ジュドとガット
宜しくお願いします。
「ギャラリーが多いな。ヒロキは緊張するタイプか?」
「本当は緊張するタイプなんですけど、言ってられない感じです」
「まあ1回戦に続いて2回戦も1人でやっちまったんだ。会場も一つになったし、俺達の時も盛り上がるだろうな、まあ次に来るこいつら程でないだろうがね」
そう言いリョウさんが入場口を見つめた。
いつもは両チームが揃って入場するが、今は闘技場に対戦相手の1チームしか出ていない。現れるチームを予想する観客席のざわめきが収まった時、チーム紹介が始まった。
「Aブロックのシードチームを紹介します。ジュドとリンリン、ニックスのパーティ」
紹介とともに現れたチームに大きな歓声が上がる。
「チヒロはジュドの戦いを見ておけよ。似てるところがある。まぁ本気でやるかは対戦相手次第だがな」
「ジュドさんのスキルを知ってるんですか?」
「スキル名は知らないが、ジュドの戦う姿を見た事がある。不思議な戦いだったな。遠目から見れば普通に動いている様に見えるが、モンスターにはジュドが見えていなかったと思う。おそらくステルス効果のあるスキルか相手を幻惑するスキル持ちだ」
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始めの合図にジュドさんが前に出る。最初に大きく右に動いた以外は普通に歩いて相手に近寄っていくが、先程リョウさんがチヒロに言っていたように、相手にはジュドさんが見えていないのかもしれない。キョロキョロと首を動かすばかりで近寄るジュドさんに反応できていない。
リョウさんがそのまま1人を剣で攻撃すると、異変に気がついた相手が広範囲の風魔法を使った。しかしリョウさんは先程と変わらずに普通に歩いてる。
「魔法への対抗スキル」
チヒロが声を上げた。
「そうだな。まさか放たれた魔法までジュドのスキルに惑わされてるとは考えられない。魔法を無効化した」
リュウさんが闘技場を見つめたまま答える。
「何でジュドさんは歩くのかな、何かしらしていると相手にはバレてるんだから、私なら走って詰める。相手が何かする時間を無くさないと」
「チヒロ。俺も同じ事を考えていた。歩くには理由がある。走るとスキル効果が減るとか、効果自体がなくなるとかな」
ヒロキは自分だったらどうするかを考える。完全無欠のスキルはあるだろう。しかし、ジュドさんのスキルがそうであればジュドさんはパーティランキング3位に甘んじているはずはない。何かしらの理由がある。単に効かないモンスターがいるという理由かも知れないが。
結局ジュドさんは歩いたまま2人目と3人目をそのまま倒してしまった。
「ジュドも暑苦しいやつだ」
「暑苦しい? 涼しい顔で倒し回ってたと思いますが」
「違えよ、前にエルザやガットとかそれこそジュドもガネーシャもいたがな、後輩達を育てるためにもスキルを公開しようとか話し合った事がある。その時は機会があったらやろうって話してたんだよ。俺達の敵はダンジョンだ!みたいな暑苦しい話さ」
「だからジュドさんは自分のスキルを惜しまずに使ってるって事ですか?」
「そうだろうな。これは面倒だぞ」
「リョウさんもやらなくちゃですね」
「それもある。それもあるが、今から出てくるガット達も全力でくるだろうし、3回戦のガネーシャもそうするだろう」
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「Bブロックのシードチームを紹介します。私達のランキングリーダーである彼らにやぼな説明は不要。多くを語らない男ゲイツとに誰でも優しい男ランド、そして率いるは熱い拳を持つ男ガット。アカデミー最強の男達の登場だ」
テンションの上がった解説が場内に響きわたる中、3人の男達がゆっくりと姿を現すとガットが闘技場の中央まで進み、マイクを要求した。放送先から差し出されたマイクを持つと対戦相手に待たせてスマンと声をかけてから話だした。
「俺は、いや、俺達はこの対抗戦で出し惜しみはしない。全力でやらせてもらう。当たり前の事だが、わざわざこんな事を言わねばならんのはな、これを忘れてそうな奴がいると思ってな。俺達は強いぞ。倒せるものなら倒してみろ!」
盛り上がる会場。そして場所によっては怒号か上がる。ここにいるのは各国のエリート達だ。不遜な発言に燃え上がる者もいる。
ガットはその観客席の反応を満足そうに見ると、ヒロキ達の方、いやリョウさんで視線を一瞬止めた。
「俺は片腕ないってのにな、勝手に言ってろ! ありがたい事に全力でやるらしいからな、ガットはヒロキと同じで拳で戦う、ジュドの時のチヒロと同じで、見とけよと言いたいが、あいつはジュド程賢くないからな」
「始め」
ついに開始の声がかかる。
格上に時間をかけるべきではない。最初から最大の一撃で臨むべきだとアカデミーでは教える。ダンジョンではそれで駄目なら逃げれば良いのだ。その教えに倣い、無造作に前にいるガットに殺到する3人。
「フルバーニング!」
3人の雄叫びに勝るガットの声が響き渡り、闘技場に大きな爆発が起こると、挑みかかった3人が場外に吹き飛んだ。
「ほらな、あの脳筋は見せるって事がわからねー」
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