手紙
戦の後始末の音が鳴り響く砦の中、オズワルド帝国第一軍将クリフ・コンフォードは城壁から撤退する敵軍が遠ざかっていく姿を眺めていた。
これでしばらくは平和が続くだろう。
敵対している亜人・魔族の同盟軍は此度の戦で痛手を受けた。軍の再建は数か月では済まないだろう。
砦の中からは悲鳴や絶叫が聞こえ始めてきた。
兵たちが後始末を終え、遊び始めたのだろう。エルフや人に近い種族の女の捕虜も多数いれば、まだまだ血気盛んな捕虜もいるだろう。そいつらの心を挫く遊びに入る時間だ。
これも戦の常ではあるが、度が過ぎれば軍紀が乱れる。早急に士官へ規律を正すように伝えなければならない。
また、帝国軍の損耗は小さなもので済んでいるが、それでも陣容の立て直しや軍の再編成などの仕事が自分には残っている。とはいえ──
クリフは懐から手紙を取り出し、なんども繰り返し見た文面を再び見返す。
『父、倒れる。至急コンフォード領に戻られたし』
10歳で帝国軍に入り、それから18年が経って初めて届いた手紙がこれだ。
やるべき仕事はいくつか残っている。しかし、そのどれもが自分がいなければどうにもならないというものでもない。まずは相談しよう。軍の総司令官、そして他の将軍たちに。
…………この時のクリフの判断は実際のところ、真っ当なものである。だが、現実はそうではなく、この手紙の行方を巡り、帝国全土が混沌の渦に巻き込まれることになるのだった。
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