ガラスを隔てて
来宮は半休を取ってある場所に来ていた。そこは外界との繋がりを遮断された殺風景な非日常の世界だった。座って待っているとガラスを隔てた向こう側の扉が開いた。
「久しぶりだな」
「・・・そうね」
来宮の前に現れたのは、斉藤綾香だった。綾香の裁判が始まり拘置所へ移されたため面会へ向かったのだ。綾香は白い服を着ていて落ち着いていた。
「もうあれから随分と経った気がするわ」
「そうか。俺はあっという間だったよ」
「・・・。あの病院に居ればね。先生、大丈夫だった?」
「え?」
「あの後、傷とか」
「ああ。悔しいけど、やっぱ三谷家先生って手技は上手いな」
「なんか言い方が」
そう言って綾香は少し笑った。
「お前こそ、大丈夫なのか」
「私は・・・。冷静さを失った自分が悪いから。もちろん後悔しているかと聞かれると困るけど。でも、菜穂さん、双葉ちゃん・・それに先生には申し訳なく思ってる」
「・・・いや」
「いろんな人の人生を変えてしまったなって。先生の言った通り。もっと別の方法があったかもしれないなって、ここに来てからずっと思っているの。私の存在が・・・」
綾香は言葉を切る。
「なあ。斉藤、あのな、俺」
そう来宮が切り出そうとすると綾香は顔を上げて来宮の言葉を遮った。
「先生。痩せたというか・・やつれたね」
綾香はそう言って少し心配そうな瞳を来宮に向ける。
「え。いや、そうかな・・」
実際、最近は忙しかったり調子の悪い日があったりとあまり食べれてはいなかった。
「先生。こんな・・もう私に構う必要なんてないよ。・・私は、先生とは生きる世界が違う人間になったんだから」
そう言って綾香は立ち上がり一方的に面会を終わらせる。
「おい!」
来宮が慌てて声をかけても綾香は振り返らなかった。仕方が無いので来宮は施設を出た。その外には来宮を待っている人が居た。
「どうだった?」
「・・・磯山」
「久しぶりね先生。」
「どこかに飛ばされたんじゃ」
「そ。今日はたまたまこっちに用があっただけ。先生が面会に来てるっていうからついでに来てみただけよ。」
「そうか」
菜穂は来宮の様子がおかしいことに気が付く。
「あ、先生。この中での会話は、良いことしか持って帰っちゃダメ。悪いことはさ、一瞬の気の迷いで言っちゃうこともあるんだし」
「・・・そうだな」
「それじゃ、私はこれで。またねー」
菜穂はそう言うと颯爽と去っていった。来宮も時間が迫っていることに気が付いて病院へと急いだ。




