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一期一会  作者: 雪奈
第14章 雪影に滲む
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閑話 鮎川家にて


「ねぇねぇ、愛してるゲームしない??」


春休みに鮎川家でお泊まり会をしている時に、沙世は突然そう言った。

女子組は先にお風呂に入り終え、リビングで寛いでおり、男子組はまだいない。


「えー面白そう!一度やってみたかったんだよね〜。」


すぐに賛同するのはもちろん奈津。


「なんやねんそれ??」

「相手に向かって『愛してるよ』って言って、照れたり笑ったりした方が負けっていうゲームだよ〜女子同士だしやろーよー。」


そう言って、なし崩し的に始まった愛してるゲーム。

まずは言い出しっぺの沙世からである。


「雪音、愛してる♡」

「はいはい、ありがとう。」

「ちょっと!流しすぎじゃない!?」

「そういうゲームでしょ?」


ニッコリ微笑んで雪音は言う。

続いて、雪音は隣に座る香緒里を見た。


「香緒里、愛してる。」

「あの、ちょっと待って……」

「顔赤すぎない??」

「むしろなんでそんなに普通でいられるの……?」

「はいじゃあ雪音プラス1点、香緒里はマイナス1点〜、次は奈津に言ってね〜。」


次に香緒里は奈津を見る。

奈津も香緒里を見つめる。


「えっと……愛してるよ……?」

「よし、かわいい。」


真っ赤になりながらも言う香緒里に奈津は満足そうに頷いた。


「香緒里の初愛してるもらった!!新谷に言ったらどんな顔するかな〜」

「すごい複雑な顔するだろうね。」

「絶対言わないで……恥ずかしすぎる……」


「由美ちゃん、愛してるよ?」

「なっちゃんかわいすぎて無理………」

「あ、赤くなった。」

「はい、由美マイナス1点〜奈津はプラス1点!」

「これ組み合わせもあるね??」

「1周終わったら席替えしよっか。」

「まだやるの!?」


「美愛ちゃん、やらなきゃダメ……?」

「ゲームやからなぁ。」

「うぅ……愛してる、よ?」

「うちも愛してるで?」

「もう!美愛ちゃん!!」


イチャイチャしだす美愛と由美を沙世たちはにまにま見つめる。


「沙世、そんな余裕ぶっててええの?」

「え?」


美愛は沙世の隣に座り、手をその頬に添える。


「沙世、愛してる。」

「うぉわぁぁずるい!それはずるいよ美愛!!イケメン……!!!」


キリッと顔を決めて言い放つ美愛にさすがの沙世も照れる。

イケメンに弱い。


「やっぱり美愛ちゃんが強いかー。」

「この中だと攻めさせたら一番だろうね。」


奈津と雪音がその様子を見て話す。


「悠連れて来なきゃダメ?」

「いやー美愛は悠に対しても全然ノリで言えそう。」

「言われるのはダメじゃない?」

「そもそも悠が言えなさそう。」

「それはある。」


そうして順番を入れ替えて2周目が始まってしまった。



------------


一方その頃男子組はお風呂にいた。

鮎川家の風呂は従業員も入ることもあるので大浴場並みに広い。

女子風呂は隣の上原家にある。


「後でプラベしようぜー。」

「一人足りないだろ。」

「美愛誘う?多分やってくれるでしょ。」


先程までやっていたゲームの話をしながら湯船に浸かっていると、「そういえばさー」と直樹が悠に話を振った。


「ユウの初恋って、やっぱりミメイなの?」

「は!?なんだよいきなり!」

「美愛だと思うよ。」

「だろうな。」


自分で言う前に兄弟たちにバラされる。

後に引けなくなった悠は、


「……そうだよ。そう言う直樹はどうなんだよ。」

「オレ?オレはまだかなーそれどころでもなかったしね。だから今後のお楽しみ。」


楽しそうに言った直樹は次に圭を見た。


「え、次俺?俺は奈津だね。」

「あーやっぱりそこはそうなるのか。」

「一番身近な子だからね。」


亮も知っているようで特に何も言わない。


「亮はもちろん上原だろ?その中で悠だけ初恋が今までなかったのってちょっと面白いな。」

「悠は幼稚園上がってしばらくするまで、奈津のこと本当の姉だと思ってたからね。」


真が言うと圭はそう付け加えた。


「おい、揃って残念ものを見る目すんな!」

「なんかさすが悠だな。」

「確かによく一緒にいるとて、間違えるか…??」

「四六時中一緒にいたら4姉弟だと思うだろ!」


秀人と翔太は「思わねーよ。」と突っ込んだ。


「秀人は?」

「香緒里だけど?」

「お前もさすがだな……。」


圭が聞くと秀人はさらりと答えた。


「翔太は?雪音ちゃん?」

「雪音って言いたいところだけど、残念ながら初恋は幼稚園かなー。名前も覚えてないけど……あーでも雰囲気は雪音に近いかなぁ。」


次に真の方を見る。


「俺……?いやーまぁ……」


歯切れの悪い真は秀人の方をちょっと見た。


「え?秀人?」

「んなわけねーだろ!」

「……香緒里だろ?今更俺は気にしてねーよ?」

「まぁ、そう。」

「「は!?」」


秀人と真の発言に悠と圭は驚く。

そっか、そういえば高校に入ってからこの話を人にしたことなかったか、と翔太は思う。


「え?いつ?」

「中学の時。」

「いやいやいや初耳なんだけど!?真、香緒里ちゃんのこと好きだったの!?」

「別にだからと言って俺と真が揉めたことはねーぞ?」

「いやそうだとしても衝撃的すぎるわ!」


まぁ今の関係性を見れば驚かれるのも無理はない。

ややこしい事態にならないように、あまり話していなかったのもあるが。


さすがの亮も少し驚いた顔をしている。

直樹は面白そうに悠や圭の様子を見ている。


イケメン二人の初恋奪うとか香緒里ちゃん強すぎでしょ……と圭は思うも、香緒里ちゃんなら有り得るか、とも考える。

そしてだからこその一年生の夏の一件で揉めて拗れたのか、と妙に納得した。



-----------


お風呂を上がり、リビングに男子組が辿り着いた時も女子組は未だ愛してるゲームをしている最中だった。


その様子を見た男子組………主に秀人、翔太、真、悠は固まった。


「えーと………何してるの?」

「あ、戻ってきたんだ。おかえりー。」

「何って見てわかるでしょ、愛してるゲーム。」

「そりゃわかるけれども。」


圭が聞くと奈津と沙世が反応する。


「今最後1周だからちょっと待っててねー。」

「ねぇ、秀人たちも来たからやめない???」

「ダメ、まだ私香緒里から言われてないもん。」

「勘弁して………。」


沙世は香緒里の元へ行き、急かす。

香緒里は秀人の方をちらりと見た後、さすがに聞かれたくないのか沙世の耳元で小さく言う。

沙世は満足そうににんまりした。


翔太は隣に立つ秀人の顔を見ると、「俺も言われたことないが?」と言いたげな顔をしていた。


「よしじゃあ私ねー由美、愛してるよ。」

「沙世ちゃん………勇気あるね……。」

「まぁ減るもんじゃないし。じゃあ由美は雪音にね?」


由美→雪音、雪音→奈津、奈津→美愛と繰り返した後、美愛は香緒里を向く。


「新谷の前でやるとなんか申し訳なさあるんやけど……まぁ、ゲームだし、許したってな?……愛してるで、香緒里。」

「………美愛、そのイケメンぶりはずるいって……。」


「悠まで赤くならなくてもいいんじゃない?」

「うるせー。」


圭が隣に立つ悠を見て言う。

耐性が無さすぎていっそかわいい。


「ユウ、愛してるよ?」

「お前もうるせー!」


きゅるんとかわいくポーズをして言う直樹の頭を悠は叩いた。


「せっかくだからさー、男子交えてやって、彼氏に言ってあげてもいいんじゃない???」


奈津が突如爆弾を投げ込む。


「無理……!絶対無理……!!」

「私、彼氏いないからセーフだよね……?」

「んーじゃあ由美ちゃんは圭か直樹で。」

「なんで……!??」


香緒里と由美は崩れ落ちる。

翔太と亮、圭は苦笑いしている。


「えー……じゃあ言い出しっぺからしてよー。」

「いいよ?」


軽く了承すると、奈津は亮の元へ行く。


「亮、愛してる。」

「知ってる。」


にっこり微笑んで言う奈津に、照れもせず少し笑って亮は答える。


「このカップル強すぎでしょ………。」


沙世はその様子を見て呟く。

皆同じ気持ちである。


「さぁじゃあ次は沙世ちゃんね。」

「うぇぇぇ………ほんとにやるの?」


真をチラリと見る。

普段のテンションなら多分いける。

でもこう改まると恥ずかしさが勝ってしまう。


その様子を見た真は沙世のそばに行き、頭を撫でる。


「いいよ、言わなくても。伝わってるし。」

「……それ、ずるすぎ。」


顔を赤くして沙世は真を見上げた。


「香緒里は?」

「………無理です……。」


断固拒否の香緒里に、秀人は近付き、覗き込む。


「無理?」

「…………無理。」

「じゃあ、そう思ってない?」

「そ……そんなことない………。」


赤くなり、手で顔を覆う香緒里は秀人はちょっと満足そうに、愛しそうに見ながら頭を撫でた。


「なんか空気が甘さで飽和してきたな……」

「ほんとね……」


翔太と雪音が周りの様子を見て言う。


美愛は悠に近付いてみる。

正直、ノリでいけば言えるとは思う。


「悠?」

「なんだよ……。」

「いっぱいいっぱいそうやから、やめとくな?」

「そうしてくれ……。」


「ユミー??」

「直樹くん、近い。」

「オレから代わりに言おうかー?」

「……いいです……。」


隣に座る直樹から由美はちょっと距離を取る。

美少年に接近されるのは少々心臓によくない。


「直樹、由美ちゃんがかわいいからってあんまりからかったらダメだよ?」

「あはは、ごめんごめん〜。」


圭は二人の間に手を出して遮る。

由美はちょっとホッとしたように表情を緩めた。


「翔太、どうする??」

「んー、もったいないから、二人の時に言ってもらおうかな。」

「わかった、じゃあ今度ね。」


「で、奈津、満足したか?」

「うん、みんな仲良さそうで何より。」


それぞれの反応を楽しんでいた様子の奈津を見て、亮は聞く。

奈津はにっこり微笑んだ。


平和な春休みが一番だ。




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