剣鬼
宜しくお願いします。以前書いていた話ですが、前の作者ページにログイン出来なくなってしまったので、推敲しながら再投稿。話が変わった部分もあります。
宜しくお願いします。
やばい。その予感は当たる、その予感だけは昔から当たる。あいつが死んだ時もそうだった。あの時は届かなかったが今は届く、届くはずだ。リョウがエルザの前に出た。
「土葬」
アラクネが強い光を放った。
瞼の上に水滴が当たる。
「死なせない!絶対に死なせない」
繰り返されるカスミの声、あの時もそう言っていたなと思い出しながら重い瞼を開ける。
「リョウ、あんたが死んだら化けて出てやるからっ」
「アホか、死んだら化けるのは俺だろ」
カスミの泣き顔が見える。カスミの目から涙がこぼれ落ちてリョウの顔に当たっている。
「リョウ!」
エルザの声、エルザは大丈夫な様だ。アラクネが自爆する前に、アラクネを土魔法で包んだ。本来はそのまま圧死させる魔法なのだが、上手く衝撃を和らげる事が出来たのだろう。
左半身の感覚がない。大きな怪我を負っているのかもしれないが、リョウは不思議な充足感に包まれていた。
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アラクネの爆発はリョウさんが抑えた。『心眼』でシロウにははっきりと見えた。アラクネを包んだ魔法やエルザさんを庇おうと身を乗り出したリョウさん。
リョウさんは少し話すと意識を失った様だ。ひどい怪我を負っている。特に左手はひどい怪我で、カスミさんが泣きながら回復を続けている。
ファフも爆発に巻き込まれている。ドラゴンの姿のままで目を開けないが、大きな外傷はなく大丈夫そうだ。エルザさんもリョウさんを気遣ってるが、爆発に巻き込まれ怪我を負っている。
「シロウ、リョウの治療を優先する。撤退だ」
いつにない切迫したエルザさんの声に来た道を振り返ると、大きな音を立てて道が崩れた。逃がさないと言われているかの様だ。
「ヨウコ、先に進もう、急いで制覇するんだ。エルザさん、カスミさん、リョウさんとファフをお願いします」
「だめだ、ならば私が行く」
「エルザさん、今のあなたでは足手まといです」
ヨウコの物言いにシロウは驚いたが、ヨウコは敢えて強い言葉を発しているのだ、言い合う時間が惜しい。
「必ず、制覇します」
シロウはヨウコと奥の階段に向かって駆け出した。
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アラクネが自爆した。固有スキルの『麻痺眼』や『自爆』に加えて、『魔破』で魔法による遠距離攻撃を防ぐ事が出来るアラクネは自信作だったのだ。遠距離の魔法を防がれるし、近接戦闘では相手の目を見れない。悔しいという思いはある。しかし、ダンジョンNo.881の頭にあるのは悔しさよりも目の前のモンスターが戦うことへの興奮だ。
このまま返すわけにはいかない。ここまで来たのであれば、最後の一体である剣鬼と戦ってもらわねば困る。剣鬼という種族はなく、ユニークモンスターだ。
固有スキル『剣鬼』に加えて『絶斬』『身体強化A』『幻舞』と上級スキルを四つ持っている。
剣鬼は気配を察しているのだろうか、普段は部屋の中央で座禅を組んだまま動かないのに、立ち上がり鞘から剣を抜いた。
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「ヨウコ敵が見えたら『熱烈支援』を、そして出来る限り離れていてほしい」
階段を上がると直ぐにシロウが言った。シロウは何かを感じている様でドアの先を見据えたままだ。私も戦うと言うのが躊躇われた。
ドアが開くと、金色に光るコアが見える。その前に剣を構えた人型の何かがいる。
「ヨウコ」
「熱烈支援」
シロウの言葉に直ぐ『熱烈支援』を発動した。『剣聖』を持つシロウの強さは攻略者の中でもトップクラスのはずだ。しかしヨウコの眼前の敵もかなり強い圧力を放っている。
「行くよ、負ける様な事があったら階下に逃げて、エルザさんと合流するんだ」
「嫌よ! だから勝って!」
思わず言ってしまった。自分を可愛い性格だとか思った事はない。
シロウはヨウコに笑顔を向けると、剣を構えて敵の前に立った。
動かない、いや動けないのかも知れない。敵もシロウも構えたまま膠着した。シロウの剣がゆっくりと上段に上がる、ハイオークとの戦いでも見た。あの構えからの一閃でシロウは勝った。
シロウが上段に構えたと同時に2人が交錯した。シロウは剣を振り下ろした形。敵は横薙ぎに剣を振り抜いた形。時が止まった様にどちらも動かない。少しの間があり敵が膝をつく。袈裟懸けに血が吹き出している。ヨウコは歓喜に包まれたが、敵が膝をついた後ろで、シロウが横腹から血を噴き出し倒れた。
読んで頂きありがとうございます。
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