだから。」


「その分魔石も大きくなるわけだ。シェア。」


「わっ!とっと!」


「その魔石はシェアのものだ。」


「いや!そんな!」


「これについてはここの誰も文句は無いと思うぞ。」


皆、(うなず)いている。


「要らないって言うなら捨てても売っても好きな様にしてくれ。俺達は受け取らないからな。」


「……分かった。ありがとう。大切に取っておくよ。」


真っ赤な拳大の魔石を手に笑ってくれる。

やっぱり綺麗な女性の笑顔ってのは良い物だ。うん。


「さて。やっと麓まで来られたな。」


「すまない。私達はここまでだ。」


「あぁ。気にしなくて良い。約束通りフィルリアにしっかり相談するんだぞ。」


「あぁ。ではな。」


「またな。」


シェアは俺達に手を振り来た道を帰っていく。

シェアの話ではここから先に行くには色々と準備が足りないし実力も足りないとの事だ。

シェアにそぉ言わせるのだからやはり危険な場所なのだろう。


切り立った山を見上げる。吹き降ろす風が冷たく頬に当たる。


「ふぅ…」


険しい道程みちのりを消化し、下を見るとまだまだほとんど登っていない事にウンザリする。

人一人通れるかどぉかという細い道。しがみついていないと滑り落ちそうな坂。

そのどれもが氷っていてツルツルと滑る。凛が用意してくれた鉄製のスパイクが無ければ全く歯が立たなかっただろう。

既にあれから丸一日登っているのにまだ山を越えられる気がしない。


「凛!大丈夫か?!」


「はい!」


今は急な斜面を上へと向かって進んでいる最中だ。滑落かつらくを防ぐ為に全員を紐で結び健を先頭にプリネラ、リーシャ、シャル、俺、凛の順番で登っている。

上に行けば行くほど吹き付ける風が冷たく強くなり、気を張っていないと体勢を崩す程になってきた。


凛やリーシャはこぉいった体を動かす事を苦手としている。とまではいかなくても得意ではない。かく言う俺も得意ではないのだが、男である以上はそれなりに動ける。

下にいる凛の様子をうかがいながら慎重に歩を進める。


「真琴様!」


上から健の声が届く。健の指差す方向を見るとワイバーンが遠くを飛んでいる。こちらにはまだ気が付いていない様子だが、気付かれると厄介だ。こんな場所で戦闘は出来ない。


「近くに横穴がある!取り敢えずそこに入るぞ!」


「分かった!急ごう!」


健は真上に進んでいた足を斜め上へと向ける。

下から見てもよくわからないが、健の位置からならその横穴が見えるらしい。

ワイバーンとの戦闘にはならなくとも一度休憩は取っておく必要があるだろう。


吹き付ける風が一層厳しくなり、視界が悪くなり始めた頃やっとの思いで横穴とやらに辿り着く。


山の中腹にぽっかりと空いた氷の横穴。氷柱つららが上部にぶら下がっていて下にも上に向けて尖った氷のとげが生成されている。


「奥はどぉなってる?」


「行き止まりだ。モンスターの痕跡こんせきも無いし一先ひとまず安心だ。」


「よし。まだ日は高いが今日はここで過ごそう。風が強過ぎて、これ以上は危険だ。」


「ワイバーンも近付いてこなかったからな。」


「下の整地をして場所を確保しよう。怖いから上の氷柱も落とすか。」


「あいよー。」


全員で横穴内の環境を整え始める。

その最中の事だった。視界の端で小さな黒い何かがチョロチョロと動く。


「………??」


「どぉされました?」


「……いや。なんかいるような…??」


「……何も見えないですけど…?」


目を凝らしてみるが特に何も見えない。気のせいだったかと思い始めた時、またしても視界の端に小さな黒い何かが映り込む。


「やっぱり何かいるぞ?!」


「マコト様!」


リーシャの声に全員が振り向くと横穴の壁に5cm程度の小さな黒い蜘蛛くもがいる。


「蜘蛛か?」


何故こんなところに蜘蛛が?と考えていると蜘蛛が突然俺の方へ向かって黒い糸のかたまりを飛ばしてきた。


「マコト!」


ドンッ!


シャルが咄嗟とっさに俺突き飛ばし、その衝撃で体が揺らぐ。

黒い糸の塊は俺を通り過ぎ地面に落ちる。


バキバキッ!


黒い糸の塊は地面に当たると細い糸となり周囲に広がる。そして、その糸に触れた場所の氷が砕け散る。

よく見ると糸から地面に向かって細い針状の糸が突き出している。


「な、なんだこいつ?!」


「ブラックスパイダー。リトルスパイダーの亜種。」


「リトルスパイダー?それって単体ランクDのモンスターだよな?」


「群れでCランク。群れで糸を吐いて獲物を捕らえる奴ら。このブラックスパイダーはそいつの亜種。殺傷力が高い闇魔法を付与した糸を飛ばしてくる。威力は見て分かる。

こいつの率いる群れはBランク。」


シャルが上を見上げる。

どこから出てきたのか、天井の氷柱の隙間すきまにウゾウゾと動き回るリトルスパイダーの群れ。


「気持ち悪っ!」


「リトルスパイダーの糸は殺傷力こそ無いけど捕まればブラックスパイダーの糸の餌食えじきになる。あの数の糸を避けるとなると至難しなんわざ。」


「詳しいな…」


「長く生きていると色々と詳しくなる。それより今はあいつらをどぉにかする。」


「だな…やっぱり火魔法か?リトルスパイダーの対処は火魔法だが…」


「ブラックスパイダーには火魔法はあまり有効じゃない。」


「そんなに簡単な話なわけないか。」


「倒すのは私に任せて。皆はリトルスパイダーの相手を。」


「分かった。頼んだぞ。」


「任せて。」


シャルがそぉ言うと、うごめいていたリトルスパイダー達が一斉に動き出す。

身の毛が逆立つ様な光景だ。数百匹はいるであろう5cm程度の蜘蛛達が、飛んできたり、天井かられ下がってきたり、糸を飛ばしてくる。

蜘蛛は別に苦手では無いが、それでも叫びたくなる程の光景。直ぐに大きめのクリスタルシールドで対処したが、透明なはずのクリスタルシールドが蜘蛛の糸を大量に浴びて真っ白になっている。


顔を青くさせる凛とリーシャ。まぁ得意な女性は少ないと思うが。


「ファイヤーボール!ファイヤーボール!ファイヤーボール!」


「来ないでー!」


後先も考えず無心で蜘蛛を焼き払い続ける凛に逃げ回るリーシャ。

その数も確かに恐ろしいのだが、このリトルスパイダーの恐ろしさはその体の小ささにある。

的が小さ過ぎるのだ。

狙いを定めようにも小さく素早いリトルスパイダーを狙って魔法を放っても着弾するより早く、文字通り蜘蛛の子を散らす様に逃げてしまう。

しかも放たれた魔法のうち、いくつかはブラックスパイダーの吐き出した糸に当たりリトルスパイダーまで届かない。


熱によっていくらかは倒せるが全体を見ると焼け石に水。方法を変えなければならない。

凛とリーシャに何かをさせるのは…こくだろう。健は飛んでくる蜘蛛を的確に切り落としてはいるが…というか切り落とせるところが凄い。ただ、まとめて数を減らすのは難しそうだ。


「プリネラ!」


「はい!」


「ある程度蜘蛛をまとめられるか?」


「そぉですね……シャドウマントを使えばいくらかは。」


シャドウマント。第三位の闇魔法。一枚の黒く薄い布の様なものを作り出す魔法。本来は自分の身を暗闇の中に隠す時などに自分を包み込んで使う隠密おんみつ系の魔法なのだが、それを使って蜘蛛をまとめられるという事みたいだ。


「なるべく多くの蜘蛛を捕まえてくれ。そこに火魔法を撃ち込んで一気に燃やす。一度じゃ無理だが何度かやれば数も減るはずだ。」


「分かりましたー!」


「おっと。その前に。」


フレイムハウンドを作り出し凛とリーシャの元に向かわせる。数は減らせなくても蜘蛛が寄ってくる事は無くなるはずだ。


「マコト様!いきますよ!シャドウマント!!」


散らばった蜘蛛の中でも大きな塊のいる場所に現れたブラックシートがくるりと巻き付き蜘蛛を閉じ込める。

そして俺の火魔法が丸まったシャドウマントを閉じ込める様に燃え盛る。一気に数が減ったせいなのかリトルスパイダーの動きが更に活発になり凛やリーシャにとっては地獄より怖い場所へと変わる。

フレイムハウンドが凛とリーシャを守ってはいるが見ているだけでも耐え難いらしい。


何度もプリネラとリトルスパイダーを燃やしてはいるもののまれに飛んでくるブラックスパイダーの糸がそれを邪魔してくる。


「シャル!」


「分かってる。」


なんとかプリネラと数を減らしてはいるがブラックスパイダーをなんとかしなければ掃討は難しい。

リトルスパイダーの中に隠れているブラックスパイダーをシャルが探してはいるが、この数だとなかなか見つけるのも一苦労らしい。


「いた!!」


シャルが手を前に出すと雷が一直線に走る。

ライトニングという第二位の雷魔法だ。威力はあまり高くは無いがこの蜘蛛達は防御力は無いに等しい。十分倒せる威力だろう。

しかしブラックスパイダーを狙ったライトニングはその前にリトルスパイダー達が団子状になって防いでしまう。


「もぉ!」


先程からそれを繰り返している。リトルスパイダーは感電して死んでいくが肝心のブラックスパイダーはまたリトルスパイダーの中へと消えてしまう。

氷の中に空いた横穴である為あまり火魔法を使うと崩れる可能性もある。実際少しではあるが横穴の表面が溶けだしているようにも見える。


シャルは魔力を見てブラックスパイダーの位置を何となくではあるが把握出来ているらしいが、リトルスパイダー達が邪魔でなかなか手が出せていない。

なんとか出来ないものか。このままではリトルスパイダー達の糸を避け続ける事は出来なくなる。横穴内は既に蜘蛛の糸だらけだ。


「シャル!何とかできないのか?!」


「あいつを引きずり出す必要がある!ブラックスパイダーを倒したら群れは統率を失うから!少し派手になるけどやってみる!」


シャルがそぉ言うと手から先程とは魔力の桁が違う雷を放電する。

バリバリという音が耳に届き、あまり大きな魔法を使えば崩れるかも。という忠告を行う前にシャルのそれは放射されていた。

第四位雷魔法サンダーボルト。ライトニングの上位互換だが、威力は桁違いになる。シャルは人より魔力量が多いため普通のサンダーボルトより威力も範囲も多いらしい。


バリバリッ!

けたたましい音と共にブラックスパイダーの周囲にいたリトルスパイダーは全て感電してボトボトと地面に落ち、そのままブラックスパイダーをも感電死させる。


残念な事にその稲妻はそのまま横穴内の壁をもぶち壊しガラガラと音を立てて崩れ始めた。


「嘘だろおい?!」


「きゃっ!?」


外に逃げようとしたが、その前に俺の足元が崩れ浮遊感に襲われる。


落ちる!!そぉ思った時には既に体は宙に浮いていた。激しい衝撃を背に受け、体はそのまま重力に従って転がり落ちていく。

暗闇の中で聞こえるのはガラガラと氷が落ちる音だけ。健達が無事かも分からない。

再度強い衝撃を受け、体の動きが止まった。


「っ!」


なんとか生きてはいるらしい。周りを見渡しても暗闇で何も見えない。

光魔法のライトを使い辺りを照らす。


「っててて。」


「びっくりしたー。」


「よかった。皆無事そぉだな。」


どぉやら同じ様に落ちてきて全体無事だったらしい。上を照らすと急勾配きゅうこうばいの坂になった穴がずっと奥まで続いている。


「ご、ごめん。」


しょんぼりしたシャルがうつむいて謝っている。


「壊れるかもしれないと気付いていたのに忠告も出来ずあせらせたのは俺の責任だ。シャルは悪くないよ。」


「……でも皆を危険にさらした…」


「全員助かったんだから良いだろ?それにブラックスパイダーを倒さなきゃどっちにしろ俺達全員危なかったんだから。」


「健はガサツだから気にしないかもしれないけど。」


「ガサっ?!そこでその言葉?!」


「冗談。ありがと。」


「え?あー。いや。うん。」


「それよりここを登るのは難しそうだな。」


「こんだけ急な坂だとな…坂というか崖だしな。凍ってて掴む所も無いし流石に難しそぉだな。」


「となると進むしかないか。」


「進む?」


「前にも話した事あるだろ?閉鎖空間だと普通は危ないって。ここに落ちてきて生きてるって事は少なくとも空気の循環じゅんかんは起きてるんだ。どっかに繋がってるはず。」


「真琴様。こっちなら進めそうです。」


自然に出来た凹凸の激しい洞窟内。俺達の落ちてきた場所以外は岩肌が晒されて凍ってはいない。

土が湿ったような、石の匂いとでも言うのだろうか。独特な匂いがする空洞を進んでいく。


明かりという明かりは俺達の使うライトだけ。外の光など届くわけも無い。ライトを消すと自分の手すら見えなくなる程の暗闇だ。

ゴツゴツした岩肌はほんのりと湿っていてどこか不気味な雰囲気をかもし出している。


しばらく空洞内を進むと大きな空間へ出る。天然に出来た空間であるがゆえいびつな形をした場所で壁や天井、床に至るまで平坦な場所は1つもない。

雪解け水だろうか?どこかからか水の流れる小さな音が聞こえてくる。


「こぉいうの鍾乳洞しょうにゅうどうって言うんだったか?」


「だな。至る所に鍾乳石しょうにゅうせきがあるしな。」


「人の手が入っていない鍾乳洞なんて初めて見ました。なんというか…美しいですけど怖いものですね。」


「結局大自然には勝てないからだろうな。途方とほうもない時間がこの洞窟を作り出したんだろうな。」


カラッ……


「今、奥の方で音がしたよな?」


「したな…」


ライトの光が届かない場所で音がすると嫌な想像が膨らんでいく。


「驚異になるなら排除しておきたい所だが…」


「確認してみるか?」


「それ以外に道は無さそうだな。」


広い空間から伸びる道はいくつも複雑に入り組むように伸びている様子だが、人が通れそうな道は、音のした方向にしか無い。

つまり確認するにしてもしないにしてもそちらに向かうしか俺達に出来る事は無さそうだ。


そろりそろりと足音を消して近づく。


「………特に何も無いな?」


「確かに音はしたんだが…」


健が辺りをくまなく調べる。


「な、なんだこりゃ…」


健が見つけたのは何か分からないがヌメヌメした粘液ねんえきだった。


「な、なにこれ。気持ち悪いんですけども…」


「近付かないでください。一生。」


「え?!そんなに?!ってか臭っ!!」


「ただでさえ臭いのにそれ以上臭くなってどぉするつもりですか?世界を滅ぼすつもりですか?」


「身をていして調査した奴に掛ける言葉では無いよね?!」


「確かに凄い臭いだな。これは…アンモニアの臭いか?」


「アンモニア?」


「刺激臭の強い物だよ。皮膚を溶かしたりするからあまり触るなよ。」


「なんでそんな物がこんな所に?」


「これを作り出した何かが居るってことだろうな…」


「次から次へと本当にここは厄介な場所だぜ…」


「シャルはこの粘液について何か知らないか?」


「私の知識の中にはこんなものを作り出すモンスターはいない。何かの亜種かもしれない。」


粘液は通路の奥へと続いていて、光を当てるとヌラヌラと光を反射している。なんとも気持ち悪く行きたくない通路だ。


「行くしか無いんだよな…?」


「だな。ここにとどまっても仕方ないし出口に繋がっている可能性がある以上この道を進むしかない。」


「だよな…」


足を踏み入れるとヌメヌメとした触感が足の裏に伝わってくる。一応溶けないように靴には魔法を掛けておいたが…

臭いもひどく、空気を吸い込むと涙が出る様な刺激臭に咳き込んでしまう。純粋なアンモニアでは無いらしく我慢できる程度ではあるが、皆布を口に当てて先に進む。

洞窟はそのまま少しだけ上への傾斜けいしゃを持って奥まで伸びている。

酷い臭いの中、少しだけ気温が下がった気がする。外が近いのだろうか?


健が先頭に立っているが、突然後ろに向けて手を上げる。止まれという合図。

光を少し落とし薄暗闇の中、暗闇の先を見ると続いてきた洞窟はまたしても大きな空間へ出るらしい。さっきよりも少しだけ広いみたいだが、その真ん中辺りに何か大きな物がウゾウゾと動いている様子が確認できた。


「あれは…グラントスライム?」


グラントスライムとはスライムの上位互換型モンスターで、個体によって差異はあるものの直径2mはあるスライムの事だ。ランクはC。最弱モンスターと言われるスライムの上位互換にしてはランクが高いと思われるかもしれないが、そもそも魔法が効きにくい粘液の体を持っていてその粘液が2m近くも伸びているのだ。核を自由に体中を動かせるし、単純な物理攻撃では刃が届かずなかなか倒すのに手こずる相手。


「あんな色のグラントスライムは見た事ない。亜種のアシッドグラントスライムでも黄緑色。」


亜種であるアシッドグラントスライム。ランクAの強敵モンスターだ。粘液が全て塩酸えんさんの様な強力な酸で出来ていて、下手な武器は全て溶かしてしまう。目撃情報は少ないが出会ったら直ぐに逃げるべき相手という話を聞いた事がある。

だが目の前にいる個体は濃い青色のぷるぷるボディを持っている。


「アンモニアどころの話じゃないだろあれ。」


「アンモニアも含まれてるかもしれないが、強塩基きょうえんきの粘液だろうな…あんなもんかぶったら全身が溶けきるぞ。」


「全身が…」


「見た事ないモンスター。多分発見例も無いと思う。」


「アシッドグラントスライムの塩基性バージョンって事はベースグラントスライムってところか…ランクはアシッドと変わらないAランクのモンスターだろうな。」


「アシッドグラントスライムはどぉ倒すんだ?」


「発見例自体がほとんど無くて討伐した記録も残っていません。」

()

「って事は倒し方は自分達で見つけろと…あんな所に居座いすわられたらやるしかないよな…」


ベースグラントスライムの居座る場所は中央だが、横を通っていいですか?いいですよ。とはいかないだろう。

そもそもスライムという生き物はどんな物でも体に取り込みゆっくりと溶かすことで栄養を補給するモンスターだ。そしてグラントスライムはそのデカさ故に常にえさを探している。

そんな所に俺達の様なが現れれば間違いなく襲ってくる。


「作戦はどぉする?」


「攻撃が通りそうなのはケンのあの変な力。」


「変言うな。」


「俺のクリスタル魔法なら溶かされるより早く貫通出来るな。」


「リーシャの怖い矢も使える。」


「貫通矢か?」


「あれなら一気に貫ける。」


「…貫く事が可能な攻撃はいくつか選択肢があるが、結局核を的確に攻撃出来るかどぉかだよな?」


「……」


「動き回る核を的確に貫く方法が無いと倒せないぞ。」


「核の大きさは大体10センチくらいか?」


「そんなもんだな。」


「動き続ける核を狙って当てるのは私には難しいですね。」


「マコトなら全体的に攻撃出来る。」


「逃げ場を無くすくらいの密な攻撃を繰り出せば当たるだろうが…」


「どぉする?それでいくか?」


「私のマジックネットで上手く核だけ掴めないですか?」


「それも考えたがこの先休める場所があるかどぉかも、そもそもあのスライムが一体かどぉかも分からないからな。

魔力は出来る限り温存しておきたいんだよ。」


「何かいい方法ないのか?」


「んー……」


「中和とか出来ないんですか?」


「どぉかな。出来たとしてそれがダメージになるか分からない上にそもそも酸を用意するあてが無いからな…」


「困りましたね…」


「…………」


「………」


「………そぉだ!面白い事考えた!」


「真琴様の面白い事は危険なんだよなぁ……」


俺は考えついた事を皆に話してみる。


「結局グラントスライムを倒す方法を簡単に考えると、グラントスライムの核を限定した位置に留める方法を考えるか、どこに移動しても関係ないくらいの広範囲攻撃をするか、もしくはスライムの反応速度より速い攻撃を放つか。この3つにしぼられるわけだ。」


「留めるのは難しい。範囲攻撃、もしくは速い攻撃のどっちか。」


「シャルの言う通りだ。ただ、魔力を使いたくない俺達としては範囲攻撃より速い攻撃が必要だろ?」


「でもそんなにスピードの出る攻撃は魔力を使う。」


「だから少し工夫するんだ。」


「工夫?」


「あぁ。ちょっとさっきの所まで戻るぞ。」


俺は健だけ連れてグラントスライムの粘液を初めて見つけた広い空間に戻る。


「早くしねぇとあいつ動いちまうぞ?」


「分かってる。これを取りに来ただけだから。」


「これって…鍾乳石?そんなもんどぉすんだ?」


「鍾乳石ってのは石灰石せっかいせきで出来てるんだが、この石灰石ってのは酸には溶けるが塩基には溶けないんだ。この辺りはあのベースグラントスライムの縄張りだろう?なのに鍾乳石は一切溶けていない事がその裏付けになるはずだ。」


「まぁ確かに溶けないかもしれないが、そんなもんで殴るのか?」


「いや。殴らない。飛ばす。」


「飛ばす?」


「土魔法で石の筒を作って、その中に水を入れてこいつをセットする。」


「まさか簡易的な大砲を作るってことか?」


「正解。水ってのは気化すると体積が約1700倍くらいになるはずだ。中に入れた水を俺の火魔法で瞬時に蒸発させると…」


「まぁ耐えられる奴なんていないだろうな。」


「だろ?」


「危ない魔法考えやがって…」


「別に世に出す訳じゃ無いから良いだろ?原理も内緒にしとくし。ほら行くぞ。」


「はいよー。」


健といくつかの鍾乳石を折って持っていく。

鍾乳石の形を魔法で整え大砲の弾の様な形にした物を用意する。


「そんなものどぉするの?」


「石の筒を作ってそこから撃ち出す。」


「そんな事出来るの?」


「まぁ一発目を見れば分かるはずだ。一発で仕留められたらそれでいいんだがそぉ甘くはないと思う。動き出したら牽制けんせいだけ皆に頼むよ。」


「はいよ。早めに決めてくれよ。」


「皆は射線上に出ないでくれよ。」


「分かった。」


「よし。」


俺は足元にある石の形状を変化させて片方閉じた筒を地面から生えるように作る。これはライラーの仕事に近いから魔力はそれ程要らない。

そこに水魔法で水を入れ、加工した鍾乳石をセットする。


核のある場所を狙って……点火!!


ボンッ!!


想像以上に大きな音と共に発射された鍾乳石はベースグラントスライムの体を一瞬にして貫き、奥の壁に当たる。

鍾乳石が壁に完全に根本まで刺さっている。

威力は十分だが、筒の強度と狙いが悪かったらしく、筒は粉々になりグラントスライムの核には当たらなかった。


「行くぞ!」


「す、凄い威力…」


「体に穴を開けたくなければ射線上に出るなよ!」


「何があってもその前にだけは立ちません!」


ベースグラントスライムのポッカリと空いた穴は瞬時にして閉じ、俺達の事を認識した事で動き出す。

ぐにゃぐにゃと体を伸縮させてむちの様に攻撃を仕掛けてくる。


「気を付けろ!飛んでくる粘液にも触れるなよ!」


アシッドグラントスライムであれば壁や床の石をもある程度溶かす為煙が出る。

石灰石は酸には簡単に溶けるからだ。しかしこいつの粘液は全く溶かさない。つまりベチャリと粘液が着くだけ、知識が無ければ臭い粘液のグラントスライム。という認識にしかならないだろう。

だが人の肉体等を溶かす事においては酸よりも塩基の方が怖かったりする。危険視しにくいという意味を含めればアシッドグラントスライムより余程危険な存在だろう。

存在自体が確認されていない種となると恐らくは希少種の類だ。まさか俺達がそんなモンスターを引き当てるとは…


「もう一度行くぞ!」


「おぉ!」


ボンッ!!


今度は筒が壊れる事は無かったが狙いが甘い。核をかすったが僅かにズレた。


「次こそ頼むぞ!そろそろこの場所もヤバい!」


「分かってる!」


ベースグラントスライムが暴れ回ったせいでそこら中が粘液だらけ。臭いも酷い。だがコツは掴めた。

しかし危険を感じたのか核を絶え間なく動かしている。


「くそ!狙いが!」


「波紋!!」


健の放った一閃を本能的に避けたベースグラントスライム。そのおかげで核の移動先が限定された。


「行くぞ!」


ボンッ!!


3回目にしてようやく核を捉えた。

核を半分破壊されたベースグラントスライムはブルブルと体を震わせ、突然粘度が無くなったかのようにプルプルの体がべしゃりと地面に流れていく。

その辺は普通のスライムと変わらない様だ。

ただ死んでもその体の特性が変化する訳では無いため空間の中を凄い臭いが充満する。


「ゴホッゴホッ!行くぞ!」


俺は全員を先に進ませ、出口の壁を変形させてふさぐ。


「最後まで厄介な奴だったな…」


「凄い臭いです…」


「蒸気も体に悪いからここで洗っていこう。」


全員服ごと体を水魔法で洗浄する。こぉいうところは本当に便利だ。水分そのものを操るから引き剥がせば一瞬で乾くし。


「あんな奴二度と戦いたくねぇぞ…」


「俺もだよ…」


「ん?なんか急に寒くなったな?」


「外からの空気が流れ込んできてるみたいだな。」


「こんな常闇とこやみじゃ休めねぇしさっさと先に進むか。」


「マコト。気をつけて。」


「え?」


「この先に凄い強いモンスターがいる。」


「マジかよ…次から次へと…」


「魔力を見る限り多分Sランクのモンスター。」


「Sランク?それって災害レベルのモンスターだよな?」


「うん。天災級のドラゴンとかがSランク。因みに私の血を受け継いだ最上級吸血鬼の5人もSランクのモンスターとして認定されてる。」


「あー。そぉいやモンスター扱いだっけ。シャル見てると忘れそうになるな。」


「血は飲まなくても犬歯が長いのは一緒だから私も多分Sランクのモンスター扱い。」


「シャルをモンスター扱いなんかした奴は俺達がぶん殴ってやるから安心しろ。」


「……うん。ありがと。」


「そんな事よりこの先にいる奴の話をしないかぁ?」


「ゴホン。そぉだな。そのSランクモンスターってのはドラゴンか何かか?」


「ドラゴンとは違うみたい。ドラゴンの魔力はすぐ分かる。」


「へぇ。どんな奴かわからんけど今までで一番強いモンスターって事だよな…」


「私達なら大丈夫ですよ。」


「ですね。負ける気がしません。」


「マコトがいれば楽勝。」


「はは。なら行きますかね。」


「はい!」


暗闇を進んでいくと風の音と赤い光が見えてくる。

どぉやら外に出られそうだ。

光の元まで辿り着くと氷柱が垂れ下がった小さな出口となっていた。


「これは…山の反対側に出たみたいだな。」


風は反対側にいた時より穏やかだ。夕日が地平線の先から一帯を照らし、雪がオレンジ色に染まっている。

麓までが一望でき、広大な森が続いている。山のこちら側の木々は既に葉をつけているらしく青々とした森がずっと先まで続いている。


「この山は万年雪なのか?」


「溶けない。ずっと白い。」


「それより…何もいないぞ?」


見る限りシャルの言っていた驚異になるモンスターは見当たらない。というか小動物一匹すら視界の中には映らない。

見えるのは雪と氷と森。聞こえるのは風の音だけ。


「いる。」


シャルが指を指した先に真っ白な何かが()()()()()

保護色ほごしょくになっていて全く気が付かなかったが、確かに人の様な()()が数メートル下の坂に立っている様に見える。


「人…?」


「見た目は人。でもあれはモンスター。危険なモンスター。」


シャルは真っ赤な瞳をその何かに向けて離そうとしない。

俺も凝視してやっと分かった。真っ白なワンピースの様な服を着て、真っ白で長く真っ直ぐな髪の女性だ。


風が吹き抜ける度に髪がヒラヒラとなびき、こんなに寒いのに真っ白な肌の腕を出している。

眼下に広がる森を見ているのだろうか、ピクリともせずにじっとしている。


俺の頭の中に浮かんだたった一つ、その存在を表す言葉は、()()

それ以外の言葉を知らなかった。そして恐らくそれは当たっているはずだ。


「あいつはこの山に住むモンスター。龍脈山の女王。名前は付いてない。」


「シャルは知ってたのか?」


「随分昔に一度だけ会った事がある。というより見た事がある。」


「直接対峙(たいじ)はしてないのか。」


「うん。」


「逃がしてくれるかねぇ…」


俺がシャルからもう一度雪女に目をやると、その視線に気付いているぞ。とでも言いたげにそのままの体勢で()()()をこちらへ向ける。


ゾクリと体が反応する。あまりにも異様な姿。真後ろを向く顔。そして、その顔は()()()()()

真っ黒な瞳と真っ赤な唇。そして真っ白な肌は間違いなく人では無い何かのものだった。


今度は首をそのままに体がこちらへ向く。

そしてゆっくりとこちらへサクサクと雪を素足で踏みながら近付いてくる。3メートル程に達した時、足を止めて口を開く。


「あなた……強そうね……」


風が吹き抜け、届くはずの無い小さなつぶやきが俺の耳に届く。満面の笑みを崩さずそぉ言った雪女。


「強いかは分からないが…それがどぉしたんだ?」


「ふふふ………ふふふふふふふふふふふふふ」


顔がカクカクと揺れ笑い続ける女。壊れた人形と喋っている気分だ。


健が刀へと手を向ける。


「ダメよ。」


パキパキッ!


雪女がフッと息を吹き掛けると、途端に健の服が凍りつく。


「嘘だろ…」


驚きと畏怖の混じった様な声が健の口から漏れ出している。健だけでなく俺を含めたこの場にいる皆が同じ感想を持っていた。


魔法陣も何も無い。速すぎる魔法の行使と威力。ハッキリ言って上級精霊と同等かそれ以上の強さ。

Sランクのモンスターってのはこんなヤバい奴らばっかりなのか…

確かにこれはAランクの冒険者では全く歯が立たないだろう。


「……あなた……抜け落ちてるわね……」


満面の笑みが消えて俺に向かって呟く。

何について言っているかは直ぐに分かった。恐らく俺の魔力の事だろう。


「今それを集めてる最中でね…」


「そぉ……残念ね……」


酷く残念そうな顔をした雪女は俺達との間の雪を見つめて黙ってしまう。


生きた心地がしない。いつ戦闘が始まるのか、そもそも始まるのか?黙って通らせて貰えないだろうか…

そんな平和な考えを打ち破る言葉を雪女は呟いた。


「まぁ……良いかしら……()()()()()だし……」


来る。そぉ思った時には既に魔法を発動されていた。

ビュオッと風が雪女から吹き出し、雪女を中心として扇状に氷の刃が現れる。地面を這うように雪を掻き分けて飛んでくる氷の刃。


バキッ!


咄嗟に作り出したクリスタルシールドに当たり氷の刃は砕け散るが、クリスタルシールドもまた砕け散った。


「真琴様のクリスタルシールドを?!」


「ありゃSランクなんてもんじゃねぇ!更に上の存在だぞ!」


モンスターのランクは魔法の順位と同じくAランクでは倒せないモンスターを全てSランクとしている。

つまり一言にSランクと言っても強さはピンキリ。

そしてこの雪女はSランクの中でも強い部類のモンスターらしい。


「出し惜しみなんかしてたら瞬殺される!全力で行くぞ!!」


「はい!!」


全員の顔に焦りがあっただろう。俺も焦りがあった上に死を覚悟するレベル。

それでもとにかく皆を守りたい一心だった。


「ローズガーデン!!」


「サンダーバード!!」


凛とシャルが高火力の魔法を放つ。

雪の上に走るバラのつた。空中を飛んでいく雷の鳥。


「ふふふふふ」


バキンッ!



雪女は不敵な笑みを浮かべながら、片手を軽く振る。それだけで雪女の前に巨大な氷塊が出現し、その全てを受け止める。

そしてその氷塊が粉々に砕け、その欠片が凛とシャルの魔法を完全に消滅させる。


「そんな…」


「強い…」


その欠片はそのまま凛とシャルを飲み込み、2人の体は傷だらけになり宙を舞う。


「凛!シャル!!」


「…くっ…私は大丈夫…」


シャルは怪我が治るから大丈夫らしいが…凛は雪の上に倒れて動かない。


「二ノ型!四刀連斬!!」


「牙突!!」


健とプリネラが雪女へと接近する。


ガキンッ!


雪女は二人の刃を一枚の氷のシールドで防いでしまう。傷すらも付かないそのシールドはそのまま二人の体ごと薙ぎ払う。


「ぐぁっ!」

「うっ!!」


激しく吹き飛んだ二人はゴロゴロと雪の上を転がり続け数メートル移動した後にやっと止まる。

二人も完全に動けなくなってしまった。


ヒュン!


リーシャの放った貫通矢が雪女に向かって飛んでいく。

それを見もしないでフワリと素手で掴み取る雪女、お返しとでも言いたげに作り出した小さな氷のつぶてが矢よりも速いスピードで飛翔する。


「っ!!」


リーシャの前に飛び出たシャルの心臓を貫き、それでも止められなかった礫がリーシャの腹に直撃する。


シャル血飛沫ちしぶきが雪の上に飛び散り、リーシャは後ろへと吹き飛び、動かなくなった。シャルも動こうとはしているが、心臓を貫かれたからか、上手く動けないらしい。


俺はその一部始終を動く事もせず見ていた。

反応出来た場面もあったかもしれない。でも、凛が動かなくなった時点で俺の抑え込んできた感情が噴き出し、それを抑えきれずにいた。


「あ、あぁ……」


情けない声と溢れ出てくる黒い何か。


「ふふふふふふふふふふふ」


相変わらず俺を見てカタカタと笑う雪女。その顔を見て遂に俺の中の何かがブツリと切れた。

それと同時に俺の意識は完全に失われ、暗闇へと消えた。









「………うっ……」


「目が覚めましたか?!」


「………その声は……凛……か?」


「はい!私です!凛です!良かった…良かった……」


少し前に同じ様な言葉を凛から聞いた気がする。

そんなことを思っていると花の様な良い香りと頭を包み込む心地よい暖かさがやってきた。

凛が俺の頭を抱え込んでいるらしい。


「あてててて…」


「も、申し訳ありません!大丈夫ですか?!」


心地よい暖かさが離れ、自分が横になっていることにやっと気付いた。

開ききらないまぶたを無理矢理上げて顔を横に向けると健とプリネラ、リーシャが同じ様に横になっている所が見える。

雪の上ではなく森の中の様だが…


「あ、あぁ…体中が痛いけど…皆無事だったのか…?」


「はい…真琴様のお陰でなんとか無事でした。」


「俺の…?」


「覚えてないの?」


俺の横に正座して座る凛の横からヒョコっと顔を出すシャル。


「シャルも無事だったか。良かった。」


「私はあの程度じゃ死なない。心臓を貫かれたから少し動けなかっただけ。」


「そぉか…それより何があったんだ?」


「マコトが暴走した。」


「え?」


「シャルさん?!」


「ちゃんと伝えないと。黙っておいても良くない。」


「分かっていますが、今でなくても…」


「暴走…?」


なんとなくではあるが…俺の中にあったものが溢れ出した所までは覚えている。

だが、その後の事は全く思い出す事が出来ない…


「詳しく聞かせてくれ。」


「……はい。」


一瞬、躊躇ためらう様な顔を見せた凛だったが。その後の顛末てんまつを聞かせてくれた。







「…………っ!!」


体中に受けた傷が痛む。少し気を失っていた…?

真琴様は?!

私は気を取り戻し体を起こす。雪の冷たい触感が掌に伝わりってくる。


「うあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!」


真琴様の声。酷く苦しそうで悲しい声。顔を向けると真琴様の体の周囲を取り巻くように大量の魔力が渦巻いている。

私は魔力を見る魔法なんて使ってはいない。真琴様から出ている魔力が濃過ぎて可視化できる程になっているから見えているだけ。


「ま…まこと……さま……」


叫び止めるために走り寄りたいのに、体に力が入らなくて立ち上がる事も出来ない。

暴走している事は明らか。私達が…私が止めると約束したのに…


「く…うぅ……」


なんとか体を動かそうと必死になっていると、真琴様から出ていた魔力が次第に集まり、一つの塊になる。

魔法陣が一瞬現れると真琴様より一回り大きな炎が人の形となる。

いつもの美しい魔法とは違い、乱暴でありながら強い魔法。

炎は人の形に収束すると赤から青、そして白へと色を変える。

その白い炎は徐々に明確な形となり、二本の角が生えた鬼。しかも鎧を着て刀を持った侍の鬼となり真琴様の前に立っている。

手には白く光る長い白炎の刀。周囲に積もっていたはずの雪は見る見るうちに溶けきり、そして雪解け水は瞬時に蒸発し上空へと舞い上がる。


私達が日本へと向かう前に一度だけ見た事のある魔法。

火魔法、炎鬼えんき。第十位というランク付けになるはずだけど、ランク外という考え方の方がしっくりくる程の魔法。

炎鬼の大きさは人より一回り大きいくらいなのに、そのサイズの中に今の真琴様の持つほぼ全ての魔力が詰まっている。


「ふふふふふふふふひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


気色の悪い笑い声と共に白い女は今までで最も強力な氷の魔法を真琴様に向かって放った。

両手を前に上げて作り出しのは10メートルはある様な氷塊。全く傷すらも付けることが出来なかった強度の氷の塊が真琴様に飛来する。


すると前にいた炎鬼が刀を振り上げる。

たったそれだけの動作で氷塊は真っ二つに割れ、切り口から白い炎が上がり氷塊全てを飲み込んでしまう。

()()()()()という異常な光景に言葉を失ってしまう。

炎鬼は言葉を発する事は無い。あくまでも魔法でありあれは真琴様が創造したもの。でもまるで本当の鬼が現れたかのような威圧感を感じてしまう。


「ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


白い女の顔は既に見る影もない程に変わり果てモンスターそのものになっている。

再度白い女が魔力を込めると女の周りに氷で出来た大蛇が出現する。まるで生きているかのような大蛇は白い女を中心にとぐろを巻き、その顔は炎鬼の方へと向いている。


氷の大蛇の全長はどれくらいかハッキリとは分からない。胴回りは人の背より大きい。その胴の上にたった白い女が手を前に出すと、口をガパッと開ける。

白いモヤの様な息が真琴様の方へと向かって大量に吹きかけられる。よく見ると白いモヤではなくてキラキラと光っている粒の集合体。

その粒が地面に触れた瞬間。地面がバキバキと音を立てて凍りつく。もしあの大蛇を最初から出していたら、私達は為す術もなく瞬時に殺されていたはず。それくらい強力な相手であるにも関わらず、炎鬼は特に何もせずに立っている。

白い息が炎鬼へと辿り着くと思っていたのに、白い息が炎鬼の1メートル程手前で急に接近を止める。

炎鬼の力に勝てず蒸発していく白い息。それを見てもう一度手を振った白い女の動作に連動して大蛇の首がそのまま真琴様に向かって伸びていく。


その前に立ちはだかったのは炎鬼。いつ動いたのか…瞬きした瞬間にその場に現れた。

それでも構わずに突撃してくる大蛇を前に一歩も動かず、ただ前に刀を持っていない方の手を出しただけ。

その手に突撃した大蛇。


隕石でも落ちたのでは無いかという轟音ごうおん。普通に考えたら質量差から炎鬼と真琴様が同時に吹き飛ぶ画しか想像出来ない。でも、そぉならなかった。1ミリたりとも後方へと動かない炎鬼。

その手が触れた大蛇の鼻っ柱から湯気がジュウジュウと音を立てながら上がっている。

燃えはしていない。でも、ただそれだけの事。大蛇がどれだけ体をくねらせて押そうとも、ピクリともしない。

押すのを諦めたのか、尻尾を大きく振り、横から真琴様を狙った一撃が放たれる。


単純な質量だけでも骨が粉々になるであろう攻撃なのに、その尻尾が通った後は全てが凍り付くというおまけ付き。


ガキンッ!


しかしその尻尾の攻撃すら真琴様に届く事は無かった。尻尾の進行を妨げたのは大蛇の尻尾に絡みつく白炎の鎖。

炎鬼が作り出した物だろうと思う。大蛇の尻尾に巻き付いた鎖は大蛇がどれだけ暴れても切れる事は無い。

嫌がるようにのたうち回る大蛇の鼻っ柱に置かれた炎鬼の掌からボゥっと炎鬼のものとは違う白炎が上がる。

と思った瞬間の事だった。大蛇の体内に送り込まれた白炎が大蛇の内側から全てを破壊し尽くす。内部で急激に熱された事によって大蛇は爆散し、体を構成していた氷の塊が辺り一面に降り注ぐ。


白い女はさっきまで狂気的な顔で笑っていたのに、今はそんな表情ではなく、ただただ恐怖のみがその顔を支配していた。

あまりにも圧倒的な力。抗うことの出来ない暴力。

自分が今まで殺してきたもの達と真逆の立場となった白い女は自分との力の差をハッキリ認識しそして逃げた。

無様な声を上げて、一心不乱に炎鬼から離れようとする。あの手この手を使って逃げようとする白い女。


そしてまたしても私が瞬きをした瞬間に炎鬼の姿が消え、気が付いたら白い女の前にいた。


「ひぃいいい!!」


振り上げられた白炎の刀が女の肩口から横腹に掛けて通り抜ける。ジュクジュクと切り口が焼ける音が聞こえてくる。

それでも逃げようと残った片腕でこちらへと這いずるように移動している白い女。その女の口から白炎の刃先が飛び出す。


目を見開き声も出せずに炎上する。白い炎に包まれた女はそのまま灰も残さずに燃え尽きていった。


「真琴様…」


少し体の自由が効くようになった私は上半身を起こしその名前を呼んだ。

叫び声をあげてから一歩も動かず、言葉も発せずただ立っていた真琴様は私の声にピクリと体を動かし、私の事を見た。


まるで何か別のものでも見ているような目をして。


瞳孔どうこうは開き、顔に生気が無い。

多分…真琴様は今正気を失っている。


あまりにも一瞬の出来事で反応する所の話では無かった。

私の首元にいつの間にか突き付けられた白炎の刃。


目の前には炎鬼が立っている。

振り抜かれていたら私は自分の死にも気がつく事さえ出来なかったかもしれない。


「う゛っ…」


僅かに残った真琴様の意識なのか…刃は私を切り裂くまでには至らなかったが、フルフルと刃が震え何かと葛藤している様にも見える。


「リン!!」


私を無理矢理引っ張ったのはシャルだった。

ボーッと見つめていた私の腕を引っ張ったシャル。私のいた所に白炎の刃が突き刺さっている。


助けられた。とそこで初めて気が付いた。


ドサリとそのまま私の上に覆い被さる様にして倒れたシャルの左腕は無く、肉の焼ける臭いが漂ってくる。


私の上に覆い被さるシャルは目を開き、言った。


「守れなくてごめんなさい。」


シャルの奥に見えた炎鬼の姿。刀を振り被りシャルと私を殺そうとしていると感じた。


もしこの世界が崩壊しても、この世の誰が死んでも。私は多分本当の意味で悲しむ事は無いだろうと思っていたし、今も思っている。もしその世界に真琴様がいるのであれば私はそれだけで十分だった。

そんな真琴様がもし、私に死んでくれと言うのなら、その死を私は静かに受け入れる。

真琴様が私の死を必要としてくれるのであれば、私にとってその死は何にも変え難い至上の喜びとさえ思える。


でも、もし真琴様が自分の意思とは関係なく私を殺すのであれば、それは絶対に受け入れられないものだった。

私にとって真琴様が全てであるのと同時に、私は多分真琴様の中の大きな部分を占めていると分かっているから。

小さな私の手を必死に守ろうと痛いほど強く握り森を駆け抜けた時。母の死に泣き続ける私の背中を泣き止むまでずっとさすってくれた時。私が食べられないと言って吐き出した物を自分で食べ、死にたくないなら食べろと叱ってくれた時。

いつも真琴様は私の為に生きてきた。それが使命であるかのように。

この世にこれ以上の愛があるというのだろうか?私にはそうは思えなかった。そんな真琴様の顔が今、どんな時よりも苦しそうで今にも泣き出しそうで…気が付いたら私は叫んでいた。


「真琴様ぁぁ!!!!」


真琴様はまたピクリと体を強ばらせ、炎鬼の刃が止まった。


ゴゥッ!


そしてその瞬間に私の前に立っていたのは、黒いボロボロのマントに身を包む()()だった。

背を向けているし頭までしっかりと覆われたボロボロのマントで誰だか全く分からない。性別さえ分からない。


誰かと問う前にそのボロボロのマントの人は炎鬼へ手を伸ばす。

触れれば瞬時に蒸発する様な熱を帯びる炎鬼になんの躊躇も無く手を伸ばしたその人の手が炎鬼に触れた瞬時。炎鬼が凍り付いた。比喩ひゆなどではなく実際に凍り付いたのだ。

氷が燃えるという異常な光景の次は炎が凍るという異常な光景を見ることになった。


凍った炎鬼にその人が再度触れるとバラバラになり砕け散った。

あの真琴様の魔法を。最高の威力で作り上げられた炎鬼をたった数秒で破壊してしまったのだ。


意味も分からずただ見ていると、苦しむ真琴様の元にゆっくりと近づいたその人は……


真琴様を()()()


たった一撃の拳。それでも信じられないくらい真琴様は吹き飛び地面を何度も転がり続け、動かなくなった。


「真琴様!!この!!」


「ダメ!!リン!!」


私が襲いかかろうとした時片腕の無いシャルが私を強く押さえ付ける。

シャルの目は私では無くその人を見つめ、歯がカチカチと鳴る音が聞こえる。

あのシャルが怯えている。恐怖に歯が噛み合っていない。


「勝てない…あれには絶対に勝てない…」


白い女にさえここまでの恐怖を見せなかったシャルがここまで言う相手…


その人は怯えるシャルに近付いてきてそっと何かを手渡す。


シャルはビクリと体を強ばらせるが、その手渡された物を見ておずおずと手を伸ばした。

切り落とされたシャルの左腕。それを手渡したのだ。


敵意は無いと示したかったのだろうか…

そしてマントの奥にいる人がこちらを見た気がした。実際には顔どころか目すら見えなかったが、なんとなくそぉ感じた。


そして黒い手袋の上に乗せられた物を私の方へと差し出してくる。

受け取れ…という事なのだろうか?

一言も喋らないその人はもう一度私の方へと差し出してくる。


私はそれを受け取る。


その人はそれを見て真琴様の方をもう一度見る。

私もシャルも真琴様の方を見た。


「あの…貴方は………あれ?」


目の前にいたはずのボロボロのマントの人は既にどこにも見当たらなかった。周りを確認したけどどこにも。


「だ、誰だったのでしょうか…?」


「分からない…でも敵対しなくて良かった…っ!」


「シャル!」


「大丈夫…焼けただれてるから治りが遅いだけ。マコトを…」


「はい!」


シャルをその場に置いて私は真琴様の元に駆け寄る。体中が痛いけどそんな事はどぉでもいい事だった。


仰向けに横たわる真琴様に近寄ると、ボロボロだけど気絶しているだけの様だった。


「良かった…」


私は腰が抜けたと思えるくらいの安堵に襲われその場にペタリと座り込んだ。

でも安心は出来ない。ここは龍脈山だし、気絶した真琴様をこのままこんな寒い場所に置いてしまってはいけない。


痛む体に鞭を打って立ち上がる。


「シャル!皆を下に運びましょう!」


「うん。」


眼下に見える森の中なら多少は寒さも緩いはず。こちら側の山の斜面はそれ程キツくは無いしなんとか運べるはず。私は無けなしの魔法で真琴様を運ぶソリを作り出しそれを使って下まで運ぶ。


シャルはリーシャとプリネラと健を同じ様に運んでくれるらしい。力も強いから簡単と言って私より楽そうに3人を運んでいく。私も身体強化使ってるんだけどな…


「ここなら大丈夫そぉ。」


「ですね。皆をここに寝かせましょう。」


「うん。」


四人を寝かせてやっと一息つける。


「私が見張っておくからリンも休むと良いよ。」


「いえ。真琴様が起きるまでは。」


「………分かった。」







「そぉか……そんな事が…」


「皆無事ですし、炎鬼がいなければ今頃私達全員あの女の腹の中ですから。助けて頂いたことに変わりはありません。」


「……あぁ……」


「マコト。回復薬出せる?」


「あぁ…そぉ言えば皆が持ってた回復薬は道中でなくなったんだったか…」


「横穴の中で渡そうとしてたのに落ちちゃったから。」


「それからここまで一直線だったからな…ほら。」


「ありがと。」


シャルが回復薬の蓋を空けると俺に渡してくる。


「いや。皆に先にやってくれ。」


そんな事は気休め、自己満足でしかないのは分かっている。でも、誰だか知らないが凛達を助けてくれたボロボロのマントの奴が与えたこの痛みはしっかりと感じなければならないと思っていた。


「真琴様…」


心配そうに顔を近付けて見つめてくる凛。その頬に手を伸ばしそっと触れる。

俺の暴走で皆を殺さなくて本当に良かった…


「大丈夫。少し自分をいましめてるだけだ。後でちゃんと飲むよ。」


くすぐったそうに目を細める凛の顔を見て心底そぉ思った。


健達も傷は癒えたが起きるまでは少し時間が掛かりそうだった。


「そぉいえば凛はそのボロボロのマントの奴に何を貰ったんだ?」


「あ、そぉでした。」


そぉ言って取り出して見せてくれたのはブローチだった。中央に白色の魔石が嵌め込まれた物。


「これは…」


「はい。この紋章。」


ブローチのデザインとなっているのはMが上下逆さになって重なった様なもの。静風護せいふうごに刻まれた紋章と同じ物だ。


「この紋章って何か有名な物なのか?」


「いえ。少なくとも私は知りません。」


「私も知らない。」


「なんでこんな所にこの紋章が…」


ボロボロのマントの奴が何か知ってはいるのかもしれないが…聞くことは出来ない。でも、俺を殴ったとはいえそれは多分俺の暴走を止めるためだ。助けてくれたのだしこのブローチも何か意味があるのだろう。

複雑な魔道具の様だが、その効果や発動条件については全く読み取れない。かなり精密に編み込まれた物らしい。


「とりあえず凛が持っててくれ。多分危険なものでは無いはずだ。」


「分かりました。」


「凛。ネックレス壊れちまったか。」


こっちに来た頃に渡した俺が作ったネックレス。風魔法が凛を護ってくれるという物だったのだが、吹き飛ばされた時に発動して壊れたらしい。


「これが無ければ私はもっと重症でした。真琴様のおかげですよ。」


「役にたってくれたのなら良かった。俺も2人に貰った腕輪と指輪。どっちも壊れちまったな。」


「あの人の拳はそれを突き抜けたって事ですか?」


「俺は覚えてないが恐らくな。」


「……恐ろしい力ですね…」


「健の外套に付けた魔石も割れてしまったらしいし新調するか。」


「新しく作るのですか?」


「次いつあんな奴と戦わなくてはならなくなるか分からないからな。出来る時にやっておくべきだろ。」


「確かにそぉですけど、暫くは禁止ですよ。」


「なんで?!」


「分からないですか?」


「あー……はははー…分かりました…」


「はい。」


「凛を怒らせると怖い。」


「シャル?」


「なんでもない。私は見張りに行ってくる。」


静かに素早く立ち去るシャル。プリネラも顔負けな動きだ。

この辺りは雪女の縄張りだったのか、モンスターがいない。雪女の口振りからすと魔力の高い獲物を探していたみたいだが、他にも犠牲者はいたのだろうか…いればシャルは知っていそうなものだが…

シャルは知らないと言っていたし人の被害は無かったのか?デュトブロスの被害は外に出ないから知らなかっただけなのか…?


やる事が無いと答えの出ない問題を延々と考えてしまう。

頭を振って疑問を頭の中から飛ばして健達の様子を見る。もっと強くなり、そして自分の中の力を制御出来るようにならなければ、いつかまた、近いうちに同じ様な事になってしまう。次は誰かを殺してしまうだろう。

そんな事は御免だしなんとかなるのであればその方法を早く見つけださなければ…


「うっ……」


「気が付いたか?!健!」


「……あれ…?俺は…?」


「あの白い女はなんとかなった。今は安全そぉな場所に避難した所らしい。」


「真琴様は大丈夫なのか?」


「あぁ。さっき回復薬を飲んで落ち着いた所だ。」


「そぉか…

くそっ!俺が気絶してどぉすんだよ!」


「俺も同じだ。暴走して凛を殺してしまう所だった…」


「真琴様…」


「……すまない…」


「謝るなよ。俺達の立つ瀬が無いじゃないか…」


「……」


「マコト…様……」


「リーシャ!プリネラ!良かった!」


「ここは…?………あの女は?!」


「とりあえず大丈夫だ。」


「マコト様!お怪我は?!」


「大丈夫。皆無事だよ。」


「良かった……」


「全員起きたし今後の事について少し話をしよう。」


「はい。」


全員が集まった所で荷物の整理をして、俺達の今後について話を始める。


「……」


「真琴様…」


「あぁ…

皆。今回はかなり危なかった。あの白い女…」


全員の顔が暗く落ち込む。それだけの惨敗という事だ。誰も歯が立たなかった。


「傷も付かなかったぜ…」


「真琴様のクリスタルシールドをあんなに容易く砕くなんて…」


「その後の事はさっき話した通り、俺が暴走してなんとかなったものの、凛を殺しかけた。」


「……」


「それをどこの誰だか分からないが…助けてくれた奴がいる。ボロボロの黒いマントを着た誰か。という事しかわかっていないが。」


「真琴様の最高の魔法を容易く破壊した人です。敵意は無かったみたいですが…」


「謎の人物を含めて俺達の実力じゃ全く歯が立たない存在は確かにいる。」


「はい。」


「俺の力が暴走してしまう事についても真剣に取り組まないといけない。これは俺個人の問題ではあるが…どちらにしても全員の力を底上げする必要があると思う。」


「真琴様の魔力を取り戻す事を優先するべきでは…?」


「もちろん俺の魔力を取り戻す事も大切ではあるが、その魔力をもっと上手く使えるようにならないとあの領域の連中には勝てない。

暴走した俺があの白い女を圧倒した事を考えると魔力自体は十分足りている筈なんだ。それが出来なかったって事は俺自身の力が足りない。

別に最強になりたいとかそんな事は言ってない。せめて俺の手の中にあるものくらい守る力が必要だと思うんだ。」


「守ってもらう気なんてねぇ。俺達が真琴様を守るんだよ。

だから…もっと強くならなきゃならねぇ。」


「健……

分かってくれたなら今後の方針を話す。暫くの間デュトブロスに滞在しようと思う。」


「まぁ…俺の剣術の師匠もいるしな。」


「ここ龍脈山は特訓にはもってこいのはずだ。」


「分かった。」


「その上で一つ目標を決めようと思う。」


「目標?」


「全員Aランク指定のモンスターを単独で討伐出来るようになること。」


「…単独で…」


「それともう一つ。自分で納得出来る目標を決めてそれを達成すること。」


「自分で納得出来る目標…ですか。」


「別になんでもいい。自分がそれを達成したら強くなれたと確信できる何かだ。」


「……」


「それらを達成する為に…全員離れ離れで行動する。」


「真琴様を一人になど!」


「凛。」


「嫌です!」


「……頼む。暴走して凛を傷付けたくないんだ。必ず制御してみせるから。」


「……でも…」


「俺は賛成だ。」


「なっ?!」


「凛。俺達が守る程真琴様は弱いのか?いや。真琴様を守ると言える程俺達は強いのか?」


「それは……」


「真琴様がこれからやろうとしてる事には俺達の存在は邪魔にしかならない。なら大人しく自分の力を付けるために動くべきだ。」


「……」


「俺は行くぜ。真琴様。」


健は刀を手に持って立ち上がる。


「あぁ。またな。」


こぉいう時は男の健の方が聞き分けは良いのかもしれない。一人でやる事にはちゃんと意味がある。自分一人で考え、困難を一人で乗り越える。それは想像以上に大変で辛い事だ。

だが、それが出来れば今後何かあった時に俺の指示ではなく自分の考えで動ける。

健はそれをなんとなく感じているのだろう。


「……分かりました。私も行きます。」


「私も。」


「私も行きますね。」


リーシャ。シャル。プリネラも立ち上がると思い思いの方向へと足を向ける。



最後に残ったのは凛だった。まぁ想像通りではあったが。

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