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一期一会  作者: 雪奈
第9章 春霞にほどける
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閑話 君のせい 後編


香緒里が生徒会室で胃を痛めている頃。

談話室には秀人、雪音、沙世、奈津、亮、圭、直樹がいた。

他の面々は部活だったりクラスの用事でいない。

もうすぐ中間テストが始まる時期でもあるので、図書館棟や自室で勉強してる人も多いのだろう、今日の談話室はほとんど人がいなかった。


秀人たちも始めは勉強をしていた。

正しくは秀人が雪音や沙世、直樹に勉強を教えていた。

が、途中で飽きた沙世が、


「気分転換に王様ゲームしよう!!!!」


と言い出した。

そしていそいそとノートを破き、くじ引きを作りだした。


「いいって言ってないんだけどな????」

「いいのいいのーたまにはみんなで遊ぼ〜。」


突っ込んだ秀人も意に返さず、沙世は作業を続ける。


「俺は不参加で。今日中に仕上げる資料がある。」

「ってことだから、亮は不参加にしておいて。」

「はーい。」


王様ゲームってなんなの?と言っている直樹に雪音が説明している。

まだまだ日本の文化には疎い。


「じゃー、王様だーれだ!」

「あ、私だ。」


最初に王様を引いたのは雪音。


「んーーそれじゃあ、1番の人が2番の人の直して欲しいところを言う、で。」


1番が奈津、2番が圭。


「すーぐ女の子に絡むところ直した方がいいと思うなー???」

「仕方ないじゃん!女の子はかわいい!」


キリッといい顔で圭は言う。

言われたとて、治さないといけないわけではない。


その後も2番が3番のいい所を言う、だとか、4番が3番のツッコミたいところを言う、だとか無難なところを指示していく。


「やった!遂に私王様〜!何にしようかな〜。」


ウキウキ沙世が考えていると、翔太が談話室に入ってきた。


「おかえり、無事に本借りられた?」

「うん。あって良かったよ。ところで何やってるの?」

「沙世発案の王様ゲームよ。」


なるほど、と言いながら翔太は雪音の隣の席に腰掛ける。


「翔太もやる??」

「いや、見てるから続きやってていいよ。」


「よーし、決めた。じゃー3番がパートナーの好きなところを言う、で。」

「沙世ちゃん、それ俺や直樹だったらどうする気だったの???違うからいいけど。」

「そしたらまた考える。」


3番は奈津。

隣にはパートナー張本人の亮もいるため言いづらいか、と思いきや、少し考えた後に、


「一番に私のことを考えてるところ、嘘は絶対つかないところ、仕事してる時の真剣な顔、私が泣いたら絶対にそばから離れないところ、とかかなぁ。」

「本人の前で躊躇なく惚気けるね。」

「事実だもん。」


沙世の言葉にもケロッとして返す。

仕事をしている亮の目が、いつもより優しくなったのを翔太は見逃さなかった。


「じゃあ気を取り直してー王様だーれだ!」

「あ、次は私〜。そしたら私も、2番の人がパートナーの好きなところを言う、で。」


当たった奈津は仕返しとばかりに言う。

2番は秀人。


「さぁ秀人、どうぞー?」

「さぁさぁ!」


沙世と圭が悪ノリをしだす。


「……真面目なところ、お人好しのところ、努力家のところ。」


秀人は淡々とそう答えた。

香緒里本人もいないし、濃い惚気が飛び出すのではとヒヤヒヤしていた雪音と翔太は少しホッとする。

だが、沙世は止まらない。


「えー?なっちゃんはもっと具体的に言ってくれたよ〜??香緒里の魅力はそこだけじゃないでしょ〜???」


煽られて、それに乗りたくない気持ちと、乗らないのはなんだか癪だなという気持ちが秀人の中で抗う。

溜息をついた後、続ける。


「人の気持ちに敏感ですぐに気がついて手を差し伸べる優しいところ、人に褒められなれてなくて言われるとちょっと照れるところ、姿勢のいいところ、空手をしてる時の真剣な顔、苦手なことでも頑張ろうとするとこ、」


延々に止まらないのではないかというくらい溢れていく。

あーあーあー……という顔を雪音と翔太はしている。

沙世は、めっちゃ細かく語る…!!地雷踏んだ…!!でもちょっと楽しい…!!と思いながら聞いている。

圭は、やべぇ思った以上に重いぞ…!?と戦々恐々とている。


「えーじゃあかわいいところは?たくさんあるでしょ??」


奈津が更に爆心地を踏み抜いていく。

亮は隣でやや呆れた表情をしていた。


「当たり前だろ。顔から声、仕草、視線、全部かわいいに決まってる。」


照れも迷いもなく今度は言い切る。

そりゃ、それだけかわいく思っているなら独占したくなって当然よねぇ……と雪音は秀人を見て思う。

雪音から見ても最近の秀人に対する香緒里は特にかわいい。


「………秀人、それは香緒里に言えば?」

「………言えねぇよ。」


翔太にそう言われるも、秀人は目を逸らす。

重たくなっている自覚はあるらしい。


「新谷ってさ、こう、香緒里に対してだけちょっとスタンス違うよね。」

「…………香緒里にだけ、余裕ないんだよ。」


奈津の言葉に、秀人はそう漏らす。

沙世は大変楽しそうな顔をしている。


「やっぱりあそこは先に部位破壊した方が良かっただろ。」

「そういうならあんたがハンマー使ってピヨらせればよかったやろ。」

「じゃーお前は代わりに尻尾切れよ???」


やんややんや言いながら悠と美愛が入ってくる。

二人でゲームをしていた様子だ。

最近よく二人で話しているのを見るようになった。


「………なんか、間ぁ悪かったか?」


やって来た美愛は場の微妙な空気を感じて言う。


「いや、むしろグッドタイミングではあるよ。」


圭はちょっと苦笑して言う。


「何してたんだ?」

「王様ゲームだよ。」

「王様ゲームって、あれだっけ、負けたら脱いでくやつ。」

「いやそれは野球拳やろ。王様決めて、何番の人何しろや〜てやつ。」

「あー、1番の人はスクワット10回とかそういうやつか。」

「そうか、そういう平和なやつにしておけば良かった…!!!」


悠の発言を聞いて、圭は衝撃を受けていた。

二人が来てから平和にやるべきだったのだろうか、いやでも秀人の惚気を存分に聞けて面白かったは面白かった。

後で真に報告しよう、と沙世は思った。



------------


王様ゲームをした翌日。

部活を終えた香緒里は奈津と共に更衣室で着替えていた。


「そういえばね、昨日香緒里がいなかった時に王様ゲームしたんだよ〜。」

「そうなの??面白かった?」

「うーん…そうね、楽しかったよ、主に新谷が。」


ニコッと奈津は笑って言う。


「秀人が…??」

「沙世ちゃんが悪ノリでまず私に、亮の好きなところを言ってってなってね〜」


事の顛末を洗いざらい香緒里に話すと、香緒里は顔を赤くした。

照れて恥ずかしがりながら、呟く。


「そっか……そんなに私のこと見ててくれてるんだ……。」


赤くなった頬を手で押えて嬉しそうに言うその顔は奈津から見てもかわいい。

香緒里かわいい!と言ってそのまま抱きしめた。


「えぇ?そう……??」

「ところで、香緒里は新谷のどこが好きなの?」

「えーと、たくさんあるけど……そうだなぁ」



-------------


いつもの様に部活後、香緒里が来るのを雪音と共に待っていると、今日は珍しく奈津と亮も一緒に第2体育館から出てきた。


「新谷、ちょっといい?」


奈津に呼ばれ、秀人はその近くに行く。

香緒里は事前に奈津から聞いていたのであろう、特に何も言わずに雪音の方へ行った。


「珍しいな、何?」

「んーとね、昨日の王様ゲームの時の話、香緒里にしちゃった。ごめんね?」

「なっ、おまっ……え、香緒里に伝えたのか?全部?」

「うん。」


秀人は珍しく狼狽した。

そして奈津はそれを聞いた香緒里の反応を伝える。


「香緒里ね、『そんなに私のこと見ててくれるんだ』って言って喜んでたよ??」

「そう、か………。」


引くでもなく、嬉しそうにしたと聞いて、秀人は一瞬黙った。

しかしそこに奈津の追撃がやってくる。


「でね、香緒里に新谷の好きなところを聞いたらね。いっぱいあるんだけどね、って前置きした後に、『私か困ったり不安になったりした時に、必ず気付いてくれるところ』って言ってたよ。」


香緒里ならきっと大丈夫だよ、と暗に奈津は言っている。

そこまで伝えると、「よし、私の役目は終わったから先戻るね。」と言って、亮と手を繋いでその場からいなくなってしまった。


秀人は待っている香緒里と雪音の元へ行く。


「悪い、雪音。ちょっと……二人きりにしてくれないか?」


それだけで察した雪音は「わかった。」と返事をした。


「翔太に来てもらうから、こっちは心配しないで。ごゆっくり。」


早速取り出したスマホを耳に当てながら雪音は言う。


「香緒里、ちょっとこっち来て。」

「え?うん。」


香緒里の手を取り、今しがた香緒里達が出てきたところである第2体育館に入る。

中にはもう誰もいないことを確認すると、秀人は香緒里を抱き締めた。


「え、しゅ、秀人………??」


当然香緒里は戸惑い照れる。

それでも秀人は香緒里から離れられなかった。

遠慮がちに背中に回されるその手すら、愛しい。


「俺、香緒里が思っているより、香緒里のこと好きだからな……??」


そう、耳元で囁いて伝えるとその耳も赤くなる。

香緒里は自分の胸の音が早くなるのを感じた。


「あの……秀人……?」

「ん……?」


小さく問い掛け顔を上げると、優しい声が視線が返ってくる。

胸の奥がキュッと締まるような感覚がする。


「私……秀人のこと、大好きよ……?」

「……香緒里、今それは反則。」


高鳴る想いを伝えると、代わりにキスが降ってきた。


あぁほんとに香緒里はずるくてかわいい。

心の中で呟いたその言葉は伝えられない。


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