表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

12.オールホークの町5

 オールホークの中央南側の領主の館の前にラーチェルとサティア、タロスと一緒に来た。

 

 「ここの領主はゼルガル=デュガル侯爵でデュガル王家の血筋ね。もっとも王家の血筋といっても100人以上いるけど。」

 

 量産型勇者か。

 しかし姓は変えないのか。皆デュガルだと人数多くて訳が分からなくなりそうだ。

 

 領主の館の入り口の兵士に声をかけると中に案内された。

 

 部屋に入ると姫さん、ジジイ、鎧の他に2人の男がいた。

 髭を生やし白髪交じりの髪をオールバックにまとめた中年の男性がおそらくここの領主ゼルガル侯爵だろう。

 もう一人は2m近い身長で25歳くらいでガッシリとした体つきをしていた。

 横に黒い刀身の大剣を置いており、こちらが第5王子だろう。

 どちらも勇者適正と自爆を持っていた。

 自爆は勇者のスキルの1つなのかデュガルの勇者の家系の特性なのか気になる。

 

 「おう、お前があの魔物を倒したノワケか!」

 

 部屋に入るなりでかい方が近づいてきて声をかけてきた。

 

 「デュガルの第5王子のトゥール王子じゃ。今回ガブに竜が出た件の責任者としてきておる。」

 「そしてこちらがここの領主のゼルガル侯爵じゃ。今回は王子の配下に入りこの町に来た避難民や住民の対応を行って貰うつもりじゃ」

 とジジイが紹介してくれた。

 「あの魔物は神託で予言されたモノと認められたが、今は竜の対応が先じゃ。竜の件が終わったら王宮まで来てもらう事になるじゃろう。そこで報酬を渡そう。」

 

 あの熊が認められたのはいいけど、結局王宮まで行く羽目になるのか・・・

 

 それを引き継いで王子が

 「でだ。竜の退治に手を貸して欲しい。地竜はこちらの軍でどうにかなるんだが飛竜は軍とは相性が悪い。それで魔法を使える者を中心に部隊を作り飛竜に当てたいんだがそこに加わってもらいたい。」

 

 呼ばれた時点で想像がついたけどヤッパリソウイウハナシデスヨネー。

 

 まぁ空を飛んでいる相手に軍隊が相性が悪いのは分かる。

 でも俺個人だったら空飛ぶだけの火吐くトカゲに苦戦するかね?

 正直自分の強さがイマイチ分かっていないんだが、飛んで数分に1回火を吐く程度なら集光で撃ち落して終わりじゃないのか?

 例えブレスが飛んできたとして瞬間移動で逃げればいいんだし。

 逆に地竜は突進してくるとか言ってたから接近されると面倒そうだ。

 一度見てから対応を決めたいな。

 

 「話を受けるのはいいですが、先にガブの町まで行って竜を見てから決めていいですか?話を聞く限り飛竜が強いとは感じられないので倒せるなら倒してきますよ。」

 

 それを聞いてゼルガル侯爵は

 「弱いと思うのは見てないから言えるのだ。わずか2体で町を破壊する竜が弱いわけなかろう。」

 

 「だから見に行きたいのです。私だけなら瞬間移動で飛んでいけば半日もかからないはず。帰りは転移で戻ってくればいいので今日中には戻って来れますよ。」

 

 話の途中で兵士が入ってきて王子に何か告げていた。

 

 「ガブの町にいた竜が2体とも移動を始めたと連絡が入った。避難民を追ってこちらに向かっている。早ければ明日の昼頃、遅くても夜には着きそうだ。

 ノワケ、さっき言ったのは本当か?飛竜をやれるならやって欲しい。こっちも自分の手勢から余計な犠牲なんて出したくないからな。ただし必ず今日中に帰ってきてくれ。成功したにしろ失敗したにしろ竜の対応の準備があるからな。あとそちらの女性2人は置いていってくれ。」

 

 そのまま逃げる可能性もあるから2人を置いて行ってくれと言うのは仕方ない。

 「分かりました。じゃあガブまで行ってきます。遅くても夜には戻ってきます。行ってくるついでに何か他にやる事はありますか?」

 

 「いやない。余裕があるならガブの町を見てきて欲しいが本当に余裕がある時でいい。」

 

 「ラーチェルとサティアは夜には戻ってくるのでここで待っててくれ。それでは行ってきます。」

 

 俺は領主の館を出た後、東の町の防壁の上に瞬間移動した。

 町の外には避難民の列がずっと続いていた。

 この避難民の流れの通りに瞬間移動していけば間違いなさそうだ。

 

 瞬間移動を繰り返して先に進むと酷い怪我人が増えてきた。

 怪我が酷くて足が進まないんだろう。

 治す手段は持っているが人数が多すぎてどうにもならんし目的は別だ。

 俺は先を急いだ。

 

 

 

 そのまま街道沿いに瞬間移動をしていくと派手な音が聞こえてきた。

 空を見ると飛竜が見える。緑色かと思ったら赤色だった。ワイバーンじゃなく腕と羽根が独立している形状だ。

 街道の先からは音が聞こえる。こっちが地竜か。

 街道から少しはずれ森の中を進むと地竜も遠くに姿が見えた。突進して人を数人跳ね飛ばした後噛み殺していた。

 地竜からは見つからないように奥に進み、飛竜の近くにまで来た。飛竜に攻撃しても地竜からは突進されてもこちらまで届かないだろう。

 鑑定眼で見ると火体制と風耐性を持っていた。光耐性は持っていない。

 空間切断は飛んで移動している相手には難しいが、集光なら焼き切れる火力があれば一発で落とせそうだ。

 

 集光を使用し、手を上にかざす。

 空に光が伸び、光を絞った後に飛竜をなぞると肩から股間まで線が走り竜が2つに切断された。

 空から飛竜が地面に叩きつけられ辺りに振動が伝わった。

 俺は落ちた場所に行き、地面に落ちた飛竜を確認すると既に死んでいるように見えた。念のためにフリーズランスを使って頭を凍らせておく。

 すぐさまアイテムボックスを開いて飛竜を格納する。

 近くで物凄い音がした。

 地竜が気づいてこちらに向かっている。

 近距離戦だと分が悪そうなのでガブ方面に瞬間移動で距離を稼いで転移で逃げる事にした。

 このまま粘っても警戒されて倒すのは難しそうだし森の中だと相手の姿も見えない。

 開けた場所ならやれそうだがこの辺りは森が続いていて土地勘がないので誘導する事もできない。

 

 瞬間移動でガブの町まで来ると町の防壁が薙ぎ倒されているのが見えた。

 町の中も煙が見える。

 まだ残っている町の防壁に瞬間移動で移り町の中を見ると中央部分の建物はほぼ崩壊していた。

 あの突進力がある竜が1日以上暴れていればこうなるか。

 町も確認したので転移で戻る事にした。

 

 

 

 オールホークの町に戻り、領主の館に入った。

 まだ夕方にもなっていない。

 

 「ただいま戻りました。飛竜のほうは倒せました。」

 と伝えると

 

 「ほんとうか?回収できたならすぐに中庭で見せてくれ!」

 と王子が話しかけてきてそのまま外に出て行った。

 

 部屋の中にいた全員が館の中庭に出てアイテムボックスから飛竜を取り出した。

 

 横たわる飛竜を見て

 「真っ二つかよ。とんでもねぇ火力だな。だがこれで後は地竜だけだ。助かったぜ!

 よし!これから予定通り地竜を倒す準備にかかる。東門の前に伝えたとおり準備してくれ。避難民にも伝えろよ!」

 と兵士に伝えた。

 

 そしてジジイが

 「この飛竜はこちらで購入しよう。前の魔物と一緒に王宮で報酬を渡す事になるじゃろう」

 と言うと

 

 「お断りします」

 とラーチェルが割って入った。

 「これはノワケさんが単独で倒した物です。この国の兵士が倒したものじゃありません。竜はただでさえ色々な目的に使えるのに報酬の額も言わずに奪おうとするのは虫が良すぎるでしょう。ましてや兵の犠牲を減らすために動いた相手に対してですよ。」

 

 ラーチェルさん、ラーチェルさん。あなたはなんでこんなに好戦的なのか。

 

 「だがのぉ、竜は貴重でのぉ・・・」

 

 「その貴重な物を問答無用で奪おうとするのが許せないのです。こちらだって使う目的があるのですよ。」

 

 あー、なんとなく怒っている理由が分かった。

 「もしかして薬の材料になる?」

 

 「ステータスアップ系の薬や病気の薬になりますし、エリクサーの材料になるとか言われています。」

 とサティアが答えてくれた。

 

 こりゃ引かないな。

 しかたないので

 「じゃあこの2つに分かれているうち、小さい方をそちらに売却します。大きいほうはこちらで確保します。」

 

 「じゃが・・・」

 

 折衷案を上げたのにそれでも食い下がってくるのか。

 「それ以上言うようでしたら、この間の魔物の報酬もいりません。ただし私達はすぐにこの国から離れます。」

 と言うと

 

 「すみません。こちらはそれで充分ありがたいです。ですから怒りを納めてください。」

 と鎧からフォローが入った。

 

 「分かりました。ではそちらは受け取ってください。」

 と言って大きい方の飛竜の部分はアイテムボックスにしまった。

 

 ジジイが小さい方の飛竜の部分を受け取り先に部屋に戻るのを見た後

 「フォローさせて悪いな。」

 と俺が鎧に声をかけると

 

 「いや、ガブの町が破壊されて金が入り用になっているからフォール老師の気持ちも分かるんだがな。さっきのは食い下がりすぎだと思うよ。」

 と答えた。

 

 部屋に戻った後は挨拶をして宿に戻る事にした。

 明日は東門の所に来て欲しいと鎧から伝えられた。

 

 宿に戻ってミスリルの欠片にアイテムボックス、瞬間移動、ヒール、MP1000の付与を行った。

 ミスリルの欠片の残りもかなり減ったし装備も出来てるかも知れないので明日はドルグ氏の所に寄った後に東門に行こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ