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嘘つき英雄と嘘の妹 ~リメイク版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
70/70

#69 弟


~ウルド:アステリオン:マカ村~



「うぁっはっはっはっはっは!! 踊れ踊れぇッ!!」

「ヤァァァッ!!」

「ホッホォォォッ!!」



 夜の星空の下、村の中心に大きなキャンプファイヤーを上げながら盛大な宴が開かれていた。

 どうやらこの村では・・・いや、この国では戦士が生まれると宴を開くようだ。



「おらお前も飲め飲めぇ!!」

「おい何杯目だよ!」

 俺はと言うと、大きな焚火の炎を囲って楽しく踊っている獣人連中を前にゾルガに肩を回されながら酒を飲まされていた。

 しかも結構度の強い酒だ。

 もう既に頭がクラクラしてきてる。

「おぉ、お前、ウルドっつったか?」

「お、おう、そうだけど?」



「今度また()ろうや!!」



「は?」

 何を言い出すんだ?

「えぇと・・・何を?」

「決まってんだろ!! 『殴り合い』だよ!!」

「はぁ!?」

 いや、マジで何言ってんだこのおっさん!!

「あんな不意打ちで勝ったんじゃ俺だって消化不良だ!!」

「・・・はぁ。」

 呆れてため息が出る。

「獣人ってのはとことん戦うのが好きなんだな。」

「ったりめぇだろ!! 魔物と戦えば肉が食える!! 人と戦えば自分がどれだけ強いか分かる!! 何度も戦えば強くなれる!! こんなに楽しい事ぁねぇだろ!!」

「はぁ、単純っつうか、悩みが無さそうで羨ましいな。」

「そうか? 羨ましいか!! じゃあお前もそうなれば良いじゃねぇか!! なりたいモンがあるなら努力してなろうとすりゃいい!! 簡単じゃねぇか!!」

「簡単に言うなぁ・・・。」

 呆れて笑いながら・・・。

「・・・。」

 思い出すことがあった―――



―――子供の時の話だ。



「ぐぁッ!!」



 俺は後ろ向きに吹き飛び、無様に地面に転がる。

「くそッ!!」

 すぐに上半身を起き上がらせ、眼前を睨む。

 目の前には・・・。 

 


「ギギィ・・・!」

 ゴブリンが居た。

 数は六匹くらいか。



「ギギャァッ!!」

「うわぁぁッ!!」

 ゴブリンたちは持っていた棍棒で一斉に殴りかかってきた!!

「がぁッ!! ぐッ!!」

 背を丸め、膝を折りたたみ、腕で頭を押さえて防御しながらも頭を殴られ、背中を殴られ、腕を、肘を、膝を、横腹を殴られ、反撃もできずに耐えることしかできなかった。

「ぐッ・・・うぅッ・・・!」

 痛みを感じるほどに分かった。

 自分の命、人生、全ての終わり・・・。

 それを全て表す『死』と言うもの。

 それが間近に迫ってるのが分かって全身が冷たくなり、体の中の全ての物が絞め付けられたかのように縮んだのが分かった。

 だが・・・。



「くそッ!! うわあああぁぁぁッ!!!」

 俺は持っていたちょっと太めの木の枝の棒で必死にゴブリン達を追い払った!



「ギギィッ!?」

「くッ・・・!」

 ゴブリン達が怯んだ隙に走って逃げた!

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 ゴブリン達が追いかけて来る中、必死に逃げる。

「・・・ッ。」

 走りながら歯を噛み締める。

「くそッ・・・!」

 思わず言葉が漏れる。



「くそおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!!!」

 走りながら絶叫した!



 悔しかったからだ。

 さっきゴブリンに襲われてたのだって俺が山の中に迷い込んだからじゃない。



 ()()()()()()()()()()()からだ。



 目的は魔物を殺すためだ。

 一匹でも多く魔物を殺すために山に入った。

 理由はただ一つ。

『強くなりたかった』。

 ただそれだけ。



「ハァ・・・ハァ・・・!」

 ゴブリンが追って来ないのを確認して息を切らす。



ーーー我は地の底より蘇りし存在、也。

ーーー我は世界を魔として統べる者、也。

ーーー我は『魔王』、也。



 あの日聞こえた言葉を思い出す。

「魔王・・・。」

 それがどんな存在かは知らない。

 だが、あの霧の魔物達が現れた原因は間違いなくその『魔王』だ。

 だから分かる。



『魔王』が俺から父さん、母さんを奪ったんだ。



「ッ・・・!」

 背中からメラメラと炎が上がるような感覚があった。

 炎ではなく、何かドス黒い物が熱く、熱気を帯びて湯気のように上がっていくのが分かった。

 魔王を殺したい。

 他の誰でもない俺自身の手で、魔王を・・・!

 その為に一日でも、一時間でも、一秒でも早く強くなりたかった。


 その結果―――


―――数週間後。

 

「・・・。」

 俺は草むらに隠れていた。

 決して動かず息を潜め、()()()

「・・・!」

 俺は目を見開く。

 来た!!

「ギギィ・・・!」

 ゴブリンだ!

 数は八匹。

 あの時の数以上だ!

「ギィ?」

 ゴブリンが小さな岩の上で何かを見つけた。

 それは日の光を反射させて光る小さなものだった。

「ギギャ!!」

「ギェ?」

 見つけたゴブリンが仲間を呼び寄せ、光る何かを指さしながら何かを話している。

 そしてその何かに向かって歩いていく。

「・・・!」

 興奮を抑えてただ俺はそれを見続ける。

 待て・・・!

 待て・・・!!

 一番いいタイミングまで待てッ!!

「ギィッ!!」

 ゴブリンは光る何かを拾う。

 それは銅貨だった。

 それを確認するように眺めるとゴブリンはしてやったりな顔で笑う!

 まだだ・・・!

 まだ待て・・・!

「ギィッ!! ギギャッ!!」

 銅貨を拾ったゴブリンは周りの仲間を呼び集める!

「ギィ?」

 呼ばれたゴブリンたちが訝し気な顔をしてゾロゾロ集まる。

 まだだ!!

「ギギャ!! ゲギャギャ!!」

 ゴブリンが拾った銅貨を自慢するように掲げると、仲間たちも見上げるようにそれを見た。

「ッ!!!」

『今』だッ!!!!



「ギェッ!!!?」

 突然ゴブリンの周りの地面の葉っぱが巻き上げられたかと思うと、蔦が現れ、輪のように囲った蔦はゴブリン達の足元目掛けて物凄い勢いで迫った!!




「「「「ギギャァッ!!!」」」」 

 蔦が足に絡まったゴブリンたちは一点に集まるようにかき集められながら盛大に転ぶ!!



「うおおおおおぉぉぉッ!!!!」

 すぐさま俺は物陰から飛び出して雄たけびを上げながら走る!!



「ッ!! このッ!!!」

 転んだゴブリンの一体が手放していた棍棒を拾ってゴブリンの脳天に振り下ろす!!

「ギャァッ!!」

「グェッ!!」

 二体のゴブリンに二発、三発と叩き込むとどっちも白目を向いて動かなくなった!!

「ギギャッ!!」

「グェァッ!!」

 転んだゴブリンたちが起き上がって俺に構えた!

 完全に臨戦態勢だ!!

 だが・・・。

「・・・。」

 俺は倒したゴブリンの一匹の首を掴んで持ち上げると、そいつを盾のように構えて棍棒を持ちながら構える!

「ギギァッ!!」

 ナイフを持ったゴブリンが飛びかかる!!

「ッ!!」

 俺は直ぐ様盾にしたゴブリンを囮にナイフを刺させる!

 そして・・・!

「このッ!!」

「ギャァッ!!」

 棍棒を投げつけてゴブリンの顔面に命中させる!!

「ギャアッ!!」

「ッ!」

 ゴブリンが怯んだ隙にゴブリンの手を掴んで無理矢理ナイフから引き剥がしてナイフを奪う!!

「うああぁッ!!」

 奪ったナイフをゴブリンの顔面に突き刺すッ!!

「ギ・・・ガ・・・!」

 ゴブリンは倒れるが・・・。



「ッ!!?」

 側頭部に鈍い痛みが走る!!



「ギィ・・・!」

「!」

 棍棒で殴ったゴブリンが笑っていた。

 ヤバい・・・!

 頭が真っ白になる!

 気を失う!

 そしたら・・・その間に殴られまくって・・・。



『死』・・・!

 


 だが・・・。



『アルト。』

『アルト・・・!』

 必死な父さんの笑顔と・・・辛そうな母さんの泣き顔・・・!



「くッそがぁぁぁぁッ!!!」

 怒りで吠えた時には既に殴ったゴブリンの脳天にナイフをぶっ刺していた!!



「笑ってんじゃねぇッ!! 楽しんでんじゃねぇッ!! 調子に乗ってんじゃねぇぇぇぇぇッ!!!!」

「ギギャッ!! グギャッ!!! ギャアアァァッ!!!!」

 怒りに任せてゴブリンの悲鳴なんてお構いなしにゴブリンをめった刺しにする!!

 


「ハァ・・・ハァ・・・!」

 ゴブリンが声すら上げられなくなって気づいた!

「?」

 なんでだ?

 ゴブリンが襲ってこなかった?

 めった刺しにしてる間にいくらでも襲い掛かれたハズなのにどうして・・・?



「ギィ・・・!」

「ギヒィ・・・!」

「!」

 ゴブリンたちは顔を歪ませて固まっていた!



 まさか・・・!

「ビビっ・・・てる・・・?」

「ギ、ギギャァァァ!!」

「!!」

 一匹が棍棒を振り上げて襲い掛かってくる!

 だが・・・。

「ギィ!! ギャァッ!!」

 すごい必死に振っているが、なんか・・・弱い?

「・・・。」

 あっさり躱しながらゴブリンを観察する。

 腕だけで振ってる・・・っていうのか?

 腰が入ってない?

 ビビってるから?

「・・・!」

 すぐにピンときた!



 敵は、ビビらせたら弱くなる!!

 


「・・・へ。」

 だったら・・・。



「へ・・・ひひ、ぎひひひひひ!!!!」

 俺は笑った。

 自分の思いつく限りの気持ち悪い笑みで!!



 なんとなくだった。

 なんとなくこれが一番こいつらをビビらせられると思ったからだ!!

 すると・・・。

「ギィ・・・!」

 ゴブリンの一匹を見て分かった!

 目に見えて顔が真っ青だった!!

『これだ!!』と思った瞬間だった!!



「はははははははは!!!!!」

 俺は笑ったままゴブリンたちに襲い掛かった!!



 それから戦いの終わりまで数分と掛からなかった。



「はは・・・はははは・・・!」

 必死に作った笑みも疲れ切った頃、ゴブリンたちは血まみれで地面に横たわっていた。



「は・・・はは・・・!」

 もう戦いが終わったのに作り笑いがやめられなかった。

 どうやって戻せばいいんだ・・・戻らない!



「おーい、そこに誰かいるのか?」

「は?」

 ガサガサと木々をかき分ける音と共に誰かが来た。



「え・・・?」

 その音の主は革の鎧に剣を腰に差した男だった。

「はは・・・ああ、冒険者さん・・・? はは、は・・・。」

 笑顔が取れないまま冒険者の人に声をかける。

 だが・・・。

「ひ・・・!」

 冒険者さんは声を上げて顔を歪めた!

 すぐに分かった。



「はは、ははは・・・!」

 血まみれのゴブリンたちの中で俺が笑っていたからだ。



「ば、化け物・・・!」

「え・・・?」



「ヒィィィィィッ!!!!」

 冒険者さんは悲鳴を上げて逃げて行った!!



「はは、ははは・・・。」

 静かになった森の中、俺の笑い声だけがこの場に残った・・・。



「アルト・・・!」

「はは・・・?」

 後ろから声がしてそっちを見ると金色の髪の女の子がいた。

 俺を村から助けてくれた、騎士と一緒にいた奴だ。



「・・・セレス?」

 そいつの名前を呼ぶ。

 あの旅で一緒に行動したからすでにお互いの名前は知っていた。



「・・・。」

 セレスは俺の顔を見るなり、顔を歪めていた。

 結構前から状況見てる顔だってすぐ分かった。

「はは・・・。」

 さっきの冒険者さんみたいに、セレスも逃げるかな?

 そしたら俺は・・・。

「ッ!」

 セレスは急に走り出して・・・。



「ッ!!!」

「!?」

 勢いよく俺に抱き着いた!

 そして・・・。



「う・・・うぅ・・・!」

 セレスは泣いていた。

「はは・・・ははは・・・。」

 それでも俺は笑っていた。

・・・それが物凄く虚しかった―――



―――「・・・。」


「? どうした?」

 ゾルガがきょとんとした顔で俺を見ていた。

「あ、ああちょっと・・・。」

 ふと昔のことを思い出したことを言おうとしたが・・・。

「・・・なんでもねぇよ。」

 すぐに誤魔化した。

 言えねぇよ、こんな状況で・・・。



『『強くなりたい』と思って強くなっても、幸せとは限らねぇ』・・・とかさ。



「・・・うーん。」

「? どうした?」

 妙な様子のゾルガについ声を掛ける。

 なんだ?

 急に考え込むように唸って。

「お前に『悩み』って言われて考えたんだけどよ。」

「え?」



「俺に悩みがあるとすりゃ、『グラに悩みがある』ってとこだな。」



「グラに、悩み?」

「ああ。」

「何に悩んでるとかは分かるのか?」

「ああ、それも分かる。あいつは言わねぇけどな。」

「え?」

 なんだ?

 聞いた感じ、事情が複雑そうだ。

「あいつには弟分が居たんだ。」

「弟分?」

「ああ、村の風習でな、子供は一人前の戦士になる誓いとして十歳になると『灯火の儀』で『灯』と『種火』の相手を作る決まりがあるんだ。まぁ、お前らに分かりやすく言やぁ、『兄弟分』を作る儀式みたいなもんだ。」

「『兄弟分』・・・。」

「『種火』、弟分になったそいつは村のガキ共の中で一番弱かった。けどグラは何故かそいつを『種火』に選んだんだ。」

「弱かったのに?」

「ああ、普通はどいつも強い奴を選ぶ。大人になったら背中を預ける相手でもあるからな。」

「じゃあなんで?」

「そいつが小さい時から弱いせいで村のガキどもに虐められててな、グラはそいつをいつも守ってた。」

「・・・!」

 意外だ。

 あんなにガサツで乱暴者の獣女がそういうことしてたってのは・・・。

「面倒見が良いんだな。あいつ・・・。」

「・・・ああ。」

「?」

 ゾルガが何故か盃に視線を落として表情を消す。

 何か良くない事でも思い出してんのか?

 一体・・・あれ?

「待て、さっきあんた、『居た』って言ったよな?」

「ああ。」

「もしかして

「死んじゃいねぇよ。」

「あ・・・。」

 違うんだ。

「え? じゃあ・・・。」



「生きてるかどうか、分からねぇんだ。」



「え?」

 ますます分からん。

「え、待て、『居た』って?」

「ああ、死んだわけじゃねぇ。ただ、此処には居ねぇ。」

「・・・『生きてるかどうか分からない』・・・ってことか?」

「あぁ。」

「・・・? 事情が分からん、一から説明してくれ。」

「・・・。」

 俺が説明を求めるとゾルガは目を細める。

「・・・話す前にまずお前、このアステリオンがどういう状況かどれぐらいまで知ってる?」

「?」

「話してみろ。」

「あ、ああ・・・。」

 ゾルガに聞かれて知ってる限り答える。



 アステリオンはロキウスに侵略されてて、そんでロキウスの奴らは獣人達を捕まえて生物兵器にしようとしている。

 生物兵器にされた獣人とロキウスの銃火器による武力を合わせて獣人たちは明らかに不利な局面に立たされている。

 ・・・まぁこんなところか?

 そんなところだろうことをゾルガに説明してみせた。



「ウム、まぁ大体分かってるみてぇじゃねぇか。」

「それで? これがその弟分の話とどう関係があるんだよ。」

「あぁ、そいつは攫われた獣人たちを取り戻すって言ってロキウスに殴り込みに行ったんだ。」

「一人で殴り込み?」

 それっていくらなんでも無謀なんじゃ・・・。

「いや、あいつは殴り込むと言うより斥候に行ったって言う方が正しいだろうな。俺もグラもあいつが頭の回るやつだと言う事は知ってたから、危なくなったら戻ってくるだろうと思ってたんだ。」

「それで、『戻ってこなかった』?」

「あぁ、もう一ヵ月も前になる。」

「・・・。」

 一ヵ月も前にロキウスに潜入しに行って行方不明。

 それだけでも生存は絶望的だろう。

 ゾルガの言う『死んでいない』と言うのも、恐らくはグラを傷つけないための配慮だろう。

「・・・。」

「グラの前でこの話はするなよ? ただでさえそいつのことが気になって最近は以前のように戦いに身が入ってねぇからな。」

「・・・。」

 言われてみればそうかもしれない。

 あいつは獣人の特有の身体能力だけじゃなく、上昇(ライズ)や戦いの技術に関しても一級品だった。

 それは戦ってたからよーく分かる。

 だがそれでも実際に俺は指輪で自分の力を封印したままあいつに勝てた。

 もちろんルタやメロの協力あっての物だがあいつに本調子があったのなら、あの状況で俺が本気出さずに勝てたかどうか怪しい。



「・・・あぁ、分かったよ。」

 考えた末、ゾルガの頼みを受け入れる。



 デリケートな話題を話題に触れて欲しくないと言う気持ちは俺なりによく分かってるからな。

「・・・。」

 それにしても・・・。

「グラ、何処だ?」

 何気なく周囲を見渡すが、一向にグラの姿が見えない。



「なんだぁ? おめぇ、グラに惚れたかぁ?」

「うッ!?」

 ゾルガがニヤニヤしながらまた俺の肩に腕をかける!



「んなわけあるかッ!! あんたがグラの話題出すからだろ!?」

「新参者の分際で俺の娘を(つがい)にしようなんざ百年(はえ)ぇ!! オラオラぁ!!」

「だから何話勝手に進ぶぐぉッ!?」

 ゾルガが力任せに俺の口に杯の縁を突きつけて強引に酒をがぶ飲みさせてくる!!!



「ちょッ!! がぼッ!! やめッ!! ぐッ!! この親馬鹿親父ッ!!!」

「ああそうだッ!! 娘を持つ父ちゃんは誰だって親馬鹿なんだよぉオラオラぁッ!!」

 開き直りながら直もゾルガは強引に俺に酒を飲ませてくる!!

 いやマジでふざけんなよ!?

 ただでさえこの酒、めちゃくちゃアルコールのキツい酒だ!!

 こんな飲み方したら死ぬ!!

 いやホント今もう意識・・・が・・・!



「ぶへぇ・・・!」

 杯が空になった頃には、俺は完全に顔が真っ赤になって、体に力が入らなくなり、地面に倒れる。



「おいおい、こんだけの量でヘバんじゃねぉよ、弱っちぃなぁ!!」

「う・・・うるへぇ・・・!」

 必死にソルガに言い返すが呂律が回らない。

「しょうがねぇなぁ、あっちの方にちょっと歩いたら湖があるから、そこで顔でも洗ってこい。」

 ゾルガは斜め右後ろを右手の親指で指さす。

「あ、歩け・・・ねへ・・・!」

「甘ったれんな! 戦士なら行きたいところへは自分の脚で行け!!」

「ぐぅ・・・!」

 くそったれ・・・!

 自分で飲ませて無責任だろこのクソオヤジ・・・!

「お、覚えへ・・・やがぇ・・・!」

 ふらつく足で何とか立ち上がってゾルガが指さした方向へ歩いて行く・・・!



―――しばらく歩くが・・・。


「う・・・うぅ・・・!」

 何処に湖があるってんだ・・・!

 あの指差し方・・・『すぐそこ』みたいだったろ・・・!

 全然・・・ねぇじゃねぇか・・・!

 くそったれぇ・・・!

「・・・?」

 なんか・・・光ってる・・・?

「う・・・うぅ・・・!」

 俺・・・いよいよ死ぬか?

 なんかすげぇ光ってる場所が・・・見える・・・!

 まぁ、いいかぁ・・・!

 天国っぽいし・・・死んでも・・・!

「うぅ・・・!」

 千鳥足で光ってる場所に向かう・・・!

 正直吐きそうだがなんとか足を引きずって進み続ける・・・!

「・・・!」

 なんだ・・・ここ・・・!



 湖が・・・光ってる・・・?



「はは・・・。」

 俺、いよいよヤバいか?

 こんな幻覚見るとか・・・!

「?」

 なんかわずかにバシャって音が・・・。

「・・・!」

 もしかして敵か?

「くッ・・・!」

 なんとか意識を保って草むらに隠れて音のする方を見る。

 バレないように魔力鎮静で気配を殺して、細目で・・・!

「!」

 十数メートル先か、音の犯人と思わしき相手を見つけた!

「・・・?」

 だが妙だ。

 そいつは肩から上を湖から出して湖の水を手で掬いながら身体に塗している。

 まるで身体を洗うかのように・・・!

「・・・!」

 よく見たら女だ!!

 いや待て!?

 あいつ・・・!



「グラ・・・!」

「ッ!!!」

 思わず声が漏れると奴はピクリと動いてこっちを見た!!



「ッ!!?」

 奴が急に湖から跳び上がった!!

 マズい!!

 この状況・・・!

 逃げなきゃマズいって!!

「くッ!!」

 すぐに起き上がって逃げようとするが・・・!



「ぐぇッ!!」

 すぐに重い何かがのしかかって俺の身体は仰向けに地面に叩きつけられる!!




「水浴び中に狙ってくるなんざいい度胸だな!!」

「待てッ!! 誤解だ誤解!!!」

「んあ? お前ウルドか?」

 グラは俺の存在に気づいてか、片目を細める。

「覗いたわけじゃないッ!! ただ酒で酔ったから顔を洗いに来て偶然・・・!」

「あ? なんだそんなことか。」

「え?」

 あれ?

 なんかよく分からんが想像以上に怒ってない・・・?

「なんだよ? そんな間抜けな顔して。」

「い、いやいやお前何とも思わないのか!?」

「何が?」

「いやいや普通こういう時、女ってめちゃくちゃ『ぎゃああ!!』とか『うわぁぁ!!』とか騒ぎ散らして誤解するもんだろ!!」

「お前ら人族(ヒューム)の間じゃそうなのか?」

「あ、ああ ・・・普通そうだけど・・・。」

「なんだ? 俺、お前をぶん殴ったらいいのか?」

「いや別にやる必要ないならやらなくていいよ!!」

「うーん。」

「?」

 何か考え込むグラ・・・って言うか・・・!

「身体!! 隠せッ!!」

「え?」

『グラは水浴びをしていた』。

 この事実だけで分かるだろう。



 グラは今、服、いや元から着てないが普段の隠すとこ隠してる布すら着けてない全裸だ!!



「何顔反らしてんだ?」

「いや、お前恥ずかしくないのかよ!!」

「恥ずかしい? もしかしてお前、俺が身体を見られるのが恥ずかしいと思うから見たくないのか?」

「そ、そうだよ!!」

「なるほど・・・。」

 グラは何かを納得したかのように顎を人差し指と親指で掴みながら明後日の方向を見ながら頷く。

人族(ヒューム)の男は女の裸を見るのが罪深いのか。」

「え? あ、ああ・・・。」

 まぁ、間違っちゃいないような・・・。

「だったら・・・。」

「え・・・?」

 グラは何故か俺の外套(コート)の襟首を掴み・・・!



「オラァッ!!」

「うわぁぁぁッ!!?」

 思いっきり投げ飛ばしやがった!!



「ぶッ!! ごぼがぼぼッ!!」

 湖に投げ飛ばされた俺は顔から湖に突っ込む!!



「ぶはッ!!」

「はははははははッ!!!」

 浮き上がって顔を上げると、すぐに近くから笑い声が聞こえる!



「これで天罰だな!!」

「・・・。」

 腹を抱えて楽しそうに笑いながら俺を見るグラ。

 俺が悪いハズなのに、なんかその笑顔を見たらムカついた。

~リメイク前との変更点~

・グラが泉に入る状況を『ウルドが偶然ばったり出くわす状況』に変更

理由:夜にグラが水浴びしている姿の方が神秘的に見える気がするから

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