エクスパンション
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
「お久しぶりです」
「私はシロウに聞きたい事があるけど、前回は一方的に聞いたから、今回は先にシロウが倒れた後の説明をするわね。何から聞きたい?」
「タケルの事からお願いします」
「彼は助かったわ。表面的には腹部も治っているけど、槍が刺さった時間が長いから、内臓の修復に少し時間がかかるくらいね」
「ここにタケルもいるんですか?」
「ここにはいない、福岡ギルドの医務室にいるでしょうね。もう一つ言うと、彼のパーティは全員無事」
「スタンピードは収まったのでしょうか」
「スタンピードとしては収まったとしか言えないわね。シロウはあの雄叫びを聞く前に倒れたから、聞いてないと思うけど。シロウが倒れた後に、大きな雄叫びがあがったの、それが合図の様にモンスターはダンジョンに引いたわ」
「雄叫びですか?」
「形容しがたいものだったわ、シロウはローマの崩壊って知ってる?」
「ローマがダンジョンに呑まれたって話しですね」
「その原因は公表されてないけど、始まりはスタンピードだった。そして、今回の様に得体の知れない雄叫びが聞こえた後、ダンジョンが膨張する様に一気に拡がったの、ローマでは3回それがあって、完全にダンジョンになってしまった。これはエクスパンションと呼ばれているわ」
「百道のダンジョンもそのエクスパンションをした、、。」
「そうね、普通はダンジョンは少しずつ大きくなるけど、どちらかというと深くなるイメージで、地表の面積はあまり拡がらないの。エクスパンション前の百道のダンジョンはドームの中、つまり球場一個分より小さかったけど、今は半径三キロを越える巨大なダンジョンになっているわ」
「また直ぐにエクスパンションするんでしょうか?」
「わからない。ローマは2回目から3回目までの間は三年だった。ローマ以外にもエクスパンションしたダンジョンはあるんだけど、3回目のエクスパンションをせずに三年を超えたものもある。目安として三年。遅くとも三年で百道のダンジョンを制覇しなければならないわ」
「エクスパンションしたダンジョンの制覇は難しいんですよね、ローマのダンジョンは未だ制覇されてない」
「そう。普通のダンジョンとは全然違う。入っちゃダメよ。もっとも、、攻略者レベル1なのに、ハイオークを倒すシロウは特別なスキルを持っていると思うの」
そこまで言うとシカは目の前でパンと手を合わせた。
「はい、攻守交代。次は私の時間ね。シロウの3年間を話してもらいましょうか?」
ーーーーー
頭が痛い。避難した人の衣食住の支援を始め、拡がったダンジョン周辺の警備。エクスパンション以降、寝る事も出来ない忙しさだ。国内でのエクスパンション例はなく、前例がない事には反応が悪いのがお役所仕事だ。
そもそもギルドは日本政府の一部ではない、国連の機関だ。日本ではダンジョンが公園に多く出来たから、事務方として市や区の緑地公園課がギルドに吸収され、ギルドマスターなどの各役職には実績のある攻略者が選ばれている。
福岡ギルドには三人の攻略者がいる、ギルドマスターのジル、副ギルドマスターのトクマ、情報管理官のレイ。
「こんな時にあいつは何してんだよ」
トクマには珍しく声を荒げた。
「あいつってマスターですよね。マスターって呼ばないと怒られますよ」
レイがエナジードリンクをトクマに差し出す。
「東京ギルド本部から連絡が来ました、攻略者と事務方の応援を向かわせると」
「有難い。攻略者に有名どころはいるのか?」
「います。パーティ名で言うと火炎に青碧などの日本のトップランカー達が来ます。それとは別にシカが福岡にいます。多分、、」
「シカ、甘利シカが福岡にいるのか?」
ちょっと待って下さいとレイが会話を止め、横を向いて耳のイヤホンで話し出す。直ぐに会話は終わった様で、再びトクマに向き直る。
「訂正します。甘利シカは福岡に絶対にいます。そして今、ギルドの一階に現れました」
読んで頂きありがとうございます。
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