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一期一会  作者: 雪奈
第13章 冬、異国の地で
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1、班分け


11月上旬に緑ヶ丘高校の2年生は修学旅行に行く。

行先はフランス。

初の海外旅行という生徒も多いため、出発2週間前でも皆そわそわしている。

パスポートも手元に届き、じわじわと海外に行くんだという実感が湧いてきている者も多い。



吉崎香緒里たちはいつものように夜、談話室に集まっていた。


「え、なっちゃんたちフランス行ったことあるの!?」


谷中沙世が上原奈津がふと漏らした、「フランス久しぶりだなー」という言葉に反応して聞く。


「何年か前に旅行でね。私と悠と圭はその1回だけだけど、亮は何度か行ってるよ。」

「親父の仕事について行ってるだけだがな。」


奈津が答え、鮎川亮もそれに付け加える。

大企業・鮎川グループの息子たちとその婚約者なら度々海外旅行をしていてもおかしくはない。


「亮はフランス語話せるくらいだもんな〜。」

「は?マジで?」

「俺と悠と奈津はほんとに触りくらいだけど話せるよ。それこそお店で注文するくらいのやつ。」

「いやいやいや。」


鮎川悠と鮎川圭が言い、沢田真と石川翔太が突っ込む。


「お坊ちゃまお嬢様感ある設定やなぁ。」

「設定じゃないんだけどね!?」


渡辺美愛の呟きに今度は圭が突っ込む。


「ちゃんと英才教育受けてるわね………さすがというかなんというか。」

「4人ともすごい人なんだなってこういう時思うよね。」


安西雪音と須賀由美が半笑いで言う。

引かないで!?と圭がまた突っ込んでいる。

悠は学業の成績は下から数えた方が断然早いくらいなのに、英語やフランス語が話せる。

本人曰く、日本語話せるやつが国語得意だと思うな、だが。


「なおちゃんもずっとアメリカ暮らしだから英語話せるんだもんねー。」

「そりゃあもちろん。むしろ英語の方が話しやすいよ〜日本語難しくって。」


沙世にそう言われ、渡辺直樹はそう返す。

とはいえ、帰国して一年以上が経ち、段々と読み書きも上手くなってきている。

話すことは元々割りと流暢に出来てはいたが。


「秀人もそういえば帰国子女だよな。」

「あぁまぁ一応な。小学校低学年の頃まではアメリカいた。海外は、母さんの仕事に連れられて一応フランスもイタリアも行ったことあるけど、それこそ本当に小さい頃だからなー。」


真に言われ、新谷秀人はそう返した。

英語はもちろん話せる。


「そういえば世界的なファッションデザイナーだもんね、美鈴さん。」

「なのになんでそんなに美術が残念なんだよ。」

「ほっとけ。……親父に似たんだよ。」


雪音が思い出して納得する。

秀人の母、美鈴は昔はモデル、今は自身のアパレル会社を経営するファッションデザイナーである。

悠に残念そうな目を向けられ、秀人はボソリと言う。


「秀人なら、フランス語すぐ話せるようになりそうだよね〜。」

「ちょっと話せるぞ。」

「は!?」

「2学期入ったくらいから勉強して、まぁそこそこ分かるようになってきた。」


沙世の軽口に秀人は普通にそう答えた。

新谷秀人の学習能力の高さと記憶力は凄まじい。


「そんな短期間で習得出来るもんなん………?」

「普通は絶対無理。」

「新谷が特殊。」


美愛の当然の疑問に圭と奈津がきっぱり言う。

亮は少し考えた後に秀人の方を見て、恐らくフランス語だろう、何か話し掛けた。

秀人もそれに対して答える。

見ている雪音たちには何を話しているか1ミリも理解出来ないが、しばらく二人は何かを話していた。


「……それだけ話せれば充分だろ。」

「発音とか平気か?」

「問題ない。普通に通じる。」

「なら良かった。」


亮は日本語に戻してそう評価する。

とても2ヶ月程で習得出来るレベルのものではなかった。

改めてこいつ化け物だな、と亮は思う。

亮もあれこれそつ無く出来るタイプだが、それは幼少期からそういう教育を受けて来たからだ。

天才とは違う。


「でもなんでフランス語習得しようと思ったの?」

「現地行った時に便利だろ?」

「いやまぁそうだけどさ。中学の修学旅行の時に香緒里に日程とか全部丸投げだったやつが良くここまでやったなと。」

「あれは国内だからな。」


沙世と真に言われ秀人はケロリと返している。

それを見て雪音と翔太は顔を見合わせる。


「絶対、香緒里のためよねぇ。」

「何かあった時に、てことだろうなぁ。」


二人は秀人に聞こえないくらいのボリュームでそう言いながら、ソファに座る秀人のすぐ傍で丸くなって寝ている香緒里を見る。


香緒里は文化祭後から土日は国体のため外部で練習をし、10月上旬に1週間国体に参加、その後帰ってきてすぐに中間テストを受ける、というなかなかにハードスケジュールを送っていた。

今日、ようやく中間テストを終えたばかりである。

疲れと寝不足が溜まっている。


ようやくテストも終わったし生徒会の仕事を、と思い生徒会室に行くと副会長の小野一輝と書記の河村柚希に「今日は帰れ」と言われ、追い返されてしまった。


夕食後、寝に行った方がいいんじゃないか、と秀人と雪音に言われるも、「みんなといたいから。」と言い、談話室まで来たのだ。

結局、座っているうちに眠くなってしまい、再度秀人に「部屋戻るか?」と聞かれるも首を横に振り、結局そのままそこで眠ってしまった、という次第である。


秀人と反対側に座る雪音は香緒里にブランケットを掛け直す。


「よく寝てるねぇ。」

「よっぽどみんなと……特に秀人と一緒にいたかったのね。」


インターハイで4日間空けただけでも寂しかった様子なので、1週間も空いたらそりゃまぁ寂しいだろうな、と雪音は思う。

帰ってきてから距離が今までよりも近い。

秀人もそれに気付いているが、そのまま甘やかしている状態である。

今も話しながら頭を撫でている。

もう今更誰も突っ込むことはしないが。



「あーそれにしても、やっぱり修学旅行は真と周りたかったなぁ。」


膝に頬杖を付きながら沙世は言う。


「こればっかりはしょうがないよねぇ。基本クラスバラバラだし。」

「美愛と悠くらいよね、一緒なの。」


奈津と雪音はそう言いながら悠と美愛を見る。


「まぁせやなぁ。うちらはここ6人で一緒にやけど、みんなのとこは班どないしてるん?」


各クラス共通して、クラス内で6人ないしは7人で班を組むことになっている。

ここにいるC組は香緒里、沙世、美愛、由美、悠、直樹の計6人で、そのまま班を組んだらしい。


「私たちのとこは私と雪ちゃんと圭と、あとはサッカー部の男子3人よね。」

「そういえば圭も翔太と同じサッカー部だったね、忘れてた。」

「忘れないでくれる沙世ちゃん!?一応俺1年生の時からスタメンなんだけど!?」


翔太曰く、圭は部内で一番上手いらしい。

さすが鮎川三兄弟。


「なるほどな……翔太も顔見知りだから安心だと。」

「うん、そういうこと。」


真の言葉に翔太は頷いた。

下手な男子が雪音や奈津と同じ班になるより、翔太のよく知る友人を同じ班にした方が安心、ということなのだろう。

恐らく亮がそう圭に手回しをしたはずである。


「俺と亮は、一輝と時行と、あと一輝の彼女の藤村さんとその友達2人と一緒だね。」

「トッキーと一緒とか騒がしそうだな。」

「それお前が言うか?」

「あいつよりはうるさくねーよ!」


悠は秀人に言われて否定する。

うるさい自覚は一応あるらしい。


「みんな男女混合班なんだな。うちのクラスだけか、男女別なの。」

「え、そうなの?」


真が皆の話を聞いた後そう言った。

問い返した圭に頷き、真は続ける。


「最初は男女混合の予定だったんだけどな。秀人と同じ班になりたい女子がたくさん出てきてさ………。」

「あーなるほど、香緒里がいるからワンチャンはないけど、修学旅行くらいイケメンと一緒に過ごしたいと。」

「そういうことらしい。んで、収集つかなくなりそうだから、それなら男女別にしようって話になった。」

「私的にはその方が安心でいいけどね!その中にはきっと真狙いの女子もいる、私は知っている。」


A組に真のことを好きだという噂の女子がいることは沙世はばっちり把握しているのだ。

真は苦笑いしながら、「俺は沙世しか見てないからさ。」と頭をぽんと撫でた。

無自覚爆弾を食らった沙世は赤くなって固まった。


「とにかく、面倒がなくて良かったけどな、俺的にも。」


騒ぎの中心にいたであろう秀人はそう言う。


「今回はホテルでフロア移動出来ないから、告白ラッシュもなさそうだしな?」

「あーまぁそれもあるな。」


海外のホテルということで、基本的に自分の部屋のあるフロアから出ないように、と学校から言われている。

男女の部屋は階が違う。


「なんやねん告白ラッシュって?」

「秀人……それに真も、中学の修学旅行の時は相当呼び出されて告白されてたのよね。」


翔太の言ったワードに引っかかった美愛が聞くと、雪音がそう答えた。


「そういえば圭もよく呼び出されてたね。」

「あったな〜今回はないのかなー残念……。」

「あれをよく面倒じゃなく捉えられるな……。」


宿泊先での自由時間がほぼないに等しかった秀人はげんなりしながら言う。


その時、寝ている香緒里がもぞもぞと動き、顔の傍にあった秀人の手を掴んだ。

そしてそのまま自身の頬に当てる。

すやすや寝息を立てているので、起きたわけでは、ない。

あまりのかわいさに、秀人は固まった。


「まぁ、中学の時は付き合ってたわけじゃないし、今はこうだから……自由に出入り出来たとしても、あの時のようにはならないだろうけど。」


翔太はその様子を見て言う。

ここ数ヶ月の二人の様子を見れば付け入る隙がないのは一目瞭然である。

たまに、それでもという猛者はいるだろうが。


沙世と奈津はその様子を見てニマニマしている。

写真は撮るのをやめてあげた。




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