第一話 「運命の歯車が狂うまで」
学校のチャイムが鳴り、喋っていた生徒たちが各々の席に座った。
俺、神村姜椰はわずかに開いた窓から流れ込む春風に晒されながら頬杖をついていた。担任と思わしき男がドタバタと音を立てて教室に入ってくる。
見るからに筋トレしてそうな、ガタイの良さをしている先生はにこやかに話し始めた。
「皆さん、ご入学おめでとうございます」
俺はその一言に教室の連中がありがとうございます、と義理よりも義理に近いような声で返した。
皆の反応を見た担任はつらつらと生徒としての心得みたいなのを言い始めた。
「今日から皆さんはこの『養成高校』の生徒として一人前の隊員になれるよう、日々精進してほしいと思います」
言うのを忘れていた。今俺がいる場所は「東京都立ヴァリァス特殊部隊養成高等学校」の教室だ。
ここは将来、ヴァリァス特殊部隊に所属するか、それ関係の仕事に就くために国が積極的に支援している学校だ。
ヴァリァス特殊部隊について簡単に説明しよう。長いので「部隊」と省略させてもらうが、まずこの部隊は例の自然災害「ヴァリァス」を消滅させるために存在している組織だ。
例えるなら「消防隊の頻度で出動する自衛隊」と思ってほしい。部隊は全国にあり、総勢三十万人程度で構成されていて、老若男女いるが割合としては男性が多い。
戦闘がメインだが、「ヴァリァス」の正体を研究する機関や連絡塔なども存在しているので戦闘要員はこれより少し少ない。
さて、そんなレールを敷かれた高校へ俺が入学した理由だが、特にこれといったものは無い。
ただの成り行き、俺を嫌った神様の悪戯だ。
俺の人生の分岐点は、妥協した都立高校の合格が発表されてから毎日を不貞腐れながら過ごしていた時のことだった。
「姜椰、学校の下見に行ってきなさいよ」
「……」
この母親の一言が俺の運命を変え、そして最後は人類史に其の名を刻むことになった。
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