一番目の世界:フェルスフェア
僕は光に流された先に降り立ちました。僕の服装が変わっています。白いジャケットに白いズボンです。ここはどこでしょうか?先ほどの真っ白な空間とは違い色に満ち溢れています。
赤いカーペット、灰色の壁、金色の椅子、銀色の甲冑、緑の植物、オレンジ色の炎、青色のローブ、そして黄色の文字で大きな円を描くように書かれているものがあります。
「Благодарим Вас за то, героем. Если вы хотите, чтобы спасти мир.」
金色の王冠をかぶった人が何かを話しています。言葉がわからないというのは不便です。思い出しました。僕は言葉がわかるんでした。言語ではなく概念で伝わるのでした。
「国王様、言葉が伝わっていないのでは?」
「魔導師長よどうなのだ?」
「それはあり得ません。魔法陣にはこの世界の言葉を理解する呪文が組み込んであります。」
僕が黙っているので伝わっていないと思ったようです。
「伝わっています。」
国王と呼ばれた人がまた話を続けます。
「この世界は魔王による危機に瀕している。どうかこの世界を救ってほしい。」
国王が頭を下げます。周りがざわめきした。どうやらあまりないことのようです。
さて世界を救ってほしいそうですが、どうしましょう。白い何かには好きに生きて僕の意味を考えてほしいそうですが、目的もありませんからそれを目的としましょう。
「わかりました世界を救います。」
「やってくれるか!勇者よ。」
周りから歓声が上がります。ただ疑問が残ります。
「勇者とはなんですか?魔王とはなんですか?」
今度は反対に沈黙が訪れました。
◇◆◇◆◇
今は王女の部屋に訪れています。天蓋付きのベッドが目立つ部屋です。あれから僕は異世界から来た物知らずという認識になったようです。そこで王女から色々と教えてもらうことになりました。
白い丸テーブルに向かい合わせで座ります。二人の前にはメイドが入れた紅茶があります。
「初めまして勇者様。私はマリア=アンティールです。勇者様の世界には魔王はいなかったようですので私が説明させていただきます。」
王女は僕に挨拶をします。
「お願いします。」
「魔王とは百年に一度生まれると言われている魔族の王です。魔族たちは世界征服をしようと私たち人間を皆殺しにしようとしています。このままではこの世界は悪に包まれ最悪の結末を迎えてしまうのです。
ただ魔族はとても強大で私たちでは歯が立ちません。そこで勇者であるあなた様をお呼びしたのです。魔王を倒せるのは勇者様しかいません。」
「僕はその魔王を倒せばいいのですね。」
「その通りです勇者様。どうかこの世界を救ってください。」
王女が悲哀に満ちた顔で頼んできます。僕はとりあえず魔王を倒すことにしました。この世界を救えば僕の意味が何かわかるかもしれません。
「ところで勇者様。勇者様のお名前はなんというのですか?」
僕はこの前生まれたばかりです。名前というものはありません。生まれた時に元から持っている知識もありますがないものもあります。どうして元から持っているのかわかりません。質問に答えるならばないというしかないです。
「名前はありません。」
「まぁそうなのですか?勇者様の世界では名前はないのでしょうか?」
「わかりません。」
「何か深い事情がおありなのですね。では私がおつけしてもよろしいですか?」
先ほどの顔とはうって変わってとても楽しそうです。紅茶をひとくち口に含みました。
「勇者様は中世的な顔ですね。失礼ですが男性でしょうか?女性でしょうか?」
「性別ですか。僕には性別がありません。どちらにもなれる気がします。」
「そうなのですか?変わっていますね。んーでは勇者様は髪もお召しになっている服も真っ白ですからシロという名前はどうでしょう?」
「シロですか。いいですね。僕は今からシロです。」
僕はこれからシロとして生きることにしました。さしあたって魔王を倒すために魔王のいる場所や外見を聞いていきます。魔王は北の極寒の地にいるそうです。見た目はわかりませんが出会えば必ずわかるほどのおぞましい見た目をしているそうです。
「わかりました。では今から行ってきます。」
僕は椅子から立ち上がると、魔王の元へ向かおうとします。ですが王女が僕を引き止めます。
「いけませんシロ様!一人ではとても魔王には勝てません!それにシロ様はこちらにきて間もないのです。今は力を蓄える時です。」
「そうなのですか。そういえば僕は戦ったことがありません。」
「そうですシロ様。今日はもう夜も遅いですからお部屋でお休みになってください。明日には戦闘訓練が始まるそうです。シロ様頑張ってください。」
王女は僕の手を取り両手で固く握ります。
「ソフィア、シロ様をお部屋へ案内してあげて。」
「かしこまりました。シロ様こちらでございます。」
ソフィアと呼ばれたメイドが僕にあてがわれた部屋に案内します。王女の部屋からそれほど離れておらず、三つ隣というところです。
「何かご用件がありましたら備え付けのベルをお鳴らしください。私が対応いたします。それではごゆっくりお寛ぎください。」
メイドが案内を終えると部屋から出ていきます。
部屋は王女の部屋と同じくらい広いです。綺麗に清掃されたへやで、清潔感があります。天蓋は付いてませんが十分に大きなベッドがあります。今日はもうこのベッドで寝ましょう。
僕はベッドに横になりました。暗闇の中では時計が時を刻む音だけが聞こえます。僕は目を瞑りますがなかなか眠れません。自覚はないのですが緊張しているのでしょうか?
暫く目を瞑っていました。数時間経った後僕は思い出しました。そういえば僕には睡眠が必要ありませんでした。僕はそのまま夜を明かしました。




