彼はここにいた
坂原と凛久は本社の物陰から盗聴を試みていた。
「坂原さん、これ本当に性能悪いですね」
「これでもそこそこ値は張ったんだよ」
「騙されたんじゃ?」
「・・・そうかもしれないけど今は関係ないでしょ。あ、ほら」
「聞こえますね・・。でも聞き取れない。これ、音量どこで上げるんですか?」
「これじゃない?あ」
「ちょっと。つまみが折れたじゃないですか。勘弁してください。」
「ごめん。集中してきこう」
耳を澄まして聞いていると、どうやらアカネは社長と思しき人物と話していた。どうやら昨日の坂原との密会について聞かれているようだ」
「・・・この追跡してきた巻かれた男って坂原さんですよね」
「・・・巻かれてはいないけどね。ていうか、まさかあの状況で盗聴器を仕込むとは」
「みんな考えることは同じですね。お相子で良かったですね」
「まあね。・・・余計なこと・・?ブツ?」
「・・あれ、ちょっと電波が悪いですね。」
「でも。肝心なことは聞き取れた。なるほど。ブツね」
「何ですか?」
「ん?ああ。恐らくクスリのことだろうね。彼女はその秘密を守るためにわざと守られたってわけだ。・・あ」
「また何か聞こえます。・・・え」
「・・・まさか」
「今、圭って言いましたよね?間違いなく」
「うん。言ったね」
「てことは、200m圏内に橋川圭はいるってこと!?」
凛久はそう言って思わず探しに行こうとするが坂原は止められる。
「200m圏内って意外に広いし、分かりやすい場所にいるわけないし、むやみな行動は危険だから止めなさい」
「でも・・・」
「とにかく。アカネと橋川圭が繋がっていることが分かったんだから。焦らないで。あ・・。200m圏内を離れたみたいだね。もともとアカネにばかり張り付いているわけにはいかなかったし。とりあえず常に盗聴することは諦めざる負えないから。それより、あのユイ、圭、アカネの3人のことを徹底的に調べようか。きっと。何かあるよ」
「そうですね」
坂原は反射的に携帯を取り出し温田に情報を求めようとして彼がもうこの世に居ないことを思い出す。彼を殺した人物を探す捜査のはずなのに。無意識な自分が怖かった。気を取り直して坂原は指示する。
「りっちゃんはユイの方を調べて。自宅の場所も判明してるんだよね」
「はい。住んでたかは分からないですけど」
「じゃあそこへ行って。僕はもう一度温田のアパートに行ってくるから」
そう言って2人は分かれた。そして坂原は温田宅に行く前に深川に風俗会社の覚醒剤密売疑惑について伝えようとするが、アカネの身に危険が及ぶ可能性が高いことを考え、今は止めておくことにする。そして再びあの大家の自宅を訪ねるのだった。




