第三十八話 「リアル鬼ごっこ」
俺は学校を出て駅まで歩いていた。
「セイエイ……お前やってくれたな」
「悪かった。ついムカついて喋ってしまった」
「まあ確かに感じは悪かったから気持ちもわかるが……こればっかりは向こうが正しいからな」
「最悪僕の能力でやっちゃえば……」
「俺が捕まるからやめてくれ」
俺は制服を胸の部分を掴んでパタパタしながら道を進んでいた。
よりによって夏休みが早く終わったせいで、生徒たちは真夏の炎天下で登下校する羽目になっていた。
暑い。喉が渇いた。
こんな時にキンキンに冷えたコ〇ラを飲んだらどれだけ最高だろうか。
ひたすら水分を渇望しているといつの間にか家に着いていた。
「セイエイ、エアコンつけといてくれ……俺はシャワー浴びてくる」
喉が渇きすぎてシャワーの水でいいから飲みたい。
完全に砂漠と化した喉にノアの箱舟を沈ませるほどの大洪水を起こしてやりたい。
待ってろ、我が喉よ。
とはいえ、流石にシャワーの水は嫌なので洗面所の水道に飛びついた。
休むことなく水を飲み込んでいく。顔に水がかかるが、そんなの関係無い。
喉が欲する限り飲むのが生物の本能なのだ。
「はぁ……はぁ……」
やっと衝動が収まった時、頭の霧が晴れた。
俺は鏡を見た。
口から唾液とともに水がねっとりと流れ落ちていった。
手に取ったタオルで顔を拭き、セイエイのいる台所に向かった。
「あれ、シャワー浴びるんじゃなかったのか」
「水飲んだらどうでもよくなった」
「そっか、じゃ僕は暇だから寝る」
「おやすみ」
ちょっと涼しくなってきたリビングで俺は明日の時間割を確認していた。
「体育か……参加できんのかな」
翌日__。
俺は着替えて校庭に向かった。
この学校の体育はクラスの数の都合で二クラス同時に行う。
どうやら俺たち六組と見知らぬ顔がほとんどの一組がペアらしい。
「体育やっても大丈夫なの?」
「そこら辺が少し曖昧なんだが……まあ適当にやるつもり」
「何かあったら遠慮なく言ってよ。我慢は禁物だよ」
「ありがと」
すると体育担当の先生が号令をかけた。
「今日は夏休み明け最初の体育だから、体ほぐしも兼ねて鬼ごっこでもしようかと思う」
「おおっ!!」
男子たちが歓声を上げる。それを冷たい目で見る女子たちだった。
「まあケイドロみたいな感じでやろうと思う。鬼は一組全員な」
「は⁉」
一組の連中は勝手に決められてご立腹のようだ。
解散の合図が出ると皆は口々に愚痴を零し始めた。
「無理ゲーだな」
「でも逆に考えてみろよ。あの月海に捕まれば……!」
「お前天才か⁉」
「アハハハハ!!!」
「ワハハハハ!!!」
「月海……?あの三番隊の隊長だったような……」
俺は申奏を見つけて聞いてみた。
「月海ってSランク三番隊の隊長か?」
「そうだよ。だから皆諦めてるの」
「ああ……なるほど。ありがとな」
その後、一組の生徒は牢屋の中に集まり、六組の生徒は各々校庭に散らばった。
「相棒、相棒」
「なんだ?」
「ここだとあれだから靴に移ってもいいか?」
「……ここだと人目があるから少し待て」
俺はセイエイの要望のために校庭の端の方に来た。
服から出てきたセイエイを風が連れ去ろうとしているが、セイエイは無事靴に入り込んだ。
「開始ィ!!!」
セイエイが入り込むと同時にメガホンで合図が出された。
生徒たちは液体のように走り回り始めた。
一つだけ動きが異次元過ぎるヤツがいる。
「月海……やっぱり速いな。動きにも無駄が無い」
「相棒、なんで強者感を出してるんだ」
「……わからない」
六組の生徒はどんどん捕まってしまい、残っていたのは俺だけだった。
「おい、あの女がこっち来るぞ」
「スポーツの鉄則だ。相手が押してきたらこちらも押す」
「それ、鬼ごっこには適用できないよな……?」
俺は月海に向かって走りだした。
「なっ……!」
彼女は一瞬驚いたが、すぐに足を速めた。
「加速……!」
「何……今の……」
彼女は少し引いたような顔で呟いた。
「なんでもいいわ……絶対捕まえるッ!」
彼女は狂ったように俺を捕まえようと近づいた。
だが、加速している俺にはスピードの面で分がある。
いくら三番隊隊長と言っても、簡単には捕まらない……。
「油断したわね」
「な……⁉」
今川よりも圧倒的に速い。
来ると分かっていたのに体が反応できない。
加速を使用しているにもかかわらず動きが全く遅く見えない……!
Sランク三番隊の名は伊達じゃない__そう思った時だった。
「ガオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーン!!!!!!!」
俺と月海は謎の影に覆われた。
加速している世界で俺は地面を見た。
(影じゃない!これは……ヴァリァスだッ!)
そのヴァリァスから生まれた化け物が今俺達の横で武器を翳している。
気づけばヴァリァスが俺の足元まで来ていた。
俺は地面を蹴って、彼女ごとヴァリァスの外にまで移動した。
「ちょっ、放して!」
彼女は必死に抵抗して俺の手から離れた。
「勝手に触らないで。あれぐらいだったら一人で避けられるから」
化け物から逃げた。それが間違い……だったのかもしれない。
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