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ユイの独白 幼少期の記憶

私はこの水野の街で生まれて、母に連れられて一度逃げ、またこの街に戻ってきました。子どもの頃から家にはとにかくお金が無くて。母は生きるために水商売の世界に飛び込みました。


母がなぜシングルマザーなのかとか、相手の男、つまり私の父親が誰でどんな人なのかとかそんなことは全く知りません。聞かなかったから。聞けなかったから。


母が夜に働きに出るようになって私は職場に近いボロアパートで1人で帰りを待つようになりました。最初はまだ小学校に行っていなかったと思います。あ、お金も無ければ公的な夜間保育も無かったので私は保育園に行ったことはありません。なんか、いつも1人だった。


そんな生活が続いていたある日、母が仕事に行く前にある親子が訪ねてきました。母はその親子の母親と親しげに話し、傍にいた男の子を家に入れ私にこう言いました。


『あなたの、初めてのお友達ね』


その日からその男の子は毎日、夕方5時になるとやってくるようになりました。私たちはお互いに『初めてのお友達』になりました。彼の名前は橋川圭。


圭の母親は私の母の同僚で同じシングルマザーでした。私の家に圭を行かせるというのは、子どもが夜1人で家で待っているということをお互いに知った2人が、それならと言って決めたことでした。それからは何年もそんな生活が続きました。小学校に行き始めてからは2人で宿題をしたりして過ごしました。決して人に言える家庭環境じゃ無いと幼いながらに分かっていたから、この関係は誰にも言いませんでした。小学生にして私たちは『2人だけの秘密』を共有していたのです。


でもやっぱり、私たちは男女です。高学年になるにつれて圭が私の家にやってくる回数はだんだんと減り中学生になると完全に無くなりました。それでも連絡は取り合っていました。電話かパソコンメールで。当時はまだ携帯電話を持っていなかったから。


圭は勉強が出来ました。中学に入ってからはとにかく勉強に打ち込みました。地元で一番の進学校に行って国立大学に行くことが圭の希望でした。この世界から抜け出すために。自分の運命を、変えるために。一方の私は、特に秀でた才能も無くごく普通で。でも、ちゃんとした仕事に就いてこの貧困から抜け出すんだと、それだけは決めていました。それなのに。


中3の時、母が急に鬱になり、酒に溺れるようになりました。


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