ヒロキとチヒロ
ここからは新しい展開です。
念願のアカデミー。ダンジョン攻略者を志す者であれば、誰もが夢見る場所。ヒロキは貴重なトリプルスキルを保持し、ダンジョン高校を次席で卒業し推薦されて入学した。
日本のダンジョン校では初の1年に2人のアカデミー入学。主席こそチヒロに譲ったが、ヒロキのアカデミー入学経緯は、ダン校入学前にダンジョン制覇し、在籍時にも2つ制覇するなど期待の新星として常に注目される存在であったのに加え、在校時に初めて開催されたヨーロッパの学校との対抗戦での活躍が評価されて事だと説明された。
日本のアカデミー入学者数は多くない。毎年2、3名と送り込む国があるのだ。ヒロキのアカデミーでの成績が後進に与える影響は測り知れないと言われた事もあり、ヒロキは入学当初から緊張した毎日を過ごしていた。
「私は、ダン校にいく前の攻略者のヒロキが良いと思う」
チヒロは気軽にそう言う。チヒロには幼い頃から何をしても敵わなかったと思う。たった何分いや何秒かもしれないが先に産まれた双子の姉。こんな事を言われても腹が立たなくなったのは、ダン校の教官から「あんな天才もいる。ヒロキもスキルに恵まれたが、ヒロキの才能は努力できる事だ」と言われてからだ。
チヒロと一緒くたに見られる事が多いヒロキをちゃんと見てくれる人もいる。ヒロキはチヒロとは違う人間で、チヒロとは違う価値があると認めてもらう事に飢えていた。だから、2人目の入学者であるヒロキだからこそ出来るアカデミーでの活躍に使命感を感じていた。
アカデミーで半年経った頃、声をかけられた。
「ヒロキってんだろ。話があるからこっちに来いよ」
黒髪に隻腕の男。
「リョウさんですか?」
「何だよ、俺の事をしってるのか? 会った事は無いと思うんだがな、無駄にアカデミーに長くいるとこういうのがあるから嫌なんだよ」
「リョウさんはアカデミーに限らず、日本でも有名ですよ。姫路城ダンジョンの制覇者なんですから」
「俺は途中リタイヤなんだけどな、まあそんな事はおいおい話すとしても、俺は半分攻略者は引退していてな、理由は見ての通りだが、変に日本とアカデミーとの繋ぎ役みたいな役回りに収まっちまってる」
「そうなんですね、エルザさんやロイさんとパーティを組んで、ランキングのトップグループにいるって聞いてましたが」
「あいつらがパーティから外さないだけさ。話の本題だが、今度アカデミー内でも対抗戦みたいなのが開かれる。ヒロキがダン校でやったあんなやつだ、最もパーティでの参加も可能だから国別って程ではないがな。というわけでヒロキは日本代表チームだ」
「急な話で驚いていますが、俺で良いんでしょうか? 他にも日本人の在学生はいると思いますが」
「俺はこういう話は上手くねえから、そのまま言うがな、ヒロキの参加は日本のダン校からの依頼だ」
「わかりました。他のメンバーはどんなかたなのでしょうか?」
「素直だな。他のメンバーはチヒロってやつだ。俺は知らんがヒロキはよく知ってるだろ? ヒロキの姉って書いてあった。明日一緒にパーティルームにきてくれ、エルザパーティの部屋だ」
ーーーーー
「日本代表?」
怪訝な声。外ではクールビューティー、ヒロキといる時には感情の赴くまま。ヒロキしか知らないチヒロがいる事は、何かしらの救いになっている。
「リョウさんって知ってるだろ? おのエルザさんのパーティの日本人で姫路城を制覇したメンバーの。今度アカデミーでも対抗戦みたいなのが開かれるから、一緒に参加しろって、その人に誘われたんだ」
「リョウさんかあ、私の憧れは黒姫様のみだからね。姫路城制覇の他のメンバーはいまいちわからないんだよね。もしかしたら黒姫様も出るかな、その対抗戦。あっ、でも私達が日本代表とかになるくらいだから出ないのかな」
「パーティメンバーでの参加も出来るから、3人いれば出れると思うけど」
「黒姫様のパーティは3人って聞くけど、1人は見た事ないのよ。いつも黒姫様とファフちゃんしか見ないからなー、何とか参加してくれないかなー」
「なに?ヨウコさん達と戦いたいの」
「戦いたい」
「チヒロが勝っちゃうかも」
「もし、私が勝ってもね。私は黒姫様に憧れ続けると思うの。だからね、戦って勝って、黒姫様に私を知って欲しい」
「参加は決まりだ」
「決まりね!」
ーーーーーー
「チヒロ、お前強いな」
リョウさんはチヒロに軽い挨拶をすると、チヒロを見て言った。
「同じチームになるんだ、俺のスキルを言っておくと『鑑推』『槍鉄士』『槍術C』『土魔法B』だ。『鑑推』でなスキルを何個持ってるか、そのスキルがどのくらいなのかがある程度わかる」
「リョウさん、私は黒姫様と戦えますか?」
「何だよ、チヒロはヨウコと戦いたいのか?」
「はい、私の憧れなんです」
「憧れるから勝ちたいそんなのもあるのか? ヨウコか、、どうだろうな。不思議とあいつらには俺のスキルは役に立たないからな、たまに見ると違う光を持ってるからな」
「光ですか?」
「そうだよ、『鑑推』で見れば、スキルが光って見えるのさ。例えばヒロキは3つとかな。光の強弱でレベルがわかるはずなんだがな、おっとこれ以上はヨウコ達に悪いな。今の話はここだけにしてくれ」
ヒロキは内心でビックリしていた。チヒロが初対面の人にこうやってドンドン話しかけるのは見た事がない。リョウさんのもつ安心する雰囲気なのか、それともヨウコさんへの憧れパワーがそうさせるのか、、。
リョウさんがヒロキとチヒロに紙を渡した。
「対抗戦の要項だ。見ておいてくれ。3対3で戦う。もちろんスキルは使用OKだけどな、ランキングトップの連中なんかはスキルを知られたくないってやつもいるが、今回は出てくるだろうな」
「黒姫様は出てくるかな」
「俺はヨウコ達とは戦いたくないからな、出てほしくない。でもな、あいつが戻ってくるなら出るかもな、結果をパーティランキングに反映させるって書いてあるから」
「リョウさんの言うあいつってのは、黒姫様パーティの3人目ですか?」
「そうだよ。姫路城ダンジョンで俺はそいつに大きな借りがあるんだ」
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