エピローグ
夏期講習が終わった夏休み終盤。
亮はその時間を仕事に当てていた。
その日は仕事が終わるのが遅くなり、夕飯は車内で適当に済ませ、寮に帰ってきて風呂にだけ入るともう21時を回っていた。
まだ奈津やみんなは談話室にいるだろうか、と思いそちらに足を向ける。
向かいながら、そう思ったことについて内心苦笑する。
変わったな、俺も。
昔なら考えられなかったなと思う。
中学の頃はただ家と学校の往復をするだけ。
奈津と弟たちがいればいいと思っていて、友達もいなかった。
この学校には父に入るように言われ、4人で入学した。
鮎川グループの子供たち、としてではなく、ただの普通の子供として。
出会った人たちは亮を鮎川亮という一人の人間として接してくれ、それはグループのことを話した後も変わらなかった。
居心地がいいと感じ始めたのはいつからか。
談話室に着くとまだ奈津たちは勉強しつつも賑やかに話していた。
「あ、亮帰ってきた。」
「おかえりー、遅かったね。」
「おつかれ。」
気付いた香緒里たちが声を掛けてくる。
それに応じつつ、奈津の隣に座る。
この学校に入って、帰りたい場所も守りたいものを増えてしまった。
でも、それが頑張る理由にもなっている。
父はこうなることを見越してここに通わせたのかどうかまでは分からない。
けれど、ここに来て良かったと思うのだ。
「亮、なんかいいことあった?」
「ん、まぁ、何となくな。」
隣にいるこの幼馴染は亮のそんな考えは多分見透かしている。
小首を傾げる奈津を見て、亮は少し微笑んだ。
夏はもう終わりに向かっている。




